知識と経験が交わるとき

HANDs! PROJECT
Jun 5, 2017 · 10 min read

スタディツアー in タイ (2017冬)

10歳の時、環境問題を解決するために人生を捧げようと決意して以来、環境問題の現場を直接見る機会をずっと求めていました。私が環境問題に興味を抱いたのは、ニュージーランドで絶滅の危機に瀕しているカカポという鳥の話がきっかけでした。人間の活動によって多くの種が危険に晒され、絶滅している一方で、私たちは日常生活の中でそのことを実感したり眼にしたりすることがない、それを知ってとても悲しく感じました。

カカポ(ニュージーランド自然保護省 Te Papa Atawhaiより)

気候変動やその他の環境問題についても同じで、大きな変化や災害が起きるまで、私たちは自分の周りの些細な変化を軽く見過ごしてしまうのです。

「世界で今何が起こっているか」を感じ、「これから世界にどのようなことが起きるのか」、そして「私たちはどうすべきか」を一人ひとりが自分ごととして考え、行動するためにはどのようにしたらよいのか、ずっと考えていました。そして、この HANDs!プロジェクトは、私にいくつかの解決策を見つけさせてくれました。

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HANDs!プロジェクト(2016年/2017年)スタディツアー後半は、2016年3月2日にタイのプーケットで幕を開けました。私たち24人のフェロー(プロジェクトの参加者)は、数ヶ月ぶりの再会に喜びながら、まずプーケット県タラーン郡パクロック区バンラー村に向かいました。ここはマングローブの保全における取り組みで緊密に協働している地域コミュニティです。この地域は、2004年スマトラ島沖地震の際の津波により、マングローブで守られた区域を除くすべてを流されてしまった地域でした。

私たちは、地域住民との対話を通じ被災時の経験談を聞いた後、現地のマングローブ林の視察を行いました。この視察を通じてわかったことは、日々の習慣や地域文化に根付いている行動は、防災にもサステナビリティにもつながるということでした。マングローブは、日常生活の中では地域の生態系や養殖場の水や空気を浄化するという役割を果たしますが、津波発生時には沿岸域を保護する重要な役割を持ちます。つまり、日常生活における環境保全が、災害など特殊な状況においても大変重要な意味をもつということを明白に表しています。

マングローブ林の見学の後、インド洋大地震による津波によって被害を受けたナム・ケム村防災ボランティアセンターを訪れました。このセンターは、実際の津波被害経験に基づいた訓練を受けた地元の防災(DRR)チームによって運営されています。私たちは、DRRチームのメンバーと一緒に被災現場や避難経路を視察し、津波被災時に考慮すべきポイントを分析しまし、その後、視察したポイントを共有しました。

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今回のスタディツアーのハイライトは、パンガー県カポン郡にあるヤワウィット・スクール(Yaowawit School)訪問でした。ヤワウィット・スクールは、恵まれない子ども達が質の良い教育を受けられるようにという目的で設立された学校です。私たちはこの学校で過ごした4日間で実に多くのことを学びました。デザイン思考のプロセスの実践として、枠組みを学び、試作品を作り、テストし、改良するということを身をもって体験しました。この試行錯誤の実践は、はじめは難しく苦労しましたが、最終的に今回のプログラム中で、一番大きな学びとなりました。

いくつかのレクチャーの後、ゲームデザイナーであり、HANDs!のアドバイザーでもある、タイのラッティゴーン・ウティゴーン(Ruttikorn Vuttikorn)さんによるゲーミフィケーションのワークショップが行われました。初めはピンとこなかったのですが、さまざまな種類のゲームを体験するうちに、私はいつしか夢中になっていました。

ラッティゴーンさんのワークショップでは、あるテーマについてただ「教える」のではなく、子ども達の興味をそそられる要素を追加することで、子ども達が「楽しく学べる」ようにするゲーミフィケーションという手法について知ることができました。今回の事例でいうと、環境教育と防災教育という教えるには少々真面目なテーマが、ゲームを通じて、子ども達が面白く学ぶことができるものになっていました。まず初めに、ラッティゴーンさんと、HANDs! プロジェクトの総合アドバイザーである永田宏和さんがデザインした既存の防災ゲームを体験してみました。ゲームでは、子ども達を主要テーマに巻き込むための語り聞かせや絵つきのカードが含まれていて、子ども達がテーマについて知り、理解し、記憶し、それについて考えられるようにできていました。

