【レビュー】西尾維新『新本格魔法少女りすか』(小説)

既刊3巻読了。一言で表せないほどいつもの西尾維新作品。

Koki Takahashi
HakataReviews
3 min readOct 19, 2018

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第3巻が2007年に発刊して以来続刊なし。Wikipediaに記載があるとおり2016年ごろから少しずつ新情報が出ているものの、未だに完結の見通しは立っていない。

「城門」によって閉鎖された 〝魔法の国〟長崎県からやってきた魔法少女、水倉りすかと、佐賀県に住む小学五年生、供犠創貴。二人はそれぞれの目的を持ってタッグを組み、悪事を行う魔法使いを倒す「魔法狩り」を行いながら、りすかの父親を探す「冒険」に身を投じるのだった⋯⋯。

幼すぎる登場人物、ファンタジー世界なのに卑近すぎる地名、名前だけ先に出てくる大量の敵⋯⋯と、いっそ真面目にレビューするのが馬鹿らしくなるほどいつも通りの西尾維新。あえてジャンル分けするなら異能力系バトルもの⋯⋯ということになると思われるが、それだけでは済まない奇想天外な話の展開や、強烈すぎる伏線回収の鮮やかさは健在である。西尾維新作品、特に〈刀語〉シリーズや〈英雄〉シリーズが好きならば間違いなく読んだほうがいい作品である。逆に西尾維新作品を初めて読む場合は先にそちらを読んだほうがいいかもしれない。

本作において何よりも光っているのは、主人公供犠創貴のモノローグで展開される彼の独特な世界観である。詳細は省くが、世界を「くだらない」と断じながらも世界を「幸せにする」目的を持つという、一見矛盾したように思える彼の価値観が全編にわたって快刀乱麻を断つように (西尾維新的に言えば「快刀」というより「怪刀」かもしれない) 容赦なく振るわれる。必ずしも共感はできないかもしれないが、彼の一貫した世界への無関心と関心には底なしの強かさを感じずにはいられないし、同時に作品全体を彩る魅力にもなっている。

その他、本文中の装丁や写植にもこだわりが感じられる良作である。第3巻の発売から既に10年以上経ったが、ぜひとも完結まで漕ぎ着けてほしい作品の一つである。

どうでもいい話。本作品には、誤解でも誤用でもない正真正銘の「博多市」が登場する。個人的には思い入れのある作品の一つである。

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