今年に入って自然災害が猛威を奮っている。7月はずっと猛暑で熱中症で人が死んでいるかと思ったら、西日本豪雨で220人以上の死者が出た。9月に入って台風21号が大阪を直撃して関西空港が水没したり10名以上の人が亡くなったり、さらには北海道胆振地方で震度7を計測する地震が発生し44名の死者が出たりしている。
こうした自然災害の激化を受けて、行政庁の想定ラインが問題視されている。
テレビをつけているとコメンテーターが「想定外を想定することが必要では?」という疑問を投げかけていた。
ふと考える。「『想定外を想定する』だって?」
ちょっとわけがわからない。「想定の範囲外」だから「想定外」なのだ。想定外を想定したとしてもどこまでいっても想定の範囲外は存在する。
ありとあらゆるリスクをゼロにすることはできないし、経済合理性がない。「命の問題をカネで計るのか」という反論がくるかもしれないが、巨大隕石が落っこちてきたらどうするとか、巨大不明生物が現れたらどうするといったような事態まで想定して防災計画を立てることはおよそ無駄であり無意味である。
だから現実的に可能なのは、激化する災害結果を踏まえた上で、想定の基準を見直すことなのだ。それですらコストとの見合いとなる。
東日本大震災のマグニチュードは9.0であり、1960年のチリ地震のマグニチュードは9.5であるが、では想定基準を引き上げてマグニチュード10まで想定するのか。
南海トラフ地震が発生したときの静岡の津波の高さは33m以上だと予想されているが、それでは足りないから100mの津波を想定するのか。実際に、1771年4月24日に発生した推定M7.4–8.7の八重山地震により引き起こされた津波の高さは石垣島で85.4mにまで達したそうだ。ここに基準を設定することが妥当だろうか。
やはり発生確率と被害の甚大性にかんがみて、どこかで基準を設けるしかないだろう。
その意味で、災害が起きてから政府の予想は甘かったというような批判は、あまり建設的なものでないと思う。