Blockchain Weekly Report|Week2, Jul. 2019

Sumire Ito
Ginco Research
Published in
17 min readJul 9, 2019

目次

1. 注目トピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • ビジネス・事業領域
  • 社会領域
  • プロトコル領域

2. その他のトピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • 社会領域
  • ビジネス・事業領域
  • プロトコル領域

注目トピック

市況・投資領域

BTC相場は概ね横ばい圏での推移 強かった米雇用統計
週末のBTC相場は概ね横ばい圏での推移を見せました。120万円を割れた水準では底堅さ見せ、日銀の雨宮副総裁のCBCDは発行しない、リブラに規制が必要だとの発言もあり117万円台に値を下げたBTCですが、その後下げ止まり124万円台までの反発を見せました。

しかし、注目の米雇用統計で非農業部門雇用者数が224Kと予想を上回ると、ドル買い人民元安で一旦BTC買いとなりましたが、米10年債金利が急騰する中、117万円台までの反落を見せました。しかし、またもや押し目買いが強く下げ止まると、ETHの発行量が減少するとの観測やCMEがETH先物を検討しているとの記事もあり、BTCも126万円台まで反発を見せました。ETHの反発が一服するとBTCも値を下げましたが、ハッシュレートが過去最高を更新し、香港デモへの懸念もあり125万円近辺まで値を戻しています。

テザーバブルに再突入、ビットコイン急騰との相関も

(引用元:CoinMarketCap「Tetherチャート」https://coinmarketcap.com/ja/currencies/tether/)

最新技術について情報発信を行うコインモンクスが、「仮想通貨相場は2回目のテザーバブルに突入している」と指摘するレポートを発表しました。テザーの供給量が35億トークンと過去最高を更新しており、各取引所でビットコインが急騰したと指摘しています。

テザーとビットフィネックスが、ニューヨーク州の司法長官と裁判を行っており、その結果によってテザーの供給量が左右されていると主張をつづけ、5月には事実上の勝利が決定し、テザーの供給量が上昇したといいます。

政治・規制領域

日銀副総裁、デジタル通貨の導入に否定的な立場を示す
日銀副総裁の雨宮氏は5日の講演で、中央銀行によるデジタル通貨の導入に対し否定的な立場を示しました。「デジタル通貨を発行するには既存の現金を排除しなけらばならない。しかし現金の排除を行えば決済インフラが不便になる懸念があるため近い将来導入は行わない。」とコメントしています。

イラン高官「米議会がイランの仮想通貨マイニングへのアクセス制限を検討」
イラン産業貿易供給省の副大臣サイード・ザランディ氏は、米議会がイランの仮想通貨とビットコインマイニングへのアクセスを止めようとしていると発言しました。ザランディ氏によると、米議会は仮想通貨を経済制裁を避けるツールと考え始めており、イランの仮想通貨に対するアクセスを制限する法律の制定を検討しているようです。イランにおける仮想通貨の規制はまだはっきりしていませんが、ザランディ氏は、イランの中央銀行と協力して仮想通貨利用に関する問題解決に向けて動いているそうです。

ジョージア、仮想通貨と法定通貨の交換による付加価値税を免除
ジョージア財務相であるNodar Khaduri氏が、トレーダーと仮想通貨マイニング従業者の課税に関する法案に署名したことが判明しました。この法案は6月28日に施行されたものであり、個人・企業どちらのトレーダーも、国内通貨または外貨で仮想通貨を交換する際に付加価値税が免除されることになりました。個人のトレーダーは所得税も免除されるといいます。以前までは、海外で登録された企業のみが付加価値税の免除対象でした。さらに、Nodar Khaduri氏は、ジョージア国内で唯一の支払い手段は貨幣のラリだけであり、仮想通貨による商品の購入は禁止されることを強調したといいます。

社会領域

韓国からオランダまでブロックチェーンでコンテナ追跡に成功

韓国のサムスンSDS、ABNアムロ銀行、オランダのロッテルダム港湾局は、韓国からオランダまで、ブロックチェーンプラットフォーム「デリバー」を活用したコンテナの追跡実験に成功しました。「デリバー」はサムスンSDS、ABNアムロ銀行、ロッテルダム港湾局の3者が協力して開発しました。ペーパーレスで物流管理ができ、出荷されたコンテナを完全に追跡できます。イーサリアムとハイパーレジャーアプリケーションをサポートしており、書類の公証や二重払い防止、資産移転などさまざまな機能を備えているといいます。

