【レビュー】「神無月の巫女」(アニメ, 2004)

謎アニメの皮をかぶった伝説のアニメ。地雷要素はいろいろあるが、個人的には百合アニメとして見て100点満点の傑作。コダマナオコ作品とか好きな人は絶対に好きになるので是非見てほしい。

Koki Takahashi
HakataReviews
5 min readDec 13, 2018

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Amazonプライムビデオで視聴。本来行われる予定だった Serial Experiments Lain 鑑賞会がおじゃんになったため、博多市が不貞腐れて一人で見たアニメ。

放映されたのは2004年と比較的古いが、百合界隈では伝説的良作として名高い作品である。博多市もその名はかねがね聞き知っていたが、古い作品というのもあってなかなか食指が動かなかった。蓋を開けてみれば期待を遥かに上回ってくる作品だったので今まで見てこなかったのを大きく後悔している。

実は、博多市はむかし第一話だけ観て放置していた記憶がある。実のところ本作を楽しむ上で一番のハードルとなるのは、1話から容赦なく展開されるこの作品独特の属性てんこもり過ぎる世界観があるだろう。おそらく正常な百合厨なら1話で脳が破壊され、完走するまでの間に何度も「聞いていた話と違う」と思うだろう。が、何度も繰り返すとおりこの作品は後世までその名を残す傑作である。どうか強い心で我慢に我慢を重ねて見続けてほしい。

OP曲、ED曲、挿入歌はいずれもKOTOKOが担当しており、作品全体の雰囲気を一貫して凛々しく鋭いものにするのに一役買っている (聞き慣れた人はおそらく「エロゲか?」と思ってしまうが)。ちなみにこの作品はKOTOKOの出世作の一つでありそういう意味でも感慨深い。

なお特に百合好きに向けた特記点として、この作品は百合アニメながらストーリーにがっつりと男性キャラが絡んでくる物語となっている。男子禁制のガールズラブを求める人には全く合わないと思われるので注意されたい。

以下ネタバレ感想

ネタバレあり感想

いやね、本当に最初は全く期待してなかった。1話だけ見た限りでは伝奇ものかと思いきやなぜかロボットが出てくるし、百合ものかと思いきや普通の恋愛ものっぽい展開だし、あらゆる意味で期待を裏切られるアニメだった。あの1話からこの最終話が導かれるなどとは露ほども思わなかったし、1話と最終話のギャップでいうなら僕が見たアニメ史上屈指のレベル。いい意味でも悪い意味でも。

全体のストーリーとして、6話まででオロチ側の陣営が一通り顔見せし、このままジャンプ的展開でオロチを一体ずつ倒していく展開かと思いきや、悪落ち (?) したヒロインが単身で一掃してしまうとか本当にアツすぎる。まじで石化したオロチたちがあのあと二度と登場しないとは予想してなかった。

作品全体を通してエロい描写が多いけど、そのエロがちゃんと作品の薄暗い部分に取り込まれているところがすごい。枕営業の事後シーンとかほかのどのアニメで見られるんだ。こういうタブーにズブズブと切り込んでいく姿勢は本当に好きだし、ある意味「明るい」表側の物語と対照的で強く印象に残った。あと、ギロチのセリフで「澄ました顔しやがってテメエが一番変態じゃねえかこのレズ」っていうのも好きなセリフ。「女の子同士の関係」が決して常識じゃない世界観でこういうのきっちり拾っていくスタイルがとても良い。

8話以降、千歌音と姫子の巫女服が入れ替わり、二人のアクセントカラーが目に見えて変わったのが、お互いの関係性が取り返しようのつかないほど変わってしまったことを象徴しているようでとてつもなくエモい。こういう要素を暗に突っ込んでくるの描写として最高。

とまあ、総じてすばらしい作品だったが、こういったどんでん返しが見られるのが8話とか9話というのは構成として少し遅すぎると思う。最近の作品ではまどマギしかりけもフレしかり、こういう展開は3話ぐらいに置いておくのがエンターテイメントとしての正しい姿であるように思われる⋯⋯が、とはいえ今振り返ってみれば7話までの展開も決して無意味というほどではなかったし、やはりそこは原作あり作品ということでいろいろ難しい部分なのだろうと察せられる。

また、巫女アニメでありロボットアニメであるという同時性がこの作品に必要だったのかという点にも若干の疑義がある。どちらかに絞っても作品として成立したのではないか⋯⋯と僕は思う。まあこのあたりは作者の趣味の範疇だと思うので好きにすればいいと思うが、1話から大いに振り回された視聴者としてはこのあたり疑問に思わなくもない。

まとめると、この作品は最近の百合作品の潮流である「2人の物語」ではなく「(男を含めた) 3人の物語」という点で時代に合わない部分はあるかもしれないが、それでもなお鮮やかな輝きを持つ物語だった。このアニメが放映された2004年というのがpixivもニコニコ動画も無かった時代というのもあっていまいち認知度は高くないが、いまなお大いに見る価値のある素敵な作品である。冒頭に述べたとおりこういう雰囲気はコダマナオコ作品にも多く見られるので、このアニメを見て苦手を感じなかった人は是非「捏造トラップ」など見てみるとよいと思われる。また同じような時代感を感じさせる作品として、また同時に百合の古典的名作として「マリア様がみてる」も是非オススメしたい。

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