Blockchain Weekly Report|Week1, Jul. 2019

Sumire Ito
Ginco Research
Published in
18 min readJul 3, 2019

目次

1. 注目トピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • ビジネス・事業領域
  • 社会領域
  • プロトコル領域

2. その他のトピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • 社会領域
  • ビジネス・事業領域
  • プロトコル領域

注目トピック

市況・投資領域

ビットコイン続落、香港デモはピークアウトか

先週価格が記録的に高騰していたBTCですが、相場は下落を続けています。150万円手前から110万円台まで急落後、130万円台までの反発を見せていましたが、週末の米朝首脳会談実現もあり120万円近辺まで値を落とし、7月2日現在、10,000ドルの大台を割りました。 理由としては、逃避買いが続いた事による緊張緩和、そして米中貿易戦争の一時停戦により日本株が大きく上昇し、人民元も元高方向に設定されたことなどが挙げられています。
逃避買いの巻き戻しで下落すると見られていたBTC相場は、香港デモの激化もあり一旦は120万円台で底堅さをみせていましたが、デモの過激化に伴い警官隊が強制排除に乗り出したことなどにより、値を下げ110万円を割り込みました。今回の騒動でデモが沈静化するとの見方があったと考えられます。

イーサリアムのトランザクション数が100万を突破

現在のビットコインおよび仮想通貨市場の好調を受け、先月28日、イーサリアム(ETH)は1日あたりのトランザクション数が2018年5月以来となる100万回を達成しました。

(引用元:Etherscan “Ethereum Transaction History”)

急激なトランザクションの増加は、分散型アプリケーション(dApps)が主要因であると考えられています。ゲーム業界を中心としてブロックチェーン技術が浸透し始め、認知度が広まっています。

ジンバブエのBitcoin価格が76,000ドルまで高騰

ジンバブエでは高インフレによる国内経済への不安感からBitcoinの価格の高騰が止まらず、P2Pで仮想通貨を取引することができるLocalBitcoin(ジンバブエ内でほぼ唯一のBitcoin獲得手段)ではBitcoinの価格が一時期全体の6倍以上に当たる76,000ドルまで高騰しました。

政治・規制領域

イラン当局、1,000台のビットコインマイニング機器を没収

イラン当局は、現在使われていないとされていた2つのマイニングファームから約1,000台のビットコイン(BTC)マイニング機器を没収しました。
イランでは仮想通貨マイニングによるエネルギー消費急増により電力網が不安定化しており、政府はマイニング事業者への電力供給を遮断する意向を示していました。6月上旬には電力消費量が7%上昇していたことを受け、マイニングによるものだと推定しました。その後、1メガワットを消費していた二箇所を特定し、マイニング機器を押収しました。
またオックスフォード大学の研究者Mahsa Alimardani氏は、「米国の経済制裁による打撃を受け、イラン国民は、財産を安全に保管できる方法の(金やドルに続く)第3の選択肢としてBTCなどの仮想通貨に注目している」と述べています。

ドイツ政権与党、公共サービスにブロックチェーン導入を提案、国家仮想通貨の検討も

ドイツの政権与党は、電子医療記録や文書保護などの公共サービスにブロックチェーン技術を活用する方針を明らかにしました。具体的な提案としては、新しい形態の会社を創設し、商業登記とリンクさせる考えが浮上しています。このシステムでは特別に訓練された公証人らが身分証明をデジタルおよび暗号化するといいます。

さらに、国家によるステーブルコインを開発する提案も行われているようです。通貨は電子版ユーロとして中央銀行に登録およびコントロールされるもので、当座預金として扱い商業銀行のトークン経由で使用されるべきであると報じられています。

今回の方針は、年内に公開予定であるドイツ政府のブロックチェーン戦略を反映したものであると見られています。

ロシア財務省、Facebook仮想通貨「Libra」売買は禁止せず

ロシア財務省の副財務大臣は、「リブラの売買は禁止するつもりはない」と話し、リブラを特別に問題視せずに他の仮想通貨と同様の措置をとる姿勢を示しました。

ロシアでは支払い手段としての仮想通貨の使用を禁止する法案が可決しており、「売買を」禁止しないという発言がみられた状況下でも、リブラの決済利用については、他の仮想通貨と同様に制限されることが見込まれています。

