メディア&エンタメ業界向け CDN、Media CDN リリース!

Yuichiro Danno
google-cloud-jp
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10 min readApr 26, 2022

こんにちは、メディア・エンターテイメント業界担当 Customer Engineer の Dan です。Google Cloud にメディア&エンタメのユースケースに特化した CDN がリリースされました!その名も Media CDN。そのまんまのネーミングは、自信の表れなんでしょう。公式ブログ記事「Introducing Media CDN — the modern extensible platform for delivering immersive experiences」公式ドキュメントに概要や使い方は記載されていますので、この記事ではMedia CDN はどのような特徴があり、どのようなユースケースにマッチするのか、また利用上の注意点などについて少し掘り下げてご紹介します。

注)現時点では Media CDN の利用は申請・許可制となっています。興味がある方は Google Cloud 営業担当者に、もしくはこちらのフォームからお問い合わせください。ただし、利用想定流量やユースケースによっては利用ができない場合がありますので、何卒ご了承ください。

TL; DR

  • Media CDN の概要とマッチするユースケース
  • Media CDN の特徴(推しポイント)
  • 利用上の注意点(2022/4/26 時点)

Media CDN の概要とマッチするユースケース

公式ブログ記事に「The same infrastructure that Google has built over the last decade to serve YouTube content to over 2 billion users is now being leveraged to deliver media at scale to Google Cloud customers with Media CDN.」と記載がある通り YouTube と同じインフラを活用しているということで、Media CDN はメディア & エンターテイメント企業が “没入型体験 (immersive experiences)” を提供できるようにするため、大容量ファイルを効率よく高いパフォーマンスで配信できるよう CDN を最適化しています。そのため動画配信サービスやゲームのアプリ配信といった、定常的に 1 ファイルあたり数 MB~GB の配信を行うワークロードやユースケースに適しています(逆にそうではないユースケースでは従来どおり Cloud CDN の利用が推奨になります)。

Media CDN のアーキテクチャ構成はそのような「大容量のメディアファイルを効率よく高いパフォーマンスで配信」を実現するために下図のような 3 tier の構成を取っています。

上図の青背景部分が 3 tier (3 レイヤー構造) の CDN となっていてそれぞれ下記の役割があります。

左側:In-ISP caches レイヤーは ISP 内に設置された Edge Cache Node 群で、ユーザーに一番近い場所に設置されていることから低レイテでコンテンツを返却する役割を担っています。

中央:Mid tier and peering edge は様々な ISP と peering されたミドルキャッシュ レイヤーで、In-ISP caches を束ねているキャッシュ群です。

右側:Long tail はオリジンを守る(オリジンへのトラフィックを最小限とする) Origin Shield としてのキャッシュで、前 2 レイヤー(In-ISP caches, Mid tier)でキャッシュを返却することができなかった場合でもオリジンへの問い合わせを極力少なくするように、大容量のキャッシュ ストレージを持っています。

各キャッシュ レイヤー間やオリジンとは、Google の広域なプライベートネットワークで密に接続されているので、キャッシュ フィルが発生した場合でも非常に低いレイテンシで配信することができます。

Media CDN はこのように 3 レイヤー構造全体で大規模なストレージ容量を備えた、オリジンへの問い合わせを最小限にする仕組みが用意されているため、ロングテールなコンテンツ配信を行う事業者にも最適なCDN となっています。

それでは概要とマッチするユースケースが分かったところで、次に Media CDN の特徴(個人的な推しポイント)をご紹介したいと思います。全機能や使い方については、公式ドキュメント(Media CDN) をご参照ください。

Media CDN の特徴(推しポイント)

特筆すべき点はいくつもあるのですが、今回は下記 3 つについてご紹介します。

  1. リアルタイム計測 & 細かいメトリクスの取得
  2. DevOps Friendly (各種 API & Terraform provider)
  3. オリジン フェイルオーバー

1. リアルタイム計測 & 細かいメトリクスの取得

Media CDN は Cloud CDN 同様、ログをニア リアルタイムで確認可能です。またログには Logging guide に記載の通り、下記のような情報が確認できます。

