環境と人々の営み

スタディツアーinインドネシア・カリマンタン島 2017/2018

2018年2月5日~2月11日まで実施されたスタディーツアーの舞台であるインドネシア・カリマンタン島。世界有数の熱帯雨林地帯として有名です。なぜ今回スタディーツアー先として選ばれたのでしょうか。

雨季と乾季と煙季!?

これはHANDs! プロジェクトのタイのラッティゴーン・アドバイザーがフェローに向けのイントロダクションとして描いた絵の一つです。カリマンタンは世界有数の熱帯雨林として有名ですが、森林破壊が進むスピードも世界でも有数の速さです。なぜでしょうか?

下の写真はフェローが訪れたカリマンタン島で撮影されたものです。カリマンタン島では、毎年のように乾季になると森林火災が発生し、その煙によって多くの住民が健康被害にあっています。森林火災の原因は大きく分けて二つです。乾季にカリマンタン島の大地に多く含まれる泥炭や森林への自然発火、パームオイル採取するための焼畑によって起こる人為的な発火です。

煙はインドネシア国内に留まらず、シンガポールなどまで達することもあり、大きな問題となっています。カリマンタンの人々は「カリマンタンでは雨季、乾季に比べてもう一つ季節がある。煙が町を覆いつくす煙の季節だ」と話します。

出典:WWF

さらに森林火災は森林破壊を促進しています。人間により違法森林伐採も森林破壊の原因となっており、オランウータンをはじめとした生物の暮らしにも大きな影響が出ています。

出典:WWF

HANDs! プロジェクトでは、防災にプラスして、環境問題も学ぶプログラムを作っています。環境問題も人災で起こるものが多く、地震などの自然災害と同じく、人の手で防いだり被害を小さくすることも可能であると考えているためです。

森林破壊といくつものステークホルダー

フェローら一行は、カリマンタン島の熱帯雨林の様子や森林破壊の現状を知るため、中部カリマンタン州パランカラヤを最初に訪問しました。そこからセバンガウ国立公園にフィールドワークを行いました。国立公園内のベースキャンプとなっている場所までは、スピードボートに乗って約1時間。泥炭で黒く濁った川を進みました。

ベースキャンプから歩いて公園内を散策。国立公園の土地を多く形作っている泥炭地や、火災の原因になる高温地点(ホットスポット)を計測する機器の説明などを職員から受けました。また国立公公園がWWFなどのNGOやJICAといった援助団体などと共にホットスポットを作らないように計算された水路の建設や地元住民への様々な啓蒙活動などを通して森林保全に取り組んでいる例も紹介されました。

一方で、森林破壊の大きな原因である人的な火災には、パームオイル産業を推し進めたい企業や元々国立公園内に住んでいる住民による伝統的な林業などが原因です。問題に多くのステークホルダーが絡んでおり、解決策も一つではないとの説明にフェローはコミュニティベースのアクションプランを実施する際のいい教訓を得ました。

ごみ問題に悩むイスラム寄宿塾

今回のスタディーツアーでは、HANDs!で学んだことを基にフェローが考えた教育ゲームを地元の子ども達に実施しました。舞台となったのはパランカラヤにあるイスラム寄宿塾(Pondok Pesantren Hidayatul Insan Fii Ta’Limiddin)です。

この学校は川の近くに位置しているためカリマンタン島でよく見られる伝統的な高床式の水上家屋になっています。しかしながら、川に近いために起こる問題にも直面しています。それは「ごみ処理」の問題です。

インドネシアではカリマンタン島に限らず、ごみ処理の問題は喫緊の課題です。中でもペットボトルやプラスチックのごみのポイ捨てが日常的に行われるなど問題の根は深いです。ある研究所の試算では、海洋に流れ込むプラスチックの排出国としてインドネシアはワースト2位に位置し、年間322万トンものプラスチックを海に放出しています。

この学校でも、ごみ箱やごみ収集が機能せずに校舎の下の川や土地にごみが山積しています。さらにこのごみは近隣住民が川に捨てたものが流れ着いたものも多く、学校だけでは解決できない正に社会問題を象徴した場所になっているといえるでしょう。

ゲームで問題点と解決策を学ぶ

ゲームによる社会課題の解決を行っているルティコーン・アドバイザーからゲーム、トイ(おもちゃ)の持つ楽しさを使い、ゲーム以外の用途に使用するゲーミフィケーションのワークシュップを受けたフェロー。5つのグループに分かれて学校で行うゲームを作り、学校の子どもらと実施しました。

Selamatkan Ikan(魚を助けよう)のグループは、ペットボトルで作成した魚を釣るゲームを行い、釣った魚(ペットボトル製)のおなかの中に入っているごみを見て、環境問題について学びました。Monster Sampah(ごみの怪獣)のグループは、ごみの分別を学べる寸劇を実施。子ども達が力を合わせてごみの分別をして「ごみお化け(Trash Monster)」を倒す仕組みとなっており、それぞれゲームを楽しむことを通して子ども達に身近なごみ問題への意識を変えさせる仕組みです。

子どもとともに先生や保護者も見学、参加するなどいままでにない学ぶの手法に学校の関係者も驚きと学びを得た様子です。開発したゲームは学校と地元の大学生のボランティアに託し、改良を重ねながら引き続き使ってもらうことになっています。

東洋のヴェニスでの社会活動

カリマンタン島でのスタディツアー最終部は、パランカラヤからバンジャルマシンに移動して行われました。バンジャルマシンは東洋のヴェニスと呼ばれるほど、水源が多く、住民の生活が水と密接な関係を持っています。

フェローは地元住民による消防団「Balakar」やフローティングハウスの美化プロジェクトを行っている地元大学の話を聞くなど、コミュニティベースの社会活動の現場を多く見学しました。多くの社会問題を地元住民は把握しており、自身で解決を図ろうとする姿勢は後述するアクション・プラン実施へ様々なヒントがあったはずです。

そして、アドバイザーの助言の下、スタディツアー後に各フェローが自分で行う環境、防災活動であるアクション・プランのアイデアを練り上げました。災害の知識を受け継ぐためのアーカイブプロジェクトから、被災時に使用する簡易緊急ボートや非常食の開発など様々なアイデアがフェローからなされました。今後、どのような形のアクション・プランが開発・実施されるのか、またHANDs! Magazineで報告することが楽しみです。

文責:藤本迅(国際交流基金ジャカルタ日本文化センター)