今年1月に一般社団法人焼き餃子協会を立ち上げました

焼き餃子協会代表理事・餃子ジョッキーの小野寺です。

2018年1月5日、一般社団法人焼き餃子協会を立ち上げました。もうすぐ1年になるので、この1年を振り返ってみようと思います。

なお、この記事は餃子アドベントカレンダー2018に参加しています。

設立した目的

日本人自身があまり意識をしていないかもしれませんが、実は焼き餃子は日本が誇るべき料理の一つです。中国の水餃子を、日本独自のアレンジを加えた料理が、焼き餃子なのです。ラーメンがもともと中華料理であるにも関わらず日本料理としても世界中に認知されているように、日本の焼き餃子は世界にもっと知られてもいい。

そんな焼き餃子、日本人のほとんどの人が「好き」と言うにも関わらず、全国に様々な餃子があることを「知られていない」という状況にあります。この理由はそれぞれのお店の餃子がブランド化できていないからということに他なりません。一般的な餃子に連想されるキーワードを挙げたとき、「宇都宮」「王将」以外のキーワードがあまり上がってくることは多くないのです。つまり、「好き」なのに認知が「浅い」。

一方で、ラーメンはどうでしょう?地方色やルーツなどを背景にして、個性的なラーメンが多く、好きなラーメンを聞けばいくつかの銘柄を挙げることができる人が多いのではないでしょうか。他にも、日本酒も同様に銘柄ごとに認識されているものが多いでしょう。しかし、餃子はまだそこまでのレベルに達していません。

ラーメンや日本酒のように、銘柄ごとにファンができるレベルになってこそ本当の「文化」といえると考えており、私たちは「焼き餃子文化」というものを確立するために一般社団法人焼き餃子協会を立ち上げました。

餃子銘柄のファンをつくる

焼き餃子を文化として認められるものにする、そのためには、餃子の銘柄ごとにファンができる世界を目指したい。

今は「宇都宮」「浜松」のような「地域」の認知までで、実際は宇都宮の各店でも味が異なることを知らない人も多いのです。そこで、それぞれの餃子に違いがあることを知ってもらうために餃子食べ比べイベントを2013年から個人的に開催してきました。しかし、その結果新たな課題が出てきました。

ひとつは、「食べ比べしたこと自体は記憶に残るけども、どこのなんという餃子かというところまで理解されることが少ない」ということでした。10種類ぐらい用意すると1つぐらいお気に入りになる、けども名前も覚えていないという程度でした。

もう一つは、せっかく好きなお取り寄せ餃子を見つけても、それを自宅で食べようとする人は少ないということでした。理由は、「餃子を上手に焼くことが難しいと感じるから」でした。

どうも、特定の餃子のファンをつくるためには、餃子が持つ味だけではなく、その餃子を作った人がどういう人で、どういう思いを持って作っているのかということを、丁寧に伝える必要があると感じました。

これらの課題を同時に解決する方法として、「餃子を焼かせる」ということが効果的だと発見致しました。餃子を一緒に焼く10分間の間、目の前の焼かれている餃子の物語をお伝えすると、あっという間にその餃子を好きになるのです。

焼く人を増やす

味の素冷凍食品さんの調査によると、餃子を焼いたことがある人は20%ほどしかいないそうです。つまり、餃子を上手に焼けた時の感動を味わったことがない人が、まだ80%もいるということになります。イベントにきてくれた方に聞いてみても、餃子を焼いたことはあるけど失敗したという人も多くいらっしゃいます。しかし、餃子を上手に焼くこと、失敗しないで焼くことは、実はそれほど難しくないのです。実際に、イベントに来てくださった方と一緒に焼くと、みんな綺麗に上手に焼けるようになりますし、その後も家族や友達に餃子を焼いてみせたと、嬉しそうに報告してくださります。

前述のとおり、餃子を焼く10分間というのは餃子に向き合う10分間で、その餃子がどういう材料からできて、どういう人が作っているのかという「物語」を知るには十分な時間となります。さらに、餃子を上手に焼くことができるようになると、その餃子を誰かに振る舞う時に、その餃子の物語も一緒に伝えてくれるようになります。そうして、餃子銘柄のファンが拡散していく現象が、小規模ながら確認できてきました。