中国企業は「戦略的武器」としてブロックチェーン技術を導入
世界四大会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツが発表した調査レポートによると、11ヵ国の企業の上級管理職1386名(中国200名)のうち、中国企業の約73%が「ブロックチェーンは戦略上の最優先事項」であると回答しました。レポートによると、中国企業の上級管理職はブロックチェーン技術が自国内における最重要事項トップ5の一角を占めると最も強く確信しており、経済発展における重要な推進力として掲げているようです。デロイトのアジア太平洋地域ブロックチェーンラボのリーダー、ポール・シン氏は、「(中国における)多くのプロジェクトは、生産性向上ツールではなく、戦略的武器としてブロックチェーンを利用するというトップマネジメントのもと推進している」と指摘しています。

仮想通貨Libra開発トップ、「Facebookは特別な権限を持たない。ユーザーはFacebookを信頼する必要がない」と強調

フェイスブックの仮想通貨Libraのプロジェクトを率いるデビッド・マーカス氏は、ユーザーがリブラの恩恵を受けるためにフェイスブックを信頼する必要はない、と強調しました。
マーカス氏は、フェイスブックはリブラのネットワークの唯一のメンバーではなく、同ネットワークをコントロールする権利は一切持たないと述べています。

「フェイスブックは同ネットワーク、通貨、あるいはそれを裏付ける準備金を管理しない。フェイスブックは100超のリブラ・アソシエーションのメンバーのひとつにすぎない。特別な権利や特権は持たない」

また、フェイスブックはウォレット開発会社「カリブラ」を子会社として所有はしているが、カリブラの金融データにフェイスブックはアクセスできないとし、金融データを分離するというアプローチを明確にしていることを強調しています。

ビジネス・事業領域

フォビ(Huobi)、分散型金融サービス(DeFi)向けブロックチェーン開発へ
世界で暗号資産(仮想通貨)関連事業を展開するフォビ・グループ(Huobi Group)が7月1日、ブロックチェーンネットワークのネルボス(Nervos)と提携し、分散型金融サービス(DeFi)に重点を置いた新しいパブリックブロックチェーンを開発することを発表しました。プロジェクトの名前は「フォビ・ファイナンス・チェーン(Huobi Finance Chain)」と名付けられており、企業・金融機関、取引所の独自のブロックチェーン、トークン化された資産に対して分散型金融サービスを展開できるようにする規制当局の法に則った金融ブロックチェーンとなっています。

フォビ・グローバルのCEOとフォビ・グループのの副社長を兼任するLivio Weng氏は、「このプロジェクトは確立された新興の金融商品およびサービスに対して、大きな革新を起こす可能性を秘めていると考えている。フォビグループのコアミッションの1つは、ブロックチェーンの優位性を一般に公開することだ。それによって、世界中で何百万もの人々に利益をもたらす可能性があると考えている。そのため、私たちはブロックチェーンの加発においてネルボスのチームと協力することに大きく期待している。」とコメントしています。金融機関や企業が基盤とすることができる分散型のフレームワークとインフラストラクチャーを提供することで、金融サービスをより透明性が高く、効率的なものにすることを目指しているようです。

Microsoft.NET上でC#でスマートコントラクト開発が可能に
ブロックチェーン開発を手掛けるストラティスグループ(Stratis Group)は、Microsoft.NETアーキテクチャ上にスマートコントラクトを初めて公開しました。同社が公開した「Cirrus Sidechain Masternodes and Stratis Smart Contracts」では、プログラミング言語C#でのスマートコントラクトの展開が可能になります。

Microsoft.NETフレームワーク内でシステム運用する企業や金融サービス会社や政府機関を対象としたもので、トークン、貸付プラットフォームから自己証明型身分証明(SSI:self-sovereign identity)など、幅広いユースケースを提供するとしています。マスターノードは、プルーフ・オブ・オーソリティ(PoA)のアルゴリズムを使用し、シーラスサイドチェーン上で稼働するため、マスターノードが同ブロックチェーンを維持するのに必要な負荷と電力消費を軽減する一方で、信頼性を増してセキュリティが強化されます。