続くミッションは、ヤワウィット・スクールの生徒達に楽しい防災教育教材を提供するため、既存のゲームの枠組みをひとつ選び、タイの状況に合わせてローカライズすることでした。私はメモリーゲーム(記憶力を試すゲーム)のチームに加わりました。

このゲームでは、いろいろな種類の自然災害、災害準備に関連するトピックや、その他重要な情報がカードに書かれており、プレーヤーは各カテゴリにつき4枚セットのカードを集めなければなりません。たとえば、津波をテーマにしたカードには、1.直ちに逃げなさい。2.高いところに移動しなさい。3.他の人たちに知らせなさい。そして4.危険性の高い場所に戻ってはいけません。といった内容が盛り込まれています。セットを揃えるには、プレーヤーは自分がほしいカードを持っているかどうか他のプレーヤーに尋ねる必要があります。カードに書かれたキーワードを繰り返し口にすることで、プレーヤーは災害対策にとって重要な情報を覚えることができます。私たちのチームはゲームの地域特化に取り組みましたが、学校周辺地域に関連の深い災害のみを選択することに決め、「地震」を除外し、「地すべり」と「洪水」をトピックとして追加することにしました。私たちはまた、プレーヤーが他のプレーヤーにカードを要求する際のキーフレーズに「プリーズ(please)」という語を加えることで、ゲームに別の教育的構成要素を追加する工夫をしました。

プロトタイプ(試作品)の準備後、学生ボランティアを対象としてテストする機会がありました。ゲームの指示がわかりやすく適切かどうか試し、必要に応じて修正を加えるためです。そして最終日にも、私たちはゲームを生徒達に何回かプレーしてもらい、1回ごとにゲームに改良を加えました。最終的に生徒達は、私たちのゲームを心から楽しみ、災害準備の知識を身につけました。ゲームをローカライズすることと、カスタマイズすることは、私にとって大変意義深い学びでした。プロトタイプの製作、試行、そして改良を繰り返すというこのプロセスは、プロジェクト実施の際や、良い製品を提供する際に重要な要素のひとつである、という点は、このスタディツアーを通じて私たちフェローが学んだことでした。

これで終わりではありません。この時試作したゲームのプロトタイプは、さらなる改良を加えながら継続され、次の日本でのスタディツアーにおいて、さらにカスタマイズされました。

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私にとって「ゲーミフィケーション(gamification)」という言葉を耳にしたのはこのスタディツアーが初めてでした。環境問題や災害準備などの深刻な話題をもっと楽しく魅力的にすることによって、取り上げやすく、身近なものにすることがどれほど重要か、頭ではわかっていましたが、このツアーまで自分自身で経験したことはありませんでした。子供たちがどのように反応するかを目の当たりにしたこと、これは眼を見張る瞬間でした。

このスタディツアーでは、「現場で実際に起こっていること」や今後起こるであろうことを把握するため、現場を訪れたり、人々の声を聞いたり、経路をたどってみたり、私たちが第一に自分自身でリアルな現場を体験したかのようにうまくデザインされていました。他の人たちが災害に備えるのを手助けするために私たちは何をすべきなのか、ゲーミフィケーションのようなテクニックが、実践的な練習の場を人々に提供します。

知識と経験が出会うことは、どのようなトピックであれ、記憶に残し、心にとどめるための最初のステップです。このことを私はこのスタディツアーにおいて、ふたつの異なるやりかたで学びました。ひとつは自分の足で現場を訪れることによって、もうひとつはゲームの形式を通して情報を伝えることによってです。

私たちフェローは、この経験と知識を共有しました。このように、記憶に残る経験は私たちが日常生活の中で災害への備えに、ひいては私たち皆の持続可能な未来に、持続可能性とレジリエンスを付加できる、ひとつの方法だと信じます。

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坂野 晶(HANDs! Fellow 2016/2017)

NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー 理事長。徳島県上勝町で、ゴミを出さない考え方・方法を広めるゼロ・ウェイスト運動に取り組んでいる。

HANDs! MAGAZINE 日本語版

HANDs! MAGAZINE 日本語版では、HANDs! PROJECTに関する情報を投稿します。主に、毎年行われるスタディツアーの様子やフェローによるアクションプラン(事後活動)などについてアップします。 HANDs! PROJECTは、国際交流基金アジアセンターが主催する人材育成プロジェクトです。アジアの国々を中心に、防災及び被災地支援について、共に学び、知識を共有、 問題解決に向け協力し合う場として立ち上がりました。

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