なお、投機性や金利などを目的とした投資性が低いリブラにおいて、決済ネットワークの利用が制限された場合、大部分が禁止されることと同意義とみられるため、発言の真意は分かっていません。但しロシア財務省は、国内における仮想通貨の合法化(売買)を検討していることを明らかにしており、リブラに限らずロシア国内の仮想通貨投機需要は拡大することが見込まれています。Moiseyev大臣は6月21日、中央銀行並びにロシア連邦保安庁(FSB)の両機関と仮想通貨に関する会合が行われたことを明らかにし、禁止から合法化の可能性までの幅広い範囲が考えられるとしながらも、仮想通貨を外貨とみなす見方を明らかにしています。その中で、売買の可能性を可能としながらも支払いに対する制限は設ける意向を示していました。

社会領域

中国国営メディア「ビットコインは安全資産」 BTCに対する姿勢に変化か

中国の国営メディア新華社通信は、「ビットコインは安全な避難先(safe-haven)の資産」と表現し、多くの投資家を惹きつけていると指摘しました。米中貿易摩擦の先行きがまだ見えない中で、中国は暗号資産(仮想通貨)に対する厳しい規制を緩和するのではないかという兆しを見せています。中国は米中貿易戦争を克服する解決策として、ビットコイン(BTC)取引を少なくとも黙認するとの観測が出ています。

国際通貨基金(IMF)、「複数の中央銀行がデジタル通貨発行の可能性」

国際通貨基金(IMF)は27日、中央銀行が将来的にデジタル通貨を発行するだろうというレポートを発表しました。IMFは世界銀行と共同で世界の金融機関からフィンテックに関する調査を行い、96の回答を得たところ、複数国の中央銀行が中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)の発行を検討していることが判明しました。

南米のウルグアイはすでにテストを始めており、バハマや中国、東カリブ通貨同盟、スウェーデン、ウクライナがまもなくテストを始める予定だといいます。動機は様々で、先進国の中央銀行は現金の代替になると考える一方、新興国の中央銀行は銀行手数料の削減や銀行口座を持たない市民への銀行サービス提供を期待しています。

アイルランドの取引所 Bitsaneが突如閉鎖 ユーザーの資金持ち逃げか

アイルランドの取引所Bitsaneが突如サービスを終了したことが明らかになりました。SNSのアカウントなども全て消去されており、25万人近い同取引所のユーザーに対しても資金の返還などの通達がないことから、ユーザーの資金を持ち逃げしたものと推測されています。

ビジネス・事業領域

Goldman Sachs、JPモルガンに続き独自トークン発行を計画か

ゴールドマンサックスのデービッド・ソロモンCEOは、決済の未来はブロックチェーンにあるとし、その流れに「間違いなく乗りたい」という見解を示しました。またJPモルガンのJPMコインのような独自通貨発行についても興味を持っていることを示唆しました。

(引用元:CRODWFUND INSIDER “Goldman Sachs May Launch Stablecoin as Libra Schools Old Finance in Innovation”, https://www.crowdfundinsider.com/2019/06/148942-goldman-sachs-may-launch-stablecoin-as-libra-schools-old-finance-in-innovation/ )

ソロモン氏は、「世界の支払いシステムは法定通貨と連動するステーブルコインを使う流れになっている」と分析し、Facebook社のステーブルコインLibraについても「興味深く」みており、ゴールドマンサックスもトークン化について「広範囲にわたる研究」を行なっていると述べました。
また、JPモルガンのJPMコインのような独自通貨発行計画があるかという問いに対しては、「世界中の全ての大手金融機関は、トークン化、ステーブルコイン、スムーズな決済の可能性に興味を持っていると思うよ」と答えました。

ウォルマートチャイナ、VeChainのブロックチェーン使い食品のトレーサビリティを開始

ウォルマートチャイナが25日、VeChainやPwC、中国チェーンストア経営協会(CCFA)、飲食業者などと連携して、サプライチェーンのトレーサビリティプラットフォームを創設すると発表しました。

(引用元:Vechain101.com “BREAKING NEWS: WAL-MART CHINA ANNOUNCES FOOD SAFETY PLATFORM POWERED BY VECHAIN”)

ウォルマートがVeChainが提供するブロックチェーン対応のサプライチェーン管理サービスを使い、ユーザーはWeChatで商品のQRコードをスキャンすることでサプライチェーンを確認できるといいます。

Blockchains.comのCEOがラスベガス地方銀行を購入か

ブロックチェーン関連のインキュベーションや投資を行うBlockchains.comの創設者が、2,800万ドルでラスベガスの小さな地方銀行を買収したことが報じられました。「ブロックチェーン関連のビジネスに優しい環境を作ることが目的」であると同氏は話しています。

