大災害後のコミュニティーに希望を: “DEEL (Disaster Education through Experiential Learning)” Project

2014/2015年度タイのフェロー Panida とフィリピンのフェロー JKとJen によるアクションプラン

DEEL Project は、2014–2015のHANDs! フェローである、JK Anicoche(フィリピン)、 Jen Culibar(同)、Panida Tancharoen(タイ)の3人が立ち上げたアクションプラン。現在までに唯一、複数の国のフェローが参加するアクションプランとして活動しています。

フェローの特性を生かす

HANDs! で訪れたインドネシア、フィリピン、タイ、日本へのスタディーツアー中に3人が、それぞれの経験を持ち寄ったアクションプランを作ろうと意気投合し、DEEL Projectを立案。実施につなげました。

DEEL Projectの内容は、3人のバックグラウンドを反映した物になっていいます。JKは作家や舞台監督、パフォーマーとして活動中で、 Jenはソーシャルワーカーとして国際NGOなどで経験を積んでおり、Panidaはトイ(おもちゃ)・デザイナーとしてトイを社会的課題の解決に使う方策を探求しています。

Jenの災害援助活動の経験に加えて、ワークショップにJKによるダンスなどのパフォーマンス、Panidaが作製したトイによる防災ゲームなどを取り入れることで従来の防災教育よりクリエイティブなものになっています。

台風ハイエンの甚大な被害
サンタ・クルズ地区の集会所。DEELはここで活動した。

プロジェクトは、フィリピンのレイテ島にあるタクロバン市内サンタ・クルズ地区のコミュニティーを対象に5回実施されました。2013年11月に発生した台風ハイエンの被害をもっとも受けた地域の一つで、フィリピン全体では約8000人の死者・行方不明者が発生したとされます。

サンタ・クルズ地区は海辺に面しており、台風ハイエンの襲来時には、約8メートルの高潮による被害が甚大で、住民の2割にあたる約200人が犠牲になりました。しかし、漁業を生業にする住民は災害後も変わらず同地に住み続けています。Jen 、JK、 Planの3人は、今後同じような台風が発生した際に、被害をおさえるためには住民への防災教育が必要だと感じ、プロジェクトの実施場所に選びました。

サンタ・クルズ地区のコミュニティーでは、いまだ台風ハイエンの被害を受けたままの家屋が散見される
リーダーを通じて伝える防災知識

プログラムでは、Jenがソーシャルワーカの経験を用いて、災害時や災害後に被災者に対する必要なケアなどの情報を参加者に伝え、JKが参加者と一緒になってダンスなどのパフォーマンスをしながら災害後の自身の意識の変化などを振り返り、Panidaは、作成したトイを使って防災意識を高めるゲームを実施しました。毎回朝9時ごろから夕方までの7時間程度を使い、コミュニティーから推薦があった女性や若者を中心としたコミュニティーのリーダー約20人に対して行われました。

2016年2月20~21日の回では、Jenが中心となり、国連子どもの権利条約(UNCRC)とサイコロジカル・ファーストエイド(心理的救急法)の情報を参加者にシェア。

ワークショップで説明するJen
模造紙を使用して参加者に問いかけるように知識を伝える

Jenは模造紙を使用しながらUNCRCについて説明。子供にとっての心理的ストレスとはなにか、災害時には何がストレスになりえるか、それの対処法はどういったものがあるかを、教える形でなく住民と一緒に考えながら、コミュニティーにとって有益な情報に落とし込んでいきます。

その後、住民は子供役と大人役に分かれて実演。援助機関や警察など、子供の保護をしてくれる団体に簡潔にかつ素早く、災害後のコミュニティーにおける子供の情報をつなげる重要性を学びました。参加者の一人は「こういった情報を台風ハイエンが発生していた時に知っていた人はあまりおらず、意義深い回だった」と語りました。

Planが作成した防災ゲームを楽しむ参加者

他の回では、Planが作製した防災ゲームが好評で、参加者からは「難しくなく、楽しみながら学べるから毎回来たくなる」と話していました。

ボディペインティングを使ったワークショップ
1日のスケジュール

4月には住民が作成したハザードマップや避難経路の地図や、住民が考案したゲームなどをコミュニティーの住民向けに発表する機会も設けました。DEEL Projectはコミュニティーリーダーを通じて対象のコミュニティ住民に防災意識の啓蒙と知識の伝達を図ることを狙いに定めています。

コミュニティーベースの意義
Ralph martin p. redonaさん

DEELに参加した大学生のRalph martin p. redonaさんは、台風ハイエンの被害で父親を亡くしました。「コミュニティーの中で災害に対する知識を持つ人はほとんどいない」という現状を変えるために、コミュニティーの代表として参加しました。

Ralphさんは「教育をきちんと受けていない人も多いサンタ・クルズ地区では、まずユースの世代が学ぶことは重要だと思う。同じ地区に住む住民の話すことならば、きちんと話を聞いてくれる人も多く、私たちのこれからの活動が大事だ」と話しました。

DEELで学んだ知識を生かすために今後は、参加した青年らがコミュニティー向けに定期的な防災知識のレクチャーをしたり、ポスターや防災知識を学ぶドリルなどの作成していく意向です。

災害後のケアの重要性
コミュニティの子どもたち

タクロバン市内では、台風ハイエンの襲来後、様々な国内・国際機関、NGOによる救助・救援活動が行われました。タクロバン出身のJenも当時、セーブ・ザ・チルドレンで働いており救援活動に関わった経験を持ちます。だが当時の状況について、「救助・救援に必要な情報の収集が難しくて活動につなげられていない団体を数多く見た」といいます。

さらに住民の防災意識や知識が低いため、被害が大きくなり、災害後の救助・救援活動の効率化にもつなげられない現状も見たJen。Jenによると「援助物資の見返りに、子供にセックスを迫る援助団体職員もいた」という話も聞いたといい、「災害は、事前の予防策とともに、子供をはじめとした弱者への災害後のきちんとしたケアが求められる」と話します。

災害援助は一時的なもので終わることが多く、現在も行われている援助は少なくなっているといいます。「一時的な援助だけでなく、防災知識を伝えるような援助団体は少ないので、DEELの果たす意味は大きいと感じます」とJenは話しました。

ワークショップ後の一枚

DEEL Project

・実施したフェロー:JK Anicoche(フィリピン)、 Jen Culibar(同)、Panida Tancharoen(タイ)

・開催地:フィリピン・タクロバン島タクロバン市サンタ・クルズ地区内のコミュニティー「Sta. Cruz Tanauan」

・開催期間:2015年10月~4月の間に5回開催

・アウトリーチした人数:参加人数は約30人。コミュニティー全体では600人程度

・活動内容:ゲーミフィケーション、レクチャー、ロールプレイなど