富士通研究所、ブロックチェーンでオンライン取引の本人確認技術を開発
富士通研究所は4日、オンライン取引での本人確認技術「IDYX」を開発したと発表しました。ブロックチェーンを使った分散型IDを用い、実際に取引したユーザーの評価や取引実績から取引相手の信用性や詐称リスクを確認、分析できるといいます。IDYXでは、取引で発生するユーザー評価をトランザクションデータとして登録し、このデータをブロックチェーン上で改ざんできない分散台帳上に格納します。信頼されているユーザー数や、信用度の高いユーザーとの関連性などのデータによって重みづけし、信用度スコアを算定します。他のユーザーから不正に評価を釣り上げている場合にも詐称の特定が可能になるといいます。富士通が提供するクラウドサービスの新機能として今年中の実装を目指すようです。

プロトコル・インフラ領域

仮想通貨ビットコインのハッシュレート、再び過去最高を更新
ビットコインのマイニングにおける計算力を示すハッシュレートが7日、7450万テラハッシュ/秒に到達し、過去最高を再び更新しました。ハッシュレートは、特定のネットワークやハードウェアによる1秒間の計算数であり、高ければマイニングで新しいブロックを生成する際に必要な高度な数学を解く能力が高くなります。また、ハッシュレートが高くなれば51%攻撃に必要なリソースも多くなることから、ネットワークはより安全になります。ハッシュレートと価格の関係は、一般的には正の相関関係にあると言われています。

(引用元:Blockchain.com “Hash Rate”

ビットコインのサイドチェーン「リキッドネットワーク」、第三者仲介なしで異なる仮想通貨を直接取引できるツールを公開
ブロックチェーン開発企業ブロックストリームが、仮想通貨取引所・ブローカー・金融機関などを接続し取引所間決済を行える「リキッド(Liquid)ネットワーク」で対応しているすべての資産に対し、「アトミックスワップ」を実行できるツールをGitHub上で公開しました。

アトミックスワップは、取引所など第三者の仲介なしで、顧客が異なる仮想通貨の直接取引を行える仕組みとなっています。今回の新ツールにより、アトミックスワップで「BTC裏付けのリキッド・ビットコイン(L-BTC)、『発行資産(Issued Assets)』でトークン化した法定通貨・仮想通貨・従来資産などのあらゆる資産」をサポートできるようになったといいます。

大手暗号分析会社CipherTrace、FATFのガイダンスに沿った匿名IDスキームを構築へ
ブロックチェーン分析会社CipherTraceと分散型データ検証プラットフォームShyftは、匿名のIDプロトコルを開発する事を発表しました。 両社は、暗号サービスプロバイダがユーザーの身元を開示せずに情報を共有できるようにすると主張している。これは、機密情報を犠牲にすることなく規制に準拠させることを意味します。

FATFのガイダンスに沿い、規制当局が必要に応じて個人情報にアクセスできるよう協力するよう配慮されます。またデータブリッジは、監督者が情報を法的当局によって求められた際に開示する事ができます。暗号的に制御されたプライバシーメカニズムにより、匿名性と『犯罪者やテロリストに対する捜査やAML準拠など合法的な目的の資金リソースの責任ある開示能力』の両方を持つことが可能になるといいます。

その他のトピック

市況・投資領域

  • Bitcoin CashのETP(上場投資商品)がスイスのSIX取引所に上場したことが明らかになりました。ETPはBitcoin Cashの価格を追跡する投資商品であり、Amun AGが発行します。すでにBTCやETH、XRPなどが上場しています。
  • 米国と中国間の緊張、及び世界中の中央銀行の金融政策決定の影響により、日本円、スイスフラン、ゴールドのような主流の安全資産と同時にビットコイン価格が高騰していることが報じられました。
  • リップルの投資部門Xpringは、2018年の5月以降で仮想通貨XRP関連のプロジェクトに5億ドル(約540億円)を投資していたことを明らかにしました。

政治・規制領域

  • キプロスのハリス・ヨルギアディス財務相は、ブロックチェーン技術活用に向けた法案を今年末までに整備すると述べました。ブロックチェーン技術を「インターネットと同様の新しい技術革命」と説明し、ブロックチェーン活用を柱とするデジタル改革の国家戦略を発表しました。
  • 日本銀行が、仮想通貨Libraに関して、「規制を加えるには困難であり、金融体制にリスクをもたらす可能性がある」と言及しました。多国の通貨と関連することで、すべての国の規制機関による監督を回避することができると述べました。またLibraのユーザーが地方銀行から預金を引き出してトークンを購入することにより、Facebookはここで得た資金をより大規模な銀行に預ける可能性が高いため、地方銀行の預金流出の原因となり得ると指摘しました。日本政府の短期国債の需要が高まり、金利の低下につながるとし、金融システム全体の安定性を損なう可能性があると報告されたといいます。

