Blockchain Weekly Report|Week4, Jun. 2019
目次
1. 注目トピック
- 市況・投資領域
- 政治・規制領域
- ビジネス・事業領域
- プロトコル領域
2. その他のトピック
- 市況・投資領域
- 政治・規制領域
- ビジネス・事業領域
- プロトコル領域
注目トピック
市況・投資領域
ビットコイン、1万ドル(約107万円)を突破
ビットコインの価格が1万ドル(約107万円)を回復し、約1年3カ月ぶりの高値をつけました。心理的節目である1万ドルを突破したことで、FOMO(取り残されることへの恐怖)が発動し、簡単に過去最高を更新するという見方があります。
価格急騰に5つの理由が挙げられています。
1. 個人投資家でなく機関投資家が主導か
グーグルの「ビットコイン」検索数は2017年の10%程であり、一般投資家はまだ盛り上がりをみせていません。一般投資家にFOMOが始まることにより、ビットコインがまだ上昇するかもしれないことを示唆しています。
2. ビットコインネットワークのセキュリティ強化
CoinTelegraphによると、ビットコインのハッシュレートが過去最高の65,000,000TH/sを更新しました。これは、より多くのユーザーによる取引を支えるビットコインネットワークの技術の向上を示唆しています。
他にも1日あたりのオンチェーン ・トランザクションの量や、ブロックサイズ等も、ビットコインを利用するユーザーの増加を示しています。
3. ビットコインの半減期は11ヵ月後
需給の関係から、半減期の前後1年ほどはビットコイン価格が上昇するという見方がアナリストから出ています。ビットコインの取引を承認するマイナーに対する報酬は、21万ブロックごとに半減されます。現在の報酬は12.5BTCで、報酬が6.25BTCになる次の半減期は、2020年の5月21日と推定されています。
4. 大きなマクロ的視点
ビットコインガチホ勢にとって短期でのビットコイン価格の動きは重要ではありません。そして彼らは、限られた供給量を持つビットコインが、これまでにない勢いで供給量が増え続ける法定通貨のパフォーマンスを上回るとみています。
18日、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、もし経済が改善しなかったら金融緩和もあると示唆しました。また米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)も近いうちに利下げもありうると示唆しています。金融緩和でさらなる法定通貨が印刷されることによって、ビットコインの希少性が上昇すると見られています。
5.中国人トレーダーが原因という見方も
2017年に仮想通貨取引所の運営が禁止されてから中国での仮想通貨取引は下火になったと思われていました。
しかし、ここ最近、米中貿易戦争が激化する中で中国人投資家が逃避先としてビットコインを購入しており、それが5月中旬からのビットコイン高騰につながったのではないかという見方が出始めています。
仮想通貨取引所ビットメックスのアーサー・ヘイズCEOによると、「OTC(店頭)取引は依然活況であり、政治的に許容される方法で買い手と売り手を中国で引き合わせている」ようです。
リップル(XRP)、上位通貨で最も期待できるチャートを形成
アナリストらはXRPの価格チャートに巨大な「強気ペナント」を見ており、今後XRPが10ドルを目標に大規模な放物線を描くと予想しています。
「XRPの長期予想:10ドル
ETHと同様に、私のリップルのロングは現在最も自信のあるトレードだ。このコインは力強く上昇している。下落を予想して売っている人たちは失敗に終わるだろう。」
前回高値の50セントを上抜ければ、XRPの価格は2019年末に向けて「長期目標」である10ドルを目指して暴騰すると予想されています。
政治・規制領域
Facebookの仮想通貨「Libra」、様々な反応を受ける
6月18日(米国時間)Facebookは、仮想通貨「Libra」と、それを扱うための新会社「Calibra」の計画について発表し、世界中で話題となりました。
Libraに対し、金融行政を監督する国の側での反応も様々です。アメリカ下院金融サービス委員長のマキシン・ウォーターズ議員は、Facebookに対し、議会と規制当局の審査が終わるまで、Libraの開発を一時中断するよう求めています。 これはFacebook側でのプライバシーの扱いや、仮想通貨市場のフェイルセーフの弱さを懸念してのものです。
