Blockchain Weekly Report|Week3, Jul. 2019

Sumire Ito
Ginco Research
Published in
12 min readJul 19, 2019

目次

1. 注目トピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • ビジネス・事業領域
  • 社会領域
  • プロトコル領域

2. その他のトピック

  • 市況・投資領域
  • 政治・規制領域
  • 社会領域
  • ビジネス・事業領域
  • プロトコル領域

注目トピック

市況・投資領域

仮想通貨、暴落を見せる

今週の仮想通貨市場は下落に見舞われました。ビットコイン(BTC)価格は週末に110万円代まで下がり、前週比で約-13%の下落となりました。イーサリアム(ETH)価格は約25,000円まで下がり、前週比で約-26%の下落となりました。リップル(XRP)価格も約34円まで下がり、前週比で約-21%の下落となりました。

トランプ米大統領が先週に仮想通貨を批判したことが原因と考えられています。トランプ氏は11日に「ビットコインや他の仮想通貨のファンでない。それらは通貨ではなく、その価値は非常に変動が激しく、根拠とするものは一切ない。規制を受けない仮想通貨は麻薬取引や他の不法活動などの違法行為を容易にし得る」とツイートしました。また、フェイスブックの仮想通貨「リブラ」計画も批判しています。

CoinMarketCapより

Tether(USDT)、時価総額6位に

ステーブルコインのTether(USDT)は、15日に時価総額が約4,200億円となり、EOSとBinance Coin(BNB)を上回り時価総額6位になりました。今年4月初旬と比較して時価総額がほぼ倍増しました。また、Tetherは15日、Tron上での発行において非常に活発な動きをみせ、50億Tether(50億ドル相当)を発行したのち、ほぼ同額を複数回に分けてバーンしました。これらの操作の結果総計で5000万Tetherが新規に発行されたことになりました。

政治・規制領域

米民主党、Facebookなど大手テック企業の仮想通貨発行を禁止する法案を議論

米民主党内で、大手テック企業が仮想通貨を発行することを禁止する新たな法案が議論されています。同草案は「Keep Big Tech Out Of Finance Act(ビックテックの金融からの排除)」と題され、規定に違反した場合には罰金が科せられるとされ、フェイスブックは独自の仮想通貨発行をする場合、1日当たり100万ドル(約1億800万円)を支払うことになるといいます。

米国ではリブラに対する規制論議が噴出し、米証券取引委員会(SEC)がフェイスブックの独自仮想通貨「リブラ」をSECの監督下におくことの検討を始めているとの報道が出たばかりです。また、トランプ大統領は、仮想通貨全般、ビットコインとフェイスブックの仮想通貨リブラに対して反対する姿勢を一連のツイートの中で表明しています。しかしロイターの分析では、イノベーションを支持する共和党は民主党の提案に反発するとし、議会を通過するのは難しいとみています。

またトランプ米大統領も、TwitterでBitcoinやLibraを批判しています。

カナダ、暗号通貨取引所の規制当局への登録を義務化へ

カナダの暗号通貨取引所では、新たな規制により、マネロン対策やテロリストへの資金提供対策を行う規制当局への登録が義務化されることが判明しました。今年の初めにQuadrigaCXが破綻したことを受け、カナダ当局の暗号通貨取引所へのルール作りが加速していることなどが背景にあります。2020年6月1日にはFinTRACと呼ばれる機関への登録が必要となります。取引所は本人確認などのKYCも義務化され、取引履歴情報の保管やコンプライアンスを担当する人員の拡充も必要となります。

社会領域

ビットポイント、約30億2000万円の仮想通貨が不正流出

12日、仮想通貨取引所ビットポイントから多額の仮想通貨が不正流出したことが判明しました。被害額は約30.2億円相当(うち顧客資産約20.6 億円)とされ、取引システムを提供する海外取引所でも約2億5千万円分が流出したと発表されています。 顧客資産の流出分の仮想通貨(ビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、 ライトコイン、リップル)は既に調達済みであると発表し、現物での補償体制が整っていることを表明しています。

