日本におけるステーブルコインの未来:デジタルファイナンスの新たな可能性

GMO-Z.com Trust Company
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11 min readMay 27, 2024

※This is the Japanese version of our article ‘Stablecoins in Japan: Exploring New Frontiers in Digital Finance.

ステーブルコインは、従来の法定通貨と急速に発展するデジタル資産の世界を結びつけるものであり、世界金融における画期的な存在です。経済力と技術力で知られる日本は、特に外国為替市場において中心的な存在であるため、このイノベーションを先導しています。技術の進歩と市場ニーズの変化に伴い、ステーブルコインの応用に対する関心がますます高まっています。

この度、当社のグループ本社であるGMOインターネットグループは、野村ホールディングス、およびその子会社であるLaser Digitalとの基本合意を締結しました。この合意は、日本におけるステーブルコインの発行・償還・流通の仕組みおよび、ステーブルコインを発行する企業の支援を目的とした「ステーブルコイン・アズ・ア・サービス」ソリューションの提供を検討します。ステーブルコイン発行の実績とデジタル資産の専門知識を最大限に活かし、ステーブルコイン事業において最高水準のサービスを提供することを目指します。

この記事では、日本におけるステーブルコインの潜在的な需要を支える経済的視点、技術的進歩、および規制の枠組みについて掘り下げると共に、これらの機会を活用して金融業界の発展に寄与する取り組みについて説明します。

経済の観点から見た需要とイノベーション

日本のマクロ経済におけるステーブルコインの需要

M1マネーサプライや外国為替取引量といった主要なマクロ経済指標は、日本におけるステーブルコインの可能性を示しています。日本円は世界で最も取引されている通貨の上位3つに入り、全外国為替取引の約17%を占めており、世界経済において重要な位置を占めています。また、ステーブルコインは、通貨交換や国際取引をより効率的かつ低コストにする大きな機会を提供します。安定性を保ちながら、通貨交換に伴う摩擦を減らすことで、ステーブルコインは越境支払いや送金の効率を高めることができます。

さらに、ステーブルコインがM1マネーサプライに占める割合は、ステーブルコインに対する潜在的な市場規模を示唆しています。2024年3月、アメリカのM1マネーサプライは17兆9970億ドルに達し、主要な米ドルステーブルコインの総流通供給量は1468億5千万ドルであり、M1の0.82%を占めています。また、ステーブルコイン市場は年々著しい成長を遂げています。米ドルステーブルコインの供給量は、2020年の62億7千万ドルから2024年には1468億5千万ドルに増加し、M1に対する比率は0.15%から0.82%に上昇しました。これは、金融システムにおけるステーブルコインの重要性と可能性が増していることを示しています。

M1マネーサプライ(米国)。データソース:the Block

*米ドルステーブルコイン:USDT、USDC、USDD、TUSD、PYUSD、UST、USDP、BUSD、ZUSD

一方、日本のM1マネーサプライは108兆円に達していることから、適切な条件が整えば、ステーブルコインには広大な潜在市場があることを示唆しています。フィンテック技術と強固なブロックチェーンインフラにより、日本はステーブルコインの普及と成長に適した環境が整っています。さらに、日本は取引速度の向上やコストの削減など、決済システムを改善するためのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。これらの取り組みは、経済効率を大幅に向上させ、デジタルファイナンスの発展により有利な環境を提供することが期待されています。

技術革新と規制環境

日本のフィンテックおよびブロックチェーン環境は、政府による支援とデジタル通貨統合に向けたアプローチにより、ステーブルコインが金融サービスやデジタルエンターテイメントに革命をもたらす舞台を整えています。

日本政府は、進歩的な政策と規制改革を実施することで、デジタルおよび金融イノベーションに有利な環境を積極的に促進してきました。例えば、「Web3.0政策推進室」の設立や、企業が規制の即時変更なしに一定の条件下で金融技術をテストできる規制サンドボックスなどの様々な支援策は、最先端技術の採用を促進し、ステーブルコインの普及に向けた強固な支援体制を提供しています。

さらに、2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%に引き上げるという日本の方針は、決済環境を一変させるという取り組み姿勢を示しており、ステーブルコインの導入に適した環境となっています。この取り組みは、取引速度の向上だけでなく、従来の銀行取引に伴うコスト削減にも寄与します。これにより、よりシームレスで費用対効果の高い取引方法が日常的に利用されるようになり、デジタルファイナンスのさらなる普及が期待できます。

