Blockchain Weekly Report|Week1, Jun. 2019

Sumire Ito
Ginco Research
Published in
12 min readJun 4, 2019

目次

1. 注目トピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • ビジネス・事業領域
  • プロトコル領域

2. その他のトピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • ビジネス・事業領域
  • プロトコル領域

注目トピック

市況・投資領域

TAOTAO、サービス開始

Yahoo!の子会社Zコーポレーションが運営する取引所のTAOTAOは、5月30日からサービスを開始しました。BTC、ETHの現物と、BTC、ETH、LTC、XRP、LTCの日本円建てレバレッジ取引を行えるとのことです。また、現在手数料無料キャンペーンも開催されています

2019年2月にビットアルゴからTAOTAOへと名前の変更が行われ、新規サービスが待たれていましたが、国内でのレバレッジ取引所として期待されそうです。

フェイクニュースでBSV価格が急上昇

フェイクニュースによって、Bitcoin Satoshi Vision(BSV)の価格が急上昇しています。Bitcoinのホワイトペーパーの著作権申請は却下されていますが、BinanceのCEOに自分がSatoshiである証拠を見せ、Binanceが再度BSVをリスティングするだろうといった嘘のニュースが中国を中心に流れているようです。

また、こうした動きを受けて、ビットコインのホワイトペーパーを削除したサイトも出てきています。ですが、アメリカの著作権局はサトシ・ナカモトの正体の調査は行わないとしており、今後も当分明らかになることはないでしょう。

3ヶ月間のBSVの価格推移(https://coinmarketcap.com/currencies/bitcoin-sv/

政治・規制領域

仮想通貨関連の改正法案が可決

参院本会議で、仮想通貨に関連する改正資金決済法と改正金融商品取引法が可決されました。「暗号資産」への呼称変更やカストディ規制の創設、事業者規制の強化などが織り込まれており、2020年4月から施行の予定です。

ALISなど、全体的に規制を強化する今回の法改正によって、方針転換を余儀なくされたスタートアップもあります。日本のブロックチェーン業界が世界に大きく遅れを取ることのないよう、今後内閣府令などで詳細が決められる部分については、よくよく議論を重ねたいところです。

中国四川省、違法な暗号通貨マイニングを調査

中国四川省当局は、未承認の暗号通貨マイニングについて調査を行っているということが分かりました。違法なファームを取り調べるための委員会も設置されているとのことです。

中国ではマイニングは推進しない産業リストに入っていますが、実際にどこまで規制するかは地方自治体に委ねられています。今回の四川省の報道を受けて、他の自治体も動き始める可能性があります。

ビジネス・事業領域

Telegramの決済機能に期待

ブロックチェーンベースのSNSであるテレグラム(Telegram)と統合されているウォレット、Button Walletでは、USドルから暗号通貨を購入することができるようになりました。暗号通貨購入への障壁をなくしていくことを目指しているとしています。

SNS×決済の領域への参入としては、Facebookのプロジェクトが大きく取り上げられています。Telegramも今後に期待が膨らむところです。

日本はブロックチェーンの活用において遅れているとデロイトの報告書で指摘

デロイトの報告書で、日本企業は、すでに確立した技術の検証や議論に明け暮れ、ブロックチェーンの活用において世界に取り残されていると指摘されています。海外ではブロックチェーンは基礎技術となりつつあると、デロイトの執行役員・パートナーの安井望氏は述べています。

日本でブロックチェーンを利用したプロダクトを開発しているのはスタートアップが多く、大手企業の多くはまだ実証実験段階にとどまっています。法規制が定まりつつある中、大手も動き始めることが予測されますが、世界に追いつくためにはいっそうのスピードアップが必要となるでしょう。

デロイトトーマツの報告書ページ(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/articles/tsa/tech-trends.html#

プロトコル・インフラ領域

0x、ゼロ知識証明の活用へ一歩踏み出す

DEX用プロトコルを提供する0xは、ゼロ知識証明技術の企業Starkwareと提携したことが分かりました。2019年内に、ユーザーが技術を利用できるようなプロダクトをリリースしたいと0xのマーケティング主任は述べています。

JPMorganのパーミッションドチェーンQuorumでもゼロ知識証明の利用が模索されており、プライバシー保護に注目が集まりつつあります。資金洗浄やテロ資金供与などの対策との兼ね合いをどうするかが、日本では議論になっていきそうです。

Tron、分散型ファイルストレージサービスをQ3にリリース予定

トロン(Tron)は、BitTorrentベースの分散型ファイルストレージ(IPFS)サービスを2019年Q3にリリースすると発表しました。TronのDappで、P2Pのファイルシェアリングが可能になる見込みです。

Tronは、ファイルシェアサービスのBitTorrentを傘下に収めており、1月にはトークンセールもTronチェーン上で行われています。TRX価格の上昇も見られ、投資家の期待も大きくなっているようです。

その他のトピック

市況・投資領域

  • サッカー元日本代表の本田圭佑氏が、ブロックチェーン投資ファンドを設立すると発表しました。サッカークラブの分散型経営などの夢があるとのことです。
  • 今年1月にハッキングの起こった取引所のCryptopiaは、アメリカで破産申請を提出しました。データを取り戻し、資産保有者にどのように分配を行うかを決めるには、少なくとも数ヶ月かかる見込みとなっています。
  • ブロックチェーンを利用したレンディングプラットフォームのBitbondは、ドイツで初めて法的に認められたセキュリティトークン・オファリング(STO)を開始しました。約4億円を調達する見込みです。
  • 取引所のBinanceは、暗号通貨のレンディング企業であるCredと提携したことを発表しました。CredのネイティブトークンであるLBAの一部をBinance チェーン上に移行するとのことです。
  • ビットコインのサイドチェーン「Liquid」を開発するBlockstream社は、Liquid上でのトークンローンチを発表しました。ピクセルマティック社の新しいゲーム「インフィニット・フリート(Infinet Fleet)」向けのトークンであるとのことです。