  • HTTP リクエストの中身
  • Cache ステータス
  • クライアント情報(AS 番号、地域、他)

また、Media CDN のメトリクスは edgecache.googleapis.com/edge_cache_route_rule で提供されます。現時点では下記 16 種類のメトリクスが取得可能です。

  • Frontend round trip time by client
  • HTTP time to first byte by client
  • HTTP time to last byte
  • HTTP time to last byte by client
  • Origin request count
  • Origin response bytes count
  • Origin time to first byte
  • Origin time to last byte
  • Request bytes count
  • Request bytes count by client
  • Request count
  • Request count by client
  • Request count by Cloud Armor action
  • Response bytes count
  • Total latencies
  • Total latencies by proxy

特に動画配信や AR/VR といった没入型体験が求められるサービスですと time to first byte (TTFB) や time to last byte (TTLB) 、Total latencies などはサービス品質(QoS [Quality of Service])ひいてはサービス体験(QoE [Quality of Experience])に関係する指標ですので、CDN としてこれらのメトリクスが提供されるのは非常にありがたいですね。(Cloud CDN でも、上記のいくつかはメトリクスとして提供されてましたが、TTFB / TTLB 等は Media CDN 独自の提供となっています)

また、これらのメトリクスはグループ条件やフィルターを使うことで各種用途にあったダッシュボードを Cloud Monitoring を使って自由に作成できます。例えば、視聴ユーザーの場所(ロケーション)ごとの TTFB/TTLB や、レイテンシーの 95 % タイル値といった指標を作成できます。

2. DevOps Friendly (各種 API & Terraform provider)

Media CDN はここに記載の通り gcloud コマンドや REST API で設定を行うことができる他、Terraform でコード(IaC)として管理することも可能でとても Developer Fiendly な CDN サービスだと感じてます。CDN の設定は CDN 会社から提供される設定シートや管理画面を参照する必要があったりしますが最新の設定をコードで確認できるのはとてもわかりやすいです。

Terraform Provider (google_network_services_edge_cache_service)

3. オリジン フェイルオーバー

Failover and timeouts に記載の通りですが、オリジン側へのアクセスが失敗する際に特定の条件に基づき別のオリジンサーバへフェイルオーバーする機能が標準搭載されています。とてもスマートですね。

特定の条件は下記になります。

  • リトライ条件(エラー内容および試行回数)
  • タイムアウト(リトライを行う上限時間)

今回ピックアップした上記 3 つの特徴の他にも、Media CDN には

のような機能や特徴が数多くあります。詳しくは、公式ドキュメント(Media CDN) をご参照ください(再)。

利用上の注意点(2022/4/26 時点)

Media CDN はリリース直後のプロダクトであり、現時点では下記の制約があります。将来的に解消されることが(個人的に強く)期待されておりますがご注意下さい。

  • (重要なことなので再掲)現時点では Media CDN の利用は申請・許可制となっています。興味がある方は Google Cloud 営業担当者に、もしくはこちらのフォームからお問い合わせください。ただし、利用想定流量やユースケースによっては利用ができない場合がありますので、何卒ご了承ください。
  • 現時点ではまだ大規模なライブ配信のユースケースに最適化されておりません。ライブ配信の場合は Cloud CDN の利用をご検討ください。(link

終わりに

今回は Media CDN についての特徴やユースケースについて深堀りしてみました。メディアやゲームと言った大容量のコンテンツを配信するワークロードに最適化されており、また Developer Friendly な CDN であることを理解いただけたのではないかと思います。公式ブログやドキュメントにある通り、上記のユースケースにマッチする様々な企業での利用も出てきています。Media CDN 単独で CDN として利用できますが、バックエンド・オリジンも含め Google Cloud でまとめた方が、よりパフォーマンスが出ることは間違いないので、あわせてご検討ください!Media CDN でイマーシブ体験の実現をぜひ!

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Yuichiro Danno
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Customer Engineer in Google Cloud. All views and opinions are my own.