また、欧州の当局者たちは、リブラは世界の金融システムや各国の中央銀行にとって体系的なリスクになり得るとの共通認識を示しています。
それに対しマークザッカーバーグは、「立法府議員の質問への応答準備は既にできている」とコメントしています。
ユーザー数的に最大市場となるインドでは、仮想通貨取引に対する厳しい規制が設けられ、事業免許取得は難しいと考えられます。インド政府は、暗号資産の保有もしくは取引にかかわった者に最長で10年の懲役刑を科す内容の法案を審議中です。
金融庁、Zaif事業を引き継いだフィスコ仮想通貨取引所に業務改善命令
金融庁は21日、仮想通貨交換業のフィスコ仮想通貨取引所に対し、資金決済法に基づく業務改善命令を出しました。今春から立ち入り検査を進めてきた結果、複数の法令違反を招いていたことや、マネーロンダリング(資金洗浄)対策などの内部管理体制、外部委託管理体制に不備があると判断しました。
社会領域
フィッシング詐欺を働いていた男らが逮捕 2016年のBitfinexのハッキングに関与か
イスラエルで仮想通貨取引所数カ所でフィッシング詐欺などを使ってログイン情報を手に入れ仮想通貨を不正に引き出していたとされる兄弟二人が逮捕されました。数千万ドルは最低でも得ていたとされ、2016年のBitfinexで起きた大規模なハッキングに関与している可能性もあるといいます。
セキュリティ大手LAC、仮想通貨の窃取を目論むハッカー集団「HYDSEVEN(ハイドセブン)」に関する報告書をまとめる
情報セキュリティ大手のラックは6月19日、仮想通貨の窃取を目論む新たなハッカー集団に関する報告書をまとめました。
報告書によると、「HYDSEVEN(ハイドセブン)」と呼ばれるグループは、2016年から継続的に日本やポーランドを含む国々でサイバー攻撃を行ってきました。同グループはロシア系言語を使って活動していると推測されると述べられています。HYDSEVENの名前はラックがつけたもので、このグループが攻撃を行う過程で「HYD」と「7」の文字と数字が複数回使われていたことから、そう命名されました。
ハイドセブンの攻撃の多くは、「スピアフィッシング」と呼ばれる、特定の組織や個人を狙ったEメールを送り個人情報を盗み取ることから始まります。大学や研究機関の研究者を装い、攻撃をしかけるといいます。
ビジネス・事業領域
Facebook、仮想通貨「Libra」を発表
2019年6月18日、Facebookは、独自の暗号資産 / 仮想通貨の「Libra(リブラ)」を発表しました。運営するのはFacebookの子会社であり、規制対象子会社の「 Calibra(カリブラ)」で、スイスのジュネーブに設置されます。
最大の特徴は「ステーブルコイン」であることです。ステーブルコインは、法定通貨などの実質資産に裏付けされており、価値が変わらないように作られています。価格の安定性と信頼性に加え、ブロックチェーン技術と価値が変わらないことにより決済価値が生まれます。価格の安定性から投資や投機としてのメリットは少ないですが、国際送金などにおける決済の速さや手数料の安さが特徴となっています。
Facebookは「個人情報」との紐づけを避けるため、個人情報規制の厳しいGDPR規制があるEU圏のスイス・ジュネーブに規制対象子会社のCalibra(カリブラ)を設置しました。
LINE、来月にも国内で仮想通貨の取引開始へ
無料通信アプリを手掛けるLINE(ライン)は、仮想通貨交換業者として近く金融庁に登録を済ませ、早ければ来月中にも国内でビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)の取引を開始します。
LINEのブロックチェーン関連事業を手掛けるグループ会社LVCは、金融庁の審査を経て今月中にも国内事業の前提となる登録業者として認められる見込みです。登録を受けてLINEは、「BITMAX」という名称の取引所を数週間内に開設し、ビットコインやライン独自の通貨「Link」を含む仮想通貨の売買や送金サービスを始めます。
国内約8000万人のユーザーに照準を当て、広告収入依存からの脱却へ向かっています。
仮想通貨取引所バイナンス、ビットコイン100%連動のトークンを発表