今後は、もっとこの現象を大掛かりでやっていきたい。イベントを大きくするのはなかなか難しいので、メディアを使って増やしていきたいと考えています。

餃子の生産者と消費者をつなぐ

どういう人が、どういう思いで餃子をつくっているのか、これを知るために、餃子をつくっている人たちに会いに行き、対面してお話するという活動をこの1年は重点的にやってきました。許される時には工場の見学もさせて頂きながら、餃子をつくっている人たちの思いを伺ってきました。

安全で美味しい餃子を丁寧に作っていて、餃子にとても自信がありつつも、その思いは消費者に届いていないのではないかということを常々感じていました。その理由は、マーケティングが得意ではない生産者が多く、また客観的に自分の商品の魅力を捉えていないということが原因だと、お会いしてお話している中で考えました。

良い商品も、売れなければ衰退し、なくなってしまう。これは本当にもったいないことで、とはいえ生産者の経営マインドを変えることも時間のかかることです。そこで、私たちが生産者を代弁し、その餃子の魅力を伝えることを使命と考えるようになりました。

浜松市で期間限定でポップアップストアを展開し、全国のお取り寄せ餃子を焼いて販売した時に、どのようなポップを作ると売れ行きが良くなるかを実験しました。結果的に、「テレビや雑誌で紹介されました」というコピーを入れることが一番効果的で、次に「こういう人が作っています」という顔を出すことやが効果的ということがわかりました。客観的な評価の高いこと、信頼感や安心感を与えることが、餃子をマーケティングする上でもっとも大切になるのでしょう。この点を、どのように分かりやすく、そして心に刺さるような見せ方をするかを、それぞれの餃子屋さんとお話しながら見出していきたいと思います。

つくるひとをつなぐ

大阪王将さんの餃子工場を見学させて頂く機会を頂き、いくつかの餃子屋さんも一緒に工場見学して頂きました。餃界リーダーがどのような思いをもって餃子を作っているのかを聞けば、意外と大きいところも小さいところも、安全で美味しい餃子をつくりたいという思いに違いはないということが分かります。違いは、設備の質・量とスタッフの数の違い、そして研究開発能力の違いということでしょう。

こうした餃界リーダーから餃子屋さんが学び、オペレーションや設備を改善していくことで、より美味しい餃子を私たちは食べることができるようになるでしょう。また小さな餃子屋さんがつくる新しい餃子が新しい市場をつくることで、大手餃子メーカーさんも市場を拡大することができる。

餃子屋さんどうしが敵ではなく、仲間として情報交換し、切磋琢磨して改善や新商品開拓を行なっていくことで、餃子の品質はさらに高まり、餃子消費者が増え、餃子市場が大きくなっていくと期待できます。餃子市場が大きくなれば、周辺産業への影響も増えていくことでしょう。例えば農家さん、油メーカー、フライパンメーカー、ガス会社など。こうした大きな餃子産業に育てていくことも、焼き餃子協会のミッションであると考えています。そのためには、私たちがハブとなって、生産者間や周辺産業とつながりを広げて深めていくことに努めていきたいと考えています。

焼き餃子の未来

前述のとおり、焼き餃子を日本の食文化として世界に広めて行くことがゴールとなります。餃子自体を輸出することは色々な制約があり難しいのですが、餃子の焼き方については、輸出できる。また餃子に類する料理は海外にも存在しているし、小麦粉や肉、野菜などは海外でも調達できるので、餃子自体は海外でも現地調達できる。

ならば、焼き餃子協会ができることは、海外で餃子を焼く人を増やすという活動にたどり着きます。一方で少子高齢化が進む日本では、徐々に美味しい餃子屋さんが消えていくことが予想されますが、そこに外国で腕を磨いた焼き餃子マスターが跡を継ぐということもあるかもしれません。

いずれ、焼き餃子は日本独自の文化ではなくなることでしょう。だから、私たちの団体名に「日本」を入れていません。地球どこでも美味しい焼き餃子を食べることができる世界。そんな未来に向けて、私たちは引き続き活動をして参ります。

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Chikara Onodera
餃子ジョッキーの餃子フェス活動レポート

しかけ株式会社 代表取締役。一般社団法人焼き餃子協会 代表理事。餃子フェス主催者、餃子ジョッキー。全国の美味しい餃子を開拓して世界に広める活動、デジタルマーケティングなどを行なっています。