re:Work と振り返るチーム OKR 2021

Koichi Watanabe
google-cloud-jp
Published in
9 min readDec 13, 2021

この Story に掲載された意見はすべて著者個人のものであり、組織の意見を反映するものではありません。

この記事は Google Cloud Japan Advent Calendar 2021 の 13 日目の記事です。

Google Cloud Japan のカスタマーエンジニアというチームのマネージャーの Koichi です。本記事では Google Cloud での働き方のテーマの 1 つとして、自チームにおける OKR の設定と運用について振り返りをしてみたいと思います。

OKR とは

OKR (Objectives and Key Results)とは、難易度の高い目標を掲げて成果指標を設定し、進捗状況を確認するための手法で、Google で広く用いられています。OKR で明確な目標を設定し、合意形成された成果指標によって達成度を測れるようになると、チーム内では成功への意欲が高まり、組織は優先度が整理された状態で、高い目標に集中的に取り組めるようになります。

Google における OKR の設定やガイドについては Google re:Work というサイトにて公開しています。

OKR の概要:

・目標は、場合によっては若干気後れするくらいの高いレベルに設定します。

・成果指標は、数値化して測定し、簡単に評価できるようにします(Google では 0~1.0 の範囲で設定しています)。

・OKR は組織の全員に公開して、誰もがお互いの作業状況を確認できるようにします。

・OKR では、目標の 60~70% の達成率が理想的です。逆に、達成率が常に 100% の場合、その OKR の設定レベルが低いと言えるので、もっと野心的な目標を立てる必要があります。

・評価が低かった場合は、次の OKR を改善するためのデータとして捉えるようにします。

・OKR は、従業員を評価するためのツールではありません。

・OKR は、社内共有のタスク管理ツールではありません。

re:Work にあるように、Google では OKR を企業戦略の設定に利用しています。私の所属する組織においても OKR を設定しており、私のチームではその組織 OKR を踏まえ、チーム OKR を設定して運用しています。

チーム OKR をどう設定したか

今年は COVID-19 のなか、全員がリモートワークという状況下で OKR を合意して運用をするという新しいチャレンジをした年でした。また、私自身が現チームのマネージャーとして今年からチームにジョインした中でした。

OKR 設定の中で重要なポイントは、その目標と成果指標をチームで合意することにあります。OKR は前述の通り人事評価ツールではありませんし、敢えてストレッチゴールを設定するため、チームの方向性を合意せず懐疑的なまま押し付けになってしまっては意欲が高まることに繋がりません :-)

私は幸いなことにチームの皆さんが自発的に昨年の振り返りや今年チャレンジすべきこと、成し遂げたいことを年度末にある程度 Google SlidesGoogle Sheets にまとめてくれており、そこにはソリューションに対するアイデアや部門連携に関するアイデアなどがありました。私は、チームが何を目指したいか、優先事項は何かを整理することから着手し、それから組織 OKR とアラインしてチーム OKR のドラフトを作成しました。

My Lessons Learned :
・チームからボトムアップで生まれてくる目標や成果指標を拾い上げ、組織 OKR とアラインをとる

カスタマーエンジニアは、お客様に Google Cloud をご利用いただく上でのソリューションのご提案や技術的な支援をする職種のため、OKR には自己開発の視点も盛り込みました。

OKR のドラフトを Google Sheets 上に作成した後、チームの皆さんに共有をしました。私のチームでは Google Meet で定期的にリモートのチーム ミーティングを設けているため、その場で説明をし、フィードバック期間を 2 週間ほど設けて、その間に Google Sheets のコメント機能や Google Chat で意見交換しました。

re:Work では、OKR 策定の際の確認事項でこのような点をあげています。

・チームの優先事項が、組織の成果指標のいずれかにつながっているか?

・チームの優先事項により、組織の OKR を達成する可能性が高まるか?

・チーム外の人から、このチームが取り組むべきと思われている事項は抜けていないか?

・優先事項は 3 つ以上あるか?