米シンクタンク、敵対国の仮想通貨・ブロックチェーン技術による安全保障リスクを指摘

国家安全保障と外交政策に焦点をあてた米シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」は11日、米国の敵対国が仮想通貨を利用することについてのリスク評価を行った報告書を発表し、仮想通貨・ブロックチェーン技術が米国にとって大きな脅威となる可能性について解説しました。

FDDは、ロシア、中国、ベネズエラ、イランといった4ヵ国を具体的に挙げ、各国が仮想通貨関連技術に関してどのように注力・展開しているか、また仮想通貨・ブロックチェーンが将来どのように米国による制裁に影響を与えるかを分析しました。敵対国の国民および他国民が国有仮想通貨を保有・取引したり、敵対国内企業と取引したりできるよう、敵対国が仮想通貨ウォレットのインフラ構築を推進することになった場合、別の懸念すべき可能性が浮上するといいます。また、敵対国内の銀行システムがブロックチェーン技術に関し十分な成果を得ていること、それらプラットフォームを法令・規制などの障害が少ない他国の金融システムに統合できることについても警告しました。

ビジネス・事業領域

GeminiのTyler CEO、「2年以内にFANGが独自の暗号通貨を作る

米暗号通貨取引所GeminiのCEO、Tyler Winklevoss氏は、CNBCのインタビューに答え、「FANG」が独自の暗号通貨を作ると予想しました。FANGは、大手ITプラットフォーマーのFacebook、Amazon、Netflix、Googleの頭文字を取った略称です。Tyler氏は,
「私達は、すべてのFANG企業が独自の暗号通貨プロジェクトを2年以内に始めると予想している」と話し、Facebook社が発行するLibraの存在は暗号通貨業界にとってポジティブな影響があると見ています。

米ドルにペッグして発行されるGemini Dollar(GUSD)にとって競合になるのではと問われたTylar氏は、Libraが複数の資産を担保に発行されることからGUSDと完全に競合するとは考えていないと答えました。ビットコインとLibraの取引ペアやGUSDとLibraの取引ペアには興味があることを明かしています。また、規制当局への教育の必要性も示し、「間違った規制はイノベーションを阻害するが、正しい規制はイノベーションベーションを開花させる」と発言しています。

イデオ・コラボ、ブロックチェーン系スタートアップの支援プログラム開始 |アマゾンやフィデリティ、イーサリアム財団などが支援パートナーに

米国拠点のデザインコンサルタント企業イデオの投資部門「イデオ・コラボ」は11日、ブロックチェーン系スタートアップ企業を支援する取り組み「スタートアップ・スタジオ」の開始を発表しました。支援パートナーとして、投資信託企業フィデリティ、会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツ、アマゾンなどが挙げられています。製品設計、法律、エンジニアリング、スマートコントラクト開発、財務、採用などさまざまな技能の向上を支援するため、スタートアップ企業に対し体験型講座(ワークショップ)を提供すると発表されています。ブロックチェーン系の起業家やスタートアップは公式サイトを通じスタートアップ・スタジオへの参加を申し込めるそうです。

支援パートナーの3社以外にも、仮想通貨イーサリアム(ETH)を展開するイーサリアム財団、ETH系スタートアップをハッカソンなどで支援する「ETHグローバル」、仮想通貨ステラ(XLM)のステラ財団、仮想通貨データ調査会社のメサーリ(Messari)、ブロックチェーン企業ニア(NEAR)など20社が協力しているといいます。

プロトコル・インフラ領域

イーサリアム共同設立者Vitalik氏、スケーラビリティ問題解決策としてBCHチェーン使用を提案

イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は13日、イーサリアムのスケーラビリティ(利用者増への適応能力)問題への一時的な解決策として、ビットコインキャッシュのブロックチェーンを利用することを提案しました。現在イーサリアムはスケーラビリティの改善を目指した大型アップグレード「イーサリアム2.0」を進めており、合意形成アルゴリズムPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)への移行を目指しています。

