Blockchain Weekly Report|Week2, Jun. 2019
目次
1. 注目トピック
- 市況・投資領域
- 政治・規制領域
- ビジネス・事業領域
- プロトコル領域
2. その他のトピック
- 市況・投資領域
- 政治・規制領域
- ビジネス・事業領域
- プロトコル領域
注目トピック
市況・投資領域
LocalBitcoins、対面での現金取引サービスを停止
P2P取引を提供するLocalBitcoins(世界中のユーザー同士でビットコインと現地通貨との店頭取引ができるOTC取引所)は現金による直接的なビットコインの取引サービスを無効にしました。同社はフィンランドの法律に遵守したものである旨を示しています。世界各国の投資家がビットコイン(BTC)とそれぞれの現地法定通貨で店頭取引(OTC)を行なっていましたが、マネーロンダリングやテロ資金創設等の行為への対策の強化が必要とされていました。
LocalBitcoinsなどのサービスが利用できなくなると、暗号通貨が禁止されている国での購入がいっそう厳しくなると考えられます。国家に完全に支配されることのない金融が訪れるのは、まだ遠い将来の話になりそうです。
中国ではTetherの利用が減少していないことが判明
NY検事当局により訴訟中のTether(ドルなど法定通貨にペッグしたステーブルコイン)ですが、アジアを拠点とするトレーダーからは引き続き注目されています。
ヨーロッパやアメリカでは、Tether社による相場操縦疑惑やTetherに1対1で対応しUSドルデポジット確保ができていなかったという事実により、Tetherへの信用が落ちています。一方中国ではそうした問題にかかわらず継続利用する人が多いことが明らかになりました。もはやインフラとしての機能を果たしているとも言えるのかもしれません。
政治・規制領域
SECが未登録の有価証券販売でKikを提訴
米証券取引委員会(SEC)は、メッセンジャーアプリを提供するキック(Kik)が2017年に行ったキン(kin)トークンの新規コイン公開(ICO)について、未登録の有価証券販売に該当するとして、同社を提訴しました。
SECは、トークンを有価証券とみなすための明確なガイドラインを提示しておらず、起訴されるリスクを回避したい企業からはHoweyテストをさらに明確化した基準の提示を求められています。この裁判は、各国のプレイヤーが注目するところとなるでしょう。
G20で仮想通貨を利用した資金洗浄について議論される
6月8日、福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、米中貿易摩擦や仮想通貨を利用したマネーロンダリング(資金洗浄)など、世界が直面する課題が議論されました。会議では、仮想通貨(暗号資産)交換業者に対し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の一環として登録制や免許制を導入することが合意されています。
仮想通貨・ブロックチェーン領域について、技術者だけでなく各国の規制当局者がG20で議論する段階が来たことを改めて実感します。
ビジネス・事業領域
Facebookのブロックチェーンプロジェクト、いよいよリリースに近づく
FacebookはLibraというコードネームを用いた独自の暗号通貨の発行に狙いを定めています。既存のメッセージング基盤(WhatsApp、Instagram、Facebook Messenger)内で運用するためのステーブルコインを開発しているが、2020年第1四半期までに数十カ国で発行される予定であると発表しています。
ステーブルコインは一定の価値を維持するように設計されたトークンで、支払いまたは交渉の過程で価格が変動することによる話の食い違い、やっかいな問題の発生を防ぎます。
この仮想通貨を利用すれば、MessengerやWhatsAppといったFacebookの製品を介して、無料で送金が可能となると見られています。クレジットカードの取引手数料や一般の高額な送金手数料を回避でき、また従来からある電子商取引にとっても、安価な支払い方法を確保できることになります。同社は、ユーザーが仮想通貨を通常の貨幣と交換することができるATMのような物理的な装置も導入したいと考えているようです。
Facebook自身にとっても、誰が何を購入しているか、あるいはどのブランドが人気なのか、といった情報が得られるので、広告の計測やランク付け、コアビジネスを増強するためのターゲティングにも有効です。同社はその仮想通貨を監督するための独立した財団法人を設立することを協議しているとも報じられています。
FacebookのプロジェクトについてはこちらのTwitterもご覧ください!