こうしてチームOKR が固まると同時に、我々のチームが関連する部門の各リーダーに内容を共有して認識を合わせ、最終的に関係者が全員揃っているリモート ミーティング上で OKR を発表・合意してリリースしました。

チーム OKR の運用

re:Work にもある通り、Google では、組織の OKR を 1 年ごとや四半期ごとに評価して共有するのが慣例になっています。私のチームでは、私がチーム OKR の各項目を四半期ごと 0〜1.0 のスコアにして進度を評価し、チームに向けてシェアをして振り返りを行なう形を取りました。

一方で、チーム単位の OKR の中には、日々の活動の積み重ねが成果指標 (KR) に細かく影響するようなものもあります。(例:xx に対する応答時間を xx% 短縮する)そのような成果指標は BigQuery にデータを集めて Google データポータル でダッシュボード化し、チーム ミーティング内で成果指標の状況を確認し、必要に応じて改善のアクションを話し合っています。こうして可視化して定期的にチームでレビューすることは、お互いに声を掛けて助け合う雰囲気に繋がっているように感じています。

My Lessons Learned:
・重要性が高い KR はこまめに成果指標の共有やチームで評価できる仕組みを設ける
・KR のトラッキングは、ダッシュボードなどで自動化・ツール化して Autonomy と Operational Excellence の両立を目指す(手間がかかると意欲が途切れる)

OKR の運用に関して聞かれる質問で、期中に OKR を変更するかということがあります。これは会社やチームにおいてそれぞれのやり方があると思う前提で、私のチームでは、チームの MVV (Mission/Vision/Value) が変わったり優先すべき目標が変わらない限り、OKR の変更をしない運用をしました。評価期間中に頻繁に KR を変更してしまうと、re:Work の OKR の作成時に注意すべき落とし穴にある、「現状維持でよし」的な OKR になり、計測して KR に対するギャップを分析し、何か工夫して手を打って、またその評価測定をして改善するといったループが損なわれる可能性があると考えているためです。結果的に今年は通年で OKR を変えることはありませんでした。

OKR の作成時に注意すべき落とし穴

1. OKR がストレッチ ゴールであるという説明の欠如

2. 「現状維持でよし」的な OKR

3. 意図的に実力を隠す

4. 目標の価値が低い

5. 目標に対する成果指標が不十分

他にも OKR を運用していくなかでチャレンジに感じることの 1 つが、成果指標を計測可能なメトリクスにする一方で、その成果指標に紐づく活動がその数字に貢献しているか計測しづらいようなケースです。このケースだと KR のプログレスと実際の活動との結びつきの可視性が弱く、Plan & Action が具体化しない可能性があります。そのまま続くと、目標に集中的に取り組めている状態にならないケースもあるため、チームで活動の計測方法、継続の要否をオープンに話し合えるレビューの場を定期的に設けると、チームや個人が心理的安全性を持って自らの殻を破り、仕事の優先順位を判断して、成功と失敗の両方から学ぶことができるのではないかと思います。

来年に向けて

この Advent Calendar を書いてる今、まさに来年の OKR 設定に向けてチームで振り返りが始まりました。チームの有志数名の方がリードを取り、今年の OKR 振り返りの手法の検討も含めてチーム全員を巻き込んで取り組んでいます。今日はちょうど KPT (参考) を行なったのですが、限られた時間で Try のアイデア出しにフォーカスするため、KP は事前に Google Sheets に各自で書き出す手法に挑戦しました。

ここから先、COVID-19 の状況もさることながら、リモートワークとオフィスワークを両立した働き方はこれまで以上に増えてくると思います。色々な環境変化が続く中でも、チームのこのようなコラボレーションから生まれてくる Try を拾い上げて、来年の組織 OKR と並行してチーム OKR を立て、組織のキックオフと同時にスタートを切っていきたいと考えています。

My Lessons Learned:
・OKR が多すぎないように注意。普段から意識できる OKR の数には限りがあるので何に集中すべきかよく考える。OKR はタスク管理ツールではないので、網羅的である必要性はない
・チーム OKR はマネージャーやリーダーが一方的に作るより、皆でチームを振り返り、皆で考えて合意する方が生産的で挑戦的な OKR になり意欲が高まる。(特に KR) そんな雰囲気やプロセスを歓迎してくれるチームの皆さんに感謝

目標設定はどれが正解というものでもなく、組織やチームによって様々な方法やアプローチがあると思います。改めて OKR というものを振り返ると、OKR で重要なのはその透明性で、OKR の価値もその透明性の中にあるように思います。チームが何を目指したいのか、その到達度をどのように測っていくのかをクリアーにし、チームの活動の方向性、目標に対するワクワク感を共有しながら、来年もまた大きな目標に向かっていけたらと思ってます。

本記事が読者の方の何かの参考になれたら幸いです。

さいごに

弊社ではカスタマーエンジニアを積極的に採用しています!ご興味のある方はぜひこちらの 採用サイト からエントリーお願いいたします!

明日 2021–12–14 は Taka Sato さんによる「2021 年の Cloud Spanner を振り返る」です。乞うご期待!

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