短期でスケーラビリティを改善するための新たな選択肢として他のブロックチェーンを使うことを提案し、とりわけ、ビットコインキャッシュのスループット(一定時間あたり処理できる取引数)が毎秒53キロバイトであり、イーサリアムの8キロバイトよりはるかに多いと指摘し、完璧なマッチなのではないかと述べています。手数料の安さやコミュニティーのオープンな姿勢などもポジティブな要因として挙げられています。

韓国サムスン、仮想通貨イーサリアム用分散型アプリの開発キットを公開

韓国のIT大手サムスンは、仮想通貨イーサリアム(ETH)用分散型アプリ(dApps)を開発できるキット「サムスン・ブロックチェーンSDK」(ベータ版)を公開しました。 dApps開発者は、サムスン・ブロックチェーンSDKを利用することで、アカウント管理とバックアップ、決済およびデジタル署名の円滑化、秘密鍵の作成・管理・署名・生体認証などを行える個人情報保護プラットフォーム「サムスン・ブロックチェーン・キーストア」およびその他のコールドウォレットなどを扱えるようになるといいます。正式版は2019年末までに公開予定で、利用可能な地域は米国、カナダ、韓国とされています。

その他のトピック

市況・投資領域

  • 米証券取引委員会(SEC)が11日、分散型コンピューティング・ネットワークのブロックスタック(Blockstack)に2800万ドルのトークン発行による資金調達を承認したことが判明しました。 SEC公認で初めてトークンを発行するケースとなります。
  • バイナンスの研究部門は12日、ビットコインとライトコインの半減期に伴うマイニング業者へのショックは「マージマイニング(merged mining)」により和らげられるかもしれないと発表しました。

政治・規制領域

  • ニューヨーク拠点のメトロポリタン銀行が、ステーブルコイン「テザー(USDT)」に関連する法人口座を閉鎖していることが判明しました。 NY州司法長官が、州のライセンスを取得せずにテザーなどがビジネスを行っていたとして訴追している状況でした。NY州との裁判に影響が出るとみられています。
  • 米連邦選挙委員会(FEC)が、オマル・レイズ氏の議会選挙戦に向けたインセンティブプログラムとしてERC20トークンが発行されることを承認しました。 同トークンは貨幣価値のない記念品であり、ボランティア参加者らへのインセンティブとして無料で発行するとしているからであるとされています。

社会領域

  • 米サンフランシスコ拠点の市場調査会社グランドビューリサーチは、世界の輸送管理システム(TMA)市場が2025年までに1988.2億ドル(約20兆円)規模に達すると発表し、ブロックチェーンなどがその成長を促すとしています。

ビジネス・事業領域

  • サムスン電子やハナ銀行などの韓国大手7社は、ブロックチェーンを利用したモバイル認証システム構築のためのコンソーシアムを結成しました。このシステムは最初に、大学の卒業証書の発行及び配布に適用されるといいます。
  • ブラジルのコーヒー農園協同組合のミナスル・プランズは、コーヒーに裏付けされたトークン発行を計画しています。 農家らは同コインで、肥料や機械類の他、農業関連以外の車や食料なども購入することができるとされています。
  • スペインの大手銀行サンタンデールは、Ripple社のシステム「xCurrent」を搭載したデジタルバンキングアプリ「One Pay FX」において、新たにイギリスとポーランド間の決済をサポートしました。これによりグループ内でのxCurrentの導入率が50%を超えたとされています。

プロトコル・インフラ領域

  • 仮想通貨イーサリアム (ETH)基盤の未来予測プラットフォーム「ベール(Veil)」は11日、サービスを閉鎖したことを発表しました。 初心者を定着させるための優れた仕組みを提供できなかったことが理由とされています。
  • 電力取引プラットフォームを構築・運営するLO3エナジーは10日、住友商事と石油大手シェルからの出資を発表しました。 LO3社は今年2月に丸紅とともに日本国内でブロックチェーン技術を用いた電力取引の実証実験を開始すると発表しています。

ブログを移転しました!(2019/08/15追記)

最後までお読みいただきありがとうございます。Ginco Researchはブログを以下に移転しております。引き続きブロックチェーン業界の動向や週次・四半期ごとのレポートを公開しておりますので、ぜひこちらもご覧ください!

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