社会領域

  • インド犯罪捜査局(CID)が、仮想通貨KBCコインの作成者とされる4名の容疑者を逮捕しました。CIDは、KBCをポンジ・スキーム(出資金詐欺)と見なしているといいます。KBCは約6ヵ月前に発売され、価格は変動していないといいます。KBCは、短期間で100倍の収益、10ルピー(約15.86円)まで値上がりするという触れ込みで、購入者1人につき10パイサ(約0.16円)で発行されたそうです。
  • 国連が、アフガニスタンでの持続可能な都市開発に向け、ブロックチェーンソリューションに取り組んでいることが判明しました。ステファン・ドゥジャリク報道官は、国連のイニシアチブ「 City for All(すべての人に都市を)」の一環として、土地記録の透明性に向けて、ブロックチェーンを活用した土地登記システムを開発すると述べています。
  • 韓国の釜山は、BNK釜山銀行と連携し、現地通貨ウォンに対応したデジタル通貨発行を検討しています。これはブロックチェーンを活用したもので、地元経済を活性化させ、ブロックチェーンにおける先駆者としてのポジションを確保しようとする狙いがあるとされています。
  • 日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は7月2日、SBIの北尾孝吉氏が一年の任期満了を迎え理事を退任したことを発表しました。同協会は役員の拡張も公表しており、2018年の6人から12人体制に変更となったといいます。

ビジネス・事業領域

  • 大手商社の丸紅は7月5日、再生可能エネルギーを売買できるオークションプラットフォームの開発企業「ウィー・パワー」との提携を発表しました。ウィー・パワーのプラットフォームはイーサリアム(ETH)ブロックチェーンを基盤とし、再生可能エネルギーを独自トークン(WPR)化します。再生可能エネルギーを調達したい顧客・投資家と、再生可能エネルギー発電事業者をオークション形式でマッチングさせた上で、電力売買契約をWPRで容易に行えるプラットフォームを開発しています。
  • Bitcoinの人気のあるウォレットに一つであるElectrumは、Bitcoinのスケーリング技術であるライトニングネットワークのサポートを間も無く開始することを明らかにしました。ユーザーは早くより安い手数料でBitcoinを送金できるようになります。
  • 日本の大手海運業者オーシャンネットワークエクスプレスONEは、ブロックチェーン貿易プラットフォームのトレードレンズに参加すると発表しました。ONEの船隊規模は世界6位で、物流における透明性や正確性を向上させることを目指しています。
  • ブロックチェーンを基盤としたロールプレイングゲームの「マイクリプトヒーローズ(マイクリ)」が人気を集めています。三国志で知られる軍師の諸葛亮がおよそ16万円で取引されていることが判明しました。
  • ブラジル最大の投資銀行BTGパクチュアルSAとドバイに拠点を持つ投資ファンドのダーマキャピタルは、テゾスのブロックチェーンを使って10億ドル(約1080億円)以上のセキュリティートークンを発行するようです。不動産、スポーツクラブ、株、債券など「伝統的な投資や代替投資などを幅広くトークン化する」ことが目標であると発表されています。

プロトコル・インフラ領域

  • 仮想通貨取引所Binanceは、近い将来「先物取引」プラットフォームを開設する予定であることを正式に発表しました。2日に台北で開催された会議「Asia Blockchain Summit」で、ジャオ・チャンポンCEOは、仮想通貨の先物取引機能のインタフェースを紹介しました。新たな先物取引機能により、ユーザーは最大20倍のレバレッジでビットコインの価格変動に対してロングポジションとショートポジションを開くことができます。
  • 富士通研究所は7月4日、アイデンティティー流通技術「IDYX(IDentitY eXchange)」を開発したことを発表しました。オンライン取引に関わるサービス事業者や利用者に対して、取引相手の本人情報の真偽を判断可能にします。
  • LINEの独自ブロックチェーンを利用した分散型アプリ(dApps)である「wizball」が7月1日、同サービスの公式ツイッターで今年9月のサービス終了を発表しました。

ブログを移転しました!(2019/08/15追記)

最後までお読みいただきありがとうございます。Ginco Researchはブログを以下に移転しております。引き続きブロックチェーン業界の動向や週次・四半期ごとのレポートを公開しておりますので、ぜひこちらもご覧ください!

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