仮想通貨取引所バイナンスは17日、ビットコインに連動するトークンBTCBを発表しました。バイナンスの分散型取引所(DEX)の流動性を高める狙いです。
銀行を通して準備金の裏付けの確認が困難なステーブルコインのテザー等とは異なり、仮想通貨による準備金は監査が簡単になります。
BTCBは、バイナンスでBTCB / BTC取引で入手可能で、その後バイナンスのDEXに送金可能になる。バイナンスは、DEXでの流動性を高めて通貨の選択肢を増やすことを目指しています。
プロトコル領域
NEM財団、「カタパルト」のリリースに向けて開発スタジオ設立
ブロックチェーンプロジェクトNEMは、年内に予定されている、NEMプロトコルの大規模アップグレードを支援するために、NEMスタジオ(NEM Studios)を立ち上げることを発表しました。
プレスリリースによると、NEMベンチャーズ(NEM Ventures)の非営利持ち株会社NEMホールディングス(NEM Holdings)とNEM財団(NEM Foundation)は、プロトコルのアップグレード「カタパルト(Catapult)」の戦略およびバックエンド開発を支援するために、NEMスタジオを合同で設立します。
カタパルトは、企業に「高速、調整可能、かつスケーラブルな(拡張性のある)ブロックチェーンソリューション」を提供するとプレスリリースには記されています。
イーサリアム、大型アップデートを10月に予定
イーサリアム(Ethereum)の2019年後半に行なわれる大型アップデートの要件が、おおよそ決まりました。次期アップデートは、イスタンブール(Istanbul)というハードフォークです。改善提案(EIP)にはコアプロトコルの仕様やスマートコントラクトの基準などに関する提案が29個あり、その提案を基に改善方法のドラフトが書かれ、コードが実装されます。
主な改善要件には、以下のアップデートが含まれます。
- EIP-615:イーサリアム・バーチャルマシン(EVM)のコードの実装の分析を今より容易にする提案
- EIP-1057:特定用途向け集積回路(ASIC)より中央処理装置(GPU)にフレンドリーなPoW、プログラマティック・プルーフ・オブ・ワーク(ProgPoW)への仕様変更
- EIP 1108: 匿名トランザクション機能におけるガス(Gas)のコスト削減案
- EIP 1559:トランザクションの手数料計算モデルの変更。
コストが若干安くなると共に、Gas価格が予想しやすくなるとされている
Istanbulは以後、7月にクライアントをリリース予定、8月にテストネットのアップデート、10月にメインネットでハードフォークを行うというスケジュールになっています。
仮想通貨イーサリアムクラシック、「2019年9月17日」にアップデートを実施
仮想通貨イーサリアム(ETH)から分裂して誕生した仮想通貨イーサリアムクラシック(ETC)は、メインネットワークのアップデートである「Atlantis(アトランティス)」が今年9月に実施される予定であることが明らかになりました。
Atlantisは、イーサリアムクラシックネットワークとイーサリアムメインネットワークの間のチェーンの相互運用性を高めることを目的としており、双方ブロックチェーンからの分散アプリケーション(dApps)の移行をスムーズにするための最初のステップとなります。
アップデートに関するブロックチェーン上のターゲットブロック数は「8,772,000」で実施されることが明らかになっており、このブロック数から計算すると「9月17日の12:00(UTC)」に実施される予定です。
その他のトピック
市況・投資領域
- 世界で2番目に多い人口を誇る大国インドの仮想通貨取引所において、ビットコイン(BTC)価格の乖離が生じていることが判明しました。同国の規制状況や、法定通貨インド・ルピーの下落なども要因に挙げられています。
- 世界最大手の金融商品仲介業者であるロンドン拠点のTP ICAPが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の現物決済によるビットコイン先物の取り扱いを開始することを発表しました。
政治・規制領域
- 金融活動作業部会(FATF)が、暗号資産を用いた犯罪対策として、仮装資産サービス提供者(VASP)間で資産の送受金を行う際に顧客情報の共有を義務付ける規定を発表しました。