(引用元:BITTIMES「ラスベガスで進む「ブロックチェーン計画」新たなエンターテイメント都市を目指す」(https://bittimes.net/news/44539.html)

ラスベガスでは、都市の公共サービスにブロックチェーン技術を活用することにより、カジノの街として世界的に知られる街を新たな「スマートシティ」へと成長させるための取り組みが行われています。ネバダ州全体としても「ブロックチェーン都市計画」が進められており、州最大の都市でありエンターテイメント業界を代表する世界的大都市のラスベガスがブロックチェーン技術を地域サービスに統合することで、世界でも特に注目を集めるブロックチェーンの中心地としてさらなる発展を遂げることになると見られています。

プロトコル領域

ビットコインの採掘難易度が過去最高を更新 ドイツのマイナーがさらに5,000台のASICを購入

ビットコインのハッシュレートが過去最高水準を達成し、採掘難易度が上昇し続けています。これによりビットコインネットワークは非常にセキュリティが高い状態にあります。そうした中でドイツのマイニング企業Northern Bitcoinは、BitmainとCanaan Creativeのマイニング機器メーカーから合わせて5,000台のASIC(マイニング特化のGPU)を購入するとのプレスリリースがありました。

Cortex財団、イーサリアムのdApps全てが動作する人工知能搭載のブロックチェーンを発表 深層学習機能も利用可能

コーテックス財団は26日、人工知能としてディープラーニング(深層学習)を利用可能な分散型アプリ(dApps)用プラットフォームを開発したことを発表しました。仮想通貨イーサリアム(ETH)ブロックチェーンにおけるdApps・スマートコントラクト実行環境(EVM)の機能をすべて利用できる上、GPUによる高速化が可能な深層学習機能も併用可能といいます。

CEOのズーチー・チェン氏は、「近い将来、機械学習、分散型意思決定、悪意ある行動の検出、スマートなリソース割り当てなどの技術に基づいたステーブルコインが登場するだろう。これらはすべて仮想通貨ネットワークに関わる課題で、ブロックチェーン内で利用可能な学習済みAIモデルを用意することが非常に有益であることが証明されるだろう」
と述べています。

その他のトピック

市況・投資領域

  • ビットコインのトランザクションで、一つのアカウントが複数回に渡り585,000BTC(60億ドル以上)に及ぶ資金を移動させていたことが判明しました。非常に大きな額であるにも関わらず、アカウントが取引所のものであるという情報はありません。
  • インフレ国では避難通貨として仮想通貨が利用されています。高いインフレ率に悩むベネズエラのビットコイン取引高は先週比で約10%低下、アルゼンチンは約25%上昇、トルコは約80%上昇しました。

政治・規制領域

  • 先週末に大阪で開催された20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)は、首脳宣言の中で、金融活動作業部会(FATF)が最近公表した仮想通貨によるマネロン対策ガイドラインを正式に歓迎しました。
  • インドの暗号通貨取引所のKoinexは、規制が整わないことを理由に廃業することを決定しました。インドで最大の暗号通貨取引所へと成長していたKoinexですが、今月に入り暗号通貨の使用を禁止する動きがあり、新たに提案された法律が成立すると、暗号通貨を使用、保有、マイニングした人は最大で10年の禁固刑が課されるようになります。この動きを受けて暗号通貨の取引量は激減したといいます。
  • 不正資金洗浄などを取り締まる米国の金融犯罪取締執行ネットワーク(FinCEN)のケネス・ブランコ氏が、Facebookの仮想通貨リブラがマネーローンダリング・不正な資金調達などにおいてどのように利用される可能性があるか、複数の米国下院議員を対象に超党派説明会を開催しました。「仮想通貨と新しい市場の進化とともに、不正な行為を行う者も、違法な金融活動に関与できる新手法を見つけるべく絶えず適応している。〔中略〕フェイスブックのような巨大企業が、すでに許容できないレベルで悪意ある者を識別・抑止できないことを示している状況で、独自の仮想通貨リブラを作成することになる。金融システムが不適切に使用されないことを保証するために、議会および事業者が最新かつ強力な技術を積極的に利用しなくてはならない」と述べています。