プロトコル領域
EOSのDappsアカウントの半数がbotであると明らかに
EOS ($EOS) Dappsのアカウントの50%以上がbot(ボット)であることがAnChainの調査によって判明しました。
AnChainではAIを利用した疑わしいトランザクションを検出しており、これによってアカウントの50%、トランザクションの75%がbotであると見られています。Dapps利用アカウント・トランザクション数は2019年Q2に入って増加していますが、実際のユーザー数との乖離があることを念頭に置いておく必要がありそうです。
ハイブリッドスマートコントラクト言語であるPact3.0がリリース
PopejoyとKadenaによって、ハイブリッドブロックチェーン(パブリックとプライベートの間という意味での「ハイブリッド」という考え方)向けのスマートコントラクト言語が新たに発表されました。
このPactと呼ばれる言語のバージョン3.0がリリースされたことで、プライベートチェーンとパブリックチェーンのクロスチェーンスマートコントラクトが可能になるとされています。企業内での通貨発行をパブリックチェーンに拡張するといったことがしやすくなるため、いっそう多様なユースケースが登場することに期待したいところです。
その他のトピック
市況・投資領域
- 5/27–6/3間におけるCMEビットコイン先物の建て玉数が5,190と記録最大となりました。一週前より7%の上昇となります。この高水準により暗号通貨取引の上昇が期待できます。
- フィリピンの仮想通貨取引所PDAXはBitMEX Venturesより資金調達を行い、仮想通貨を通してフィリピン人へより平等かつ容易な金融へのアクセスを提供することを目指しています。
- メキシコのAmero-Isatekは、メキシコで8暗号通貨取引所を開設するに至り、一店目をモンテレイのヌエボ・レオン州に設立しました。同社は中央メキシコの800,000暗号通貨ユーザーを超えるサービスを提供する予定です。
- 通商債務をERC20トークンに変換するCadenceが、金融楽器グローバル識別子 (フィジー)を獲得し、Bloomberg Terminalに登録されました。これにより、より広範囲におけるCadenceの調査や取引が期待できます。
- オランダの取引所Blockportは運営資本不足のため閉鎖することを発表しました。今後はより優れた技術を利用することによりまたサービスを再開する旨を示しています。
- 仮想通貨取引所OKCoinがEUにサービスを拡大しています。
- 税金を免れるために仮想通貨を用いて取引をする流れが強まり、巨額の税金が刈り取られている点が問題視されている。
- GalaxyやKleiner Perkinsらがブロックチェーン技術を用いてゲームを開発するAzarusに対して180万ドルの資金調達をしました。
- CME取引所は過去最高の取引量を5月に獲得したことを発表しました。
- オルトコインCLAMの株価が暴落し、130万ドル以上(6/6時点のビットコインで換算)の損失を受けたことを発表しました。
- Budweiserの親会社であるAnheuser-Busch InBevはブロックチェーン技術利用における利子を半分以下に引き下げたことを発表しました。非銀行利用者層への援助が目的です。
政治・規制領域
- アメリカの複数の犯罪捜査機関が、現在は閉鎖されているカナダの仮想通貨取引所クアドリガCX(QuadrigaCX)を調査しています。2019年4月時点で、クアドリガCXの資産は約2100万ドル(通常の通貨を含む)、負債額は1億6000万ドルとされています。
- 韓国インターネット振興院は違法の仮想通貨マイニングの調査を行なっています。これらの違法行為は仮想通貨の高値によるものだと考えられています。
- 米証券取引委員会(SEC)は、メッセンジャーアプリを提供するキック(Kik)が2017年に行ったキン(kin)トークンの新規コイン公開(ICO)について、未登録の有価証券販売に該当するとして、同社を提訴した。
- マルタでは、金融サービスの成長に伴うマネーロンダリング対策強化の必需性が明らかになりました。
- マーシャル諸島は、政府からの支援を受ける仮想通貨SOVの開発促進のための資金創出を発表しました。マーシャル諸島における基軸通貨をUSドルからSOVに移行する方針を示しています。
- 米証券取引委員会はFintech会社Longfinに対し、収益を偽造し世界最大の新興企業(ベンチャー)向け株式市場であるNASDAQに会社を登録する試みを行なったとして罰金を課しました。
- インド・BitConnectのプロモーターDivyesg Darjiは新たに仮想通貨を用いた詐欺に関与したとして告訴されました。