Web3とブロックチェーンゲームにおけるイノベーション

従来の金融分野に加えて、ステーブルコインは急成長しているWeb3およびブロックチェーンゲームの分野にも活用できます。近年、日本の主要なゲーム企業やテクノロジー企業は、ブロックチェーンゲームの開発やWeb3企業との提携など、Web3ソリューションへの投資を増やしています。これらの企業は、人気のIPを活用して、NFTや暗号通貨取引を組み込んだ没入型のゲーム体験を創出しています。

ステーブルコインをゲームエコシステムに統合することで、ゲーム内取引をシームレスかつ低コストで行うことができ、ユーザー体験が向上するとともに、プレイヤーがデジタル資産をより効率的かつ安全に管理できるようになります。日本は、他のアジア諸国と共に、強固なゲーム産業と分散型ゲーム経済の発展を支える規制アプローチにより、この分野をリードしています。

GMOインターネットグループと野村ホールディングスのパートナーシップについて

GMOインターネットグループと野村ホールディングスのパートナーシップは、グループ企業であるGMO TrustとLaser Digitalを含め、ブロックチェーン技術、コンプライアンス、リスク管理、および運営における高度な専門知識を結集しています。

当社は、GMOインターネットグループのグループ会社として、3年以上にわたり、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の認可のもと、イーサリアム、ステラー、ソラナといった主要なブロックチェーン上で、日本円ステーブルコインである「GYEN」や米ドルステーブルコインである「ZUSD」を発行しており、デジタル通貨の安全な運用を支える強固なシステムを運用しています。

野村ホールディングスは、日本でのステーブルコインの発行を支援するために、子会社であるLaser Digitalを通じて、デジタル資産に関するトレーディング、アセット・マネジメント、およびベンチャー投資に関する広範な専門知識を提供します。

GMOインターネットグループと野村ホールディングスは、ステーブルコイン発行の実績とデジタル資産の専門知識を最大限に活かし、ステーブルコイン事業において最高水準のサービスを提供することを目指します。この合意により、日本の金融エコシステムにおけるデジタル資産のアクセシビリティと有用性を高め、金融イノベーションの促進に寄与します。

「ステーブルコイン・アズ・ア・サービス」を通じて市場の課題に取り組む

日本では、厳格な法的枠組みがステーブルコインの発行を規制しており、事業者はコンプライアンスに十分な準備が必要となっています。銀行、信託銀行、認可を持つ送金業者など、ステーブルコインの発行を許可された金融機関は、ステーブルコインが国内の銀行内に保管されている現金またはその他の流動性の高い資産によって完全に裏付けされていることを保証しなければなりません。これらの規制は、市場の安定性を確保し、投資家を保護する一方で、運用の複雑さとコストを増大させます。

また、日本の規制環境では、マネーロンダリング(AML)およびテロ資金供与対策(CFT)の基準を遵守するために、すべてのステーブルコイン取引が厳重な監視の下で行われることが要求されます。さらに、発行者は、潜在的なサイバーセキュリティの脅威を軽減し、運用上の混乱に対応するために、安全な技術プラットフォームを開発する必要があります。

今回の基本合意では、ステーブルコインを発行する企業の支援を目的とした「ステーブルコイン・アズ・ア・サービス」ソリューションの提供についても検討しています。このサービスには、規制やコンプライアンスの管理、ブロックチェーン技術の統合、トランザクション管理などが含まれています。カスタマイズされたステーブルコインソリューションを用いることで、中小企業は大規模な投資を必要とせずに、既存のシステムにブロックチェーン技術を容易に統合することが可能になります。

この初期段階では、当社の共同の取り組みは、市場調査、技術評価、および厳格な規制コンプライアンス分析を中心に行われます。初期の作業では、関連するリスクを軽減し、日本の規制枠組みに準拠したスムーズなプロセスを提供する可能性を探ります。

将来を見据えて

日本の規制枠組みが進化し、デジタルファイナンス技術の市場需要が高まる中で、ステーブルコインが日本経済のデジタル化を大きく前進させる可能性が高まっています。今回の3社の基本合意は、規制に準拠し、この機会を最大限に活用するための基盤となります。今後、広範な金融エコシステムにおいてさらなる支援を行い、安全でコンプライアンスに準拠した新たな方法で日本のデジタルファイナンスの未来を形作ることを楽しみにしています。

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