社会領域

  • 異なるチェーン同士を媒介するブロックチェーンであるCosmosHubのメインネットにおいて初めて二重署名が検出され、バリデータのステークしていた資本(Atomトークン)が没収される事案が発生しました。ステーク全体の5%に当たるAtomトークンが没収されました。
  • つくば市は26日、昨年から実施しているブロックチェーンを用いたネット投票について、今年は新たに顔認証技術とスマホ投票を導入することを発表しました。
  • グテレス国連事務総長は6月26日付の日経新聞に寄稿し、「ブロックチェーンは世界課題の解決策を生み出す可能性を持つ」と言及しました。急速に進む変化の中で、ブロックチェーンやAI、バイオテクノロジーが世界課題を解決すると重要性を強調し、こうした新技術は国際課題となっている女性の社会進出や教育に貢献することになると利点を述べました。

ビジネス・事業領域

  • 世界最大の仮想通貨取引所Binanceは、Facebook社の仮想通貨プロジェクト「Libra」に関与するために、フェイスブックと話し合いを進めているようです。戦略担当者のジン・チャオ氏は、フェイスブックの仮想通貨リブラについて「非常に興奮している」と語り、同取引所へのリブラ上場についてフェイスブックが公式に協議していることを明らかにしました。
  • 韓国の釜山は、現地通貨ウォンに対応したデジタル通貨発行を検討しています。ブロックチェーンを活用しており、地元経済を活性化させ、ブロックチェーンにおける先駆者としてのポジションを確保しようとする狙いがあるとされます。
  • 仮想通貨「Kin(KIN)」を展開するカナダのチャットアプリ「Kik(キック)」は、自社が設立した基金「Defend Crypto(ディフェンド・クリプト)」の運営を、ブロックチェーン協会に移管することを発表しました。「仮想通貨を守るためには、集団で活動する必要がある。そのため、Defend Crypto基金は、より広範な仮想通貨業界に影響を与える独自の戦いや、他のプロジェクトの訴訟を支援するために使用されることになる」と述べられています。
  • 世界の主要な通信事業者が参加する「ITWグローバル・リーダーズ・フォーラム」で24日、ブロックチェーン基盤のプラットフォーム「コミュニケーションズ・ブロックチェーン・ネットワーク(CBN)」が発表されました。IBMやオーブス、コンセンシス、R3など、10のブロックチェーン開発企業が参加予定です。
  • 仮想通貨取引所バイナンスは6月24日、ステーブルコイン「ステーブルUSD(USDS)」と、その独自ブロックチェーン「バイナンス・チェーン」版にあたる「USDSB」取引ペア、USDSBとステーブルコイン「テザー(USDT)」取引ペアの2種類を6月24日午前10時(UTC)に開始したと発表しました。USDSBは、バイナンス・チェーン上で初めて発行されたステーブルコインだといいます。
  • ウォレット事業、および暗号通貨取引プラットホームを提供するMonarchは1,900のトークンをサポートするデジタル資産取引プラットホームを発表しました。同社によると、プラットフォームは、ほぼすべてのERC20およびSLPトークンをサポートしているとのこです。

プロトコル領域

  • 大手取引所のHuobiは金融領域に特化した独自のエンタープライズチェーンであるHuobi Finance Chainを開発したと発表しました。企業や金融機関などが規制に対応した分散型取引所などの分散型金融(DeFi)システムを開発できるようになるといいます。
  • 仮想通貨ビットコインSV(BSV)ブロックチェーンの過去30日間におけるトランザクションの98%以上が、BSVブロックチェーンを利用した天気アプリ「ウェザーSV(WeatherSV)」からのデータ書き込みによるものであったことが判明しました。
  • インドの中央銀行であるインド準備銀行が、研究開発部門で銀行業務のためのブロックチェーンプラットフォームを開発中であることが報じられました。同行は4月には、サンドボックスからICOや仮想通貨プロジェクトを除外するなどの措置をとっています。
  • 仮想通貨取引所バイナンスは6月26日、独自のブロックチェーン「バイナンス・チェーン」において、約12億ドル(約1293億円)相当のバイナンスコイン(BNB)を手数料0.015ドル(約1.62円)かつ1.1秒で転送しました。
  • 仮想通貨イーサリアム(ETH)基盤の資産発行を行う分散型金融(DeFi)プラットフォーム「シンセティクス(Synthetix)」は、クローズドソースのトークン価格設定スマートコントラクトがオラクル攻撃を受け、3700万sETH(同社独自トークン)以上を失いました。sETHの市場流通量が少ないためドル換算の被害額は不明とのことです。

ブログを移転しました!(2019/08/15追記)

最後までお読みいただきありがとうございます。Ginco Researchはブログを以下に移転しております。引き続きブロックチェーン業界の動向や週次・四半期ごとのレポートを公開しておりますので、ぜひこちらもご覧ください!

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