- G20の日程に合わせる形で開催される「V20」には、金融活動作業部会(FATF)が発表したガイダンスに対応するため、各国の仮想通貨関連業界の代表も大阪に結集します。FATF関係者と共に、ビジネスと技術両面で実行可能、かつ規制の目的にも叶う対策について議論する場を設けるようです。
- 仮想通貨カルダノ(ADA)の開発組織IOHKは、米国ジョージア州政府、及びトビリシ自由大学とのブロックチェーン・パートナーシップを締結しています。覚書(MoU)の調印を通じて、IOHKはジョージア州の教育部門のためにブロックチェーンソリューションを模索します。
社会領域
- 仮想通貨取引所を狙う「ゼロデイ攻撃」が続発しています。米仮想通貨取引所のCoinbaseは、17日、WebブラウザのFirefoxに発覚した脆弱性を悪用したゼロデイ攻撃を検出し、阻止しました。
- ビットコインの創設者サトシ・ナカモトを自称するクレイグ・ライト氏は、裁判所の要求通りにマイニングなどで得たビットコインの保有量を公開することに失敗しました。ライト氏は6月28日までに自身の行動が法廷侮辱罪にあたらない理由などを証明するために出廷する予定となっています。
- 米国のコンビニエンスストア、サークルKにビットコインATMが導入されることが発表されました。南部のアリゾナ州から西部のネバダ州にあるサークルKに、合計で20台のビットコインATMが導入予定です。
ビジネス・プロトコル領域
- ブロックチェーンの非営利団体組織IOTA(アイオータ)財団は、食品安全管理企業のプライモリティ(Primority)と連携し、ブロックチェーンを活用して食品アレルギーを追跡することを発表しました。
- 仮想通貨分析を行うコインメトリックス(Coin Metrics)は、ソーシャルマーケットアナリティクス(SMA)と連携して、ソーシャルメディア上の仮想通貨に対する感情のフィードをリアルタイムで提供していくと述べました。
- 世界最大の仮想通貨マイニングハードウエアメーカー、ビットメイン・テクノロジーズ(Bitmain Technologies)は、香港での新規株式公開(IPO)に失敗しましたが、アメリカで再挑戦するかもしれないとブルームバーグが報じました。
- 仮想通貨決済のCLIC Technologyは、ユーザーがイーサリアムを使って商品を購入できる、アプリに似たブラウザの拡張機能の開発に向け、ブロックチェーンインフラ・プロバイダーでB2BプラットフォームのOpportyと協力していると発表しました。2社の目標は、アマゾンでの買い物にイーサリアム決済を導入することです。
- 三井物産の子会社グルーヴァースは、ブロックチェーン技術を使った健康推進のための共通ポイント「ウェルネス貯金(ウェルちょ)」のサービス化に取り組んでいます。「健康通貨で“価値のサプライチェーン”を目指す」と同社社長の福島大地氏は述べました。
- Bakktは、GoogleのUXコンサルタントやPayPalの役員を務めていたChris Peterson氏をCPOとして迎え、新たなデジタル持参ウォレット「Bakkt Pay」のモバイルアプリ開発に取り組んでいると報じられました。
- 韓国大手IT企業サムスンは、3種のブロックチェーンプロダクトする予定であると発表しました。ヘルスケアと金融業界を統合するためのブロックチェーンベースの「自動保険請求サービス」、2つの空港のブロックチェーンプラットフォームをリンクするためのパイロットスキーム、および既存のNexledgerプラットフォームのクラウドベースの実装予定とのことです。
プロトコル・インフラ領域
- インターネットセキュリティやDDNSなどのWebサービスを提供する米Cloudflareは6月19日、Ethereumネットワークにアクセス可能なゲートウェイの提供を開始しました。Cloudflare Ethereum Gatewayは、追加のソフトウェアをインストールすることなく、Ethereumネットワークにアクセスすることを可能とします。
- ユーロポール(欧州刑事警察機構)は、捜査員に仮想通貨犯罪への対処方法を教えるゲームを開発しています。捜査員がゲームを使って「犯罪捜査での仮想通貨の追跡について訓練とアドバイス」を受けることができます。
ブログを移転しました!(2019/08/15追記)
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