- 米、オーストラリア、カナダ、イギリス、オランダのマネーロンダリング調査団は、60を超える仮想通貨関連の犯罪の調査を行うことを示しました。納税回避などが大きな理由とされています。
- オーストラリア国税庁は仮想通貨を用いた納税回避計画に対する取り締まりを強化しています。
- インドでは、仮想通貨取引を禁止する起草原案を通すことが提案されています。
- 分散型金融テクノロジーがもたらし得る不測の問題を回避するため、主要各国の金融監督当局は今後、テクノロジー企業との対話をいまだかつてないペースで増やす必要があることを金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)が6月6日にまとめた報告書で述べました。
- 仮想通貨取引所のBittrexは、30以上の仮想通貨を米国のトレーダーからブロックしました。
ビジネス・事業領域
- LINE Pay株式会社はVisaカードをLINE Pay内から新規発行・利用可能にする旨を発表しました。グローバルでの決済・送金サービスのほかブロックチェーンを活用した革新的フィンテックサービスを提供予定です。
- 米大手企業Walmartは、ブロックチェーン技術を利用し医薬品のサプライチェーンを透視化させるサービスを提供するMediLedger社のサービスに参加しました。
- ブロックチェーン企業であるPeer Mountain, MARKNetwork and IBISの三社は特許トロールを回避するための多産業協会LOT Networkに参入しました。
- エジプトのウェブ企業、インテリ・コーダーズ(Intelli Coders)は、分散型ウェブ開発企業ブロックスタック(Blockstack)のIDを利用する暗号化電子メールサービスDメール(Dmail)のベータ版を、6月1日(現地時間)にローンチしました。
- 米調査会社のGartnerは、「90%のブロックチェーン事業は2021までに無くなる」と発表したが、優れたものは逆に翌10年に渡り何兆円もの価値を提供すると予測しました。
- ブロックチェーンゲーム開発者のLucid Sightが人気フランチャイズ映画CBSとの提携を発表しました。
- BinanceはGBP(イギリスポンド)ベースのstablecoinの開発を進めていることを発表しました。
- 仏・小売企業Carrefourは、ブロックチェーン技術を用いたサプライチェーンの追跡により売り上げが高騰したことを発表しました。
- カリフォルニアのCPA協会は仮想通貨の経理と情報開示に対する規則を明瞭化することを要求しました。
- ビットコインキャッシュ(BCH)のクライアントBadger WalletはiOS向けアプリを開設しました。
- Symbiontは大規模な金融改革を目指し、Vanguardと提携し指数データの追跡の自動化に取り組んでいます。
- ロシアのブロックチェーンスタートアップ企業Factorinは、Dixyと提携し、イーサリアムを利用したの金融取引プラットフォームを開設したことを発表した。ロシア4位の大手小売業者となる。
- エジプトのウェブ企業、インテリ・コーダーズ(Intelli Coders)は、分散型ウェブ開発企業ブロックスタック(Blockstack)のIDを利用する暗号化電子メールサービスDメール(Dmail)のベータ版を、6月1日(現地時間)にローンチしました。
- イスラエルのスタートアップ企業 ZenGoは管理人、プライベートキー、単一障害点(SPOF)、などを持たない初の非中央集権型クリプトウォレットの設立の予定を発表しました。
- ヨーロッパのサッカーチームS.L. Benfica は仮想通貨によるチケットの購入の受け入れを発表しました。サッカー業界で初の試みとなります。
- アップルは、同社最新のOS「iOS 13」のリリースに伴い、プログラミング言語「スウィフト(Swift)」用の基本的な暗号処理を実行するAPI「クリプトキット(CryptoKit)」をローンチする旨を発表しました。
- カメラブランドのKodakは、ブロックチェーン技術を用いた書類の管理プラットフォームを導入したことを発表しました。
- カナダ・バンクーバーにて、史上初のビットコインATMが設立されました。
- ブロックチェーンスタートアップ企業Truffleによるツールが, MicrosoftのAzureに統合されることがForbes誌によって発表されました。
プロトコル領域
ブログを移転しました!(2019/08/15追記)
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