政治・規制領域

  • アメリカの弁護士グループが、トランプ大統領のアドバイザーに、ブロックチェーンを推進技術として含めるように主張しています。具体的には、国家経済会議に、ブロックチェーンを含む先端技術のカンファレンスを開くように依頼しているとのことです。
  • ヨーロッパ中央銀行のVitas Vasiliauskas氏は、カンファレンスで中央銀行によるデジタル通貨の発行の有効性について議論しました。個人・企業どちらに向けても交換の手段として使うことができるだろうと述べています。
  • オーストラリアの証券投資委員会は、ICOに関するガイダンスを更新しました。証券等の金融商品に該当する場合は既存の法律で規制され、また仮に発行者がオーストラリアでなくても、国内での販売を行う場合は同様の規制が課せられることが明記されています。
  • エジプトは、暗号通貨に対する規制を緩和する方向で検討されているということが明らかになりました。これまでは資金洗浄や脱税の恐れがあるとして全面的に禁止していましたが、今後はライセンスを発行することが可能になりそうです。

ビジネス・事業領域

  • ライトニングネットワークのソフトウェアPtarmiganを開発するNayutaは、福岡のawa barと提携し、実証実験を開始しました。1ヶ月間、ライトニングを利用した決済サービスを実店舗で体験できるとのことです。
  • 2017年に一世を風靡したDappゲームのCryptokittiesを制作しているDapper Labの、新しいゲームが登場しています。Cheese Wizardというこのゲームでは、すでに1000人ほどのユーザーがおり、チーズの形をしたキャラクターがOpensea等のプラットフォームで売買されています。
  • イーサリアムを利用したDappsゲーム「F1デルタ・タイム(F1 Delta Time)」では、車やドライバー、パーツなどのNFTがコレクタブルとしてオークションにかけられています。最高値は約1000万円にも上っています。
  • Mycrypto.comのリサーチャーは、ペーパーウォレット作成サイトWalletGenerator.comの脆弱性を指摘しました。同じ秘密鍵が多くのユーザーに渡されている可能性があるとのことです。
  • 大手監査法人のEYは、ワインのトラッキングを行うブロックチェーンプラットフォーム「TATTOO」をリリースしました。QRコードを読むことで、生産地や生産者、使われた肥料などの情報を得ることができるようになるとのことです。
  • EYのブロックチェーンプロジェクト、NightfallのソースがGithubで開示されました。Nightfallはイーサリアムベースのサプライチェーン追跡用のソリューションであり、ゼロ知識証明技術を利用しています。
  • IBMとMaerskによって作られた貿易用ブロックチェーンプラットフォームのTradeLensに、業界大手のMediterranean Shipping Company (MSC)とCMA-CGMが参加しました。TradeLensには、貨物オーナーやサプライチェーン管理者など100を超える企業が参加しています。
  • 保険大手のUSAAとState Farmは、保険金支払いにJPMorganによるブロックチェーンQuorumを利用する予定だということが明らかになりました。R3のCordaよりもセキュリティが優れているため、Quorumが選ばれているとのことです。
  • セールスフォースは、Hyperledger Sawtoothを利用したブロックチェーンソリューション商品をリリースしました。ドラッグアンドドロップで、スマートコントラクトの実装やアプリの開発などが可能になるとしています。
  • スイスの通信事業大手スイスコムは、NFTを利用した新たなデジタルアートの管理アプリを発表しました。「Noow」と名付けられたアプリでは、所有するデジタルアートの流通量を把握することができます。
  • イギリスのSurrey大学は、イギリスの映像アーカイブシステムにブロックチェーンとAIを利用することを発表しました。ブロックチェーンを用いることで、分散的な管理ができ、またデータが真正だと証明することができるとしています。
  • アイルランドの大手銀行4社のうち、3社が従業員の認証にブロックチェーンを活用していることが分かりました。いずれもDeloitteによるイーサリアムベースのブロックチェーンを利用しているとのことです。
  • 韓国の大手銀行であるShinhan bank(新韓銀行)は、ローンの契約手続きにブロックチェーンを利用する予定です。顧客の情報を確認するのにかかる時間が、2–3日からリアルタイムに短縮されるとのことです。

プロトコル・インフラ領域

  • 2月から手数料の値上げが続いていたステーブルコインのDAIでは、ようやく手数料の値下げが投票によって決まりました。ドルとの価格乖離が落ち着いてきたため、2%の値下げとなっています。
  • IOTAでは、より分散性を高めるためのプロトコルアップグレードが行われました。プロジェクトの成熟やリサーチにより、二重支払いを防ぐためのCoordinatorメカニズムを削除することが可能になったとのことです。
  • イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)では、次のアップデートハードフォークの内容について開発者が合意できなかったことが分かりました。Atlantisと名付けられたアップデートでは、すでにイーサリアムに適用されているバッチを当てる予定でしたが、提案が草稿の状態に戻ってしまっています。
  • Cosmosの提供するSDKに深刻な脆弱性があったことが発表されました。詳細は明らかにされていませんが、近日中にパッチが当てられる予定です。

ブログを移転しました!(2019/08/15追記)

最後までお読みいただきありがとうございます。Ginco Researchはブログを以下に移転しております。引き続きブロックチェーン業界の動向や週次・四半期ごとのレポートを公開しておりますので、ぜひこちらもご覧ください!

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