HashHubはブロックチェーン領域をどのように捉え、取り組んでいくか

Junya Hirano
HashHub
Published in
10 min readOct 15, 2019

前回のブログでは、HashHubのミッションや近々取り組んでいることを紹介しました。

今日は、HashHubはブロックチェーン領域をどのように捉え、取り組んでいくかを説明したいと思います。

最近、HashHubでは企業を顧客にブロックチェーンをビジネスに適用させる支援、または協業での取り組みを実施することも増えました。特にConsenSysとの連携は日本国内企業向けの共同開発を主な目的としています。

では、こういった取り組みが増えると、非中央集権的なアプリケーションやオープンファイナンスの取り組みはやらないのか?またはそれらの哲学を失ったのか、というような見方もされるかもしれません。または、場合によっては近々の資金繰りのために受託をやっているのか?というような疑問を持つ方もいるかもしれません。ですが、これらはいずれも間違いです。加えて、逆に企業のお客様では、パブリックブロックチェーンには全く興味ない、コンソーシアムブロックチェーンのみがビジネスと関連する事案であるという方もいらっしゃいますが、私達はこれとも違った考え方をしています。

これがブロックチェーンのややこしい難しさの一つだとも思っているのですが、オープンファイナンスとしてのブロックチェーンや、業務効率化としてのブロックチェーンの実装、これらは別々であるものの、いずれ交わるものであると考えています。

整理をするためにブロックチェーンという分野を、以下の3つに分けてみましょう。

・自由なお金や、新しいアセットクラス

・グローバルステートを共有できる分散ネットワークによって可能になる分野

・企業のブロックチェーンの活用

それぞれ順番に説明します。

1.自由なお金や、新しいアセットクラス

まず、自由なお金や新しいアセットクラスという分野があります。典型的なものは中央銀行や国家など特定の主体が存在せずとも、インターネット上のコモディティアセットとしての地位を獲得したBitcoinです。ここのカテゴリでの主要プロダクトは、新しいアセットそれ自体と、それに関連する産業の取引所やマイニングなどです。これに関しては説明不要でしょう。

オルタネイティヴ資産とそれを取り巻く産業の誕生には大きな意味がありますし、Bitcoinはその誕生からわずか10年でアセットクラスとして十分な地位を獲得しています。

主要なプロダクト:Bitcoin、その他のトークン、マイニング、取引所など

2.グローバルステートを共有できる分散ネットワークによって可能になる分野

Ethereumなどのスマートコントラクトを実行できるブロックチェーンは、グローバルステートを共有できる分散ネットワークです。

このネットワークでは、誰かがある権利を確かに持っていることや、強制執行の実行、そしてその強制執行性の検証などが可能になっています。

これによって現在、可能になっていることは、相手が誰であるかを分からなくとも一定の条件によって、担保資産を強制執行したりすることができる借り入れなどです。

これを可能にしているスマートコントラクトは「契約の自動執行」とも説明されますが、これは良い例えではなく本質的でもありません。

Nick Szaboは、2004年にIEEEのワークショップでスマートコントラクトというコンセプトを説明するために、自動販売機を例としてあげました。
自動販売機の取引で必要なのは、「購入に必要な金額を投入する。」と「購入したい飲料のボタンを押す。」のふたつの行動です。
このふたつの行動が達成された場合のみ契約が成立するのです。
自動販売機は、このようにして「お金を入れて商品を選択すると、商品とお金の所有権が同時に入れ替わる」システムです。
そして、この商取引には契約書が必要なく、自動販売機という機械(プログラム)がお金を受け取ったと認識をしたときに、商取引が成立します。

Nick Szaboは、自動販売機を例に出しましたが、特定の行動をするだけで契約が成立したことになるのが、スマートコントラクトのアイデアでした。

この例を持ち出して、スマートコントラクトの説明に自動販売機の比喩は頻繁に用いられ、スマートコントラクトは契約の自動執行と表現されます。

しかし、この例はそれっぽく聞こえますが、スマートコントラクトの特性として、これはややわかりにくい比喩であり、不適切だと思っています。

契約の自動執行という意味の場合、Nick Szaboが紹介をしているように、自動販売機ですでに実現している概念です。そもそもAを投入して、Bが返ってくるという意味での自動執行であれば、それは通常の関数で制御ができます。今、例えばあるファイルを有料でダウンロードしたいとして、クレジットカードの番号を入力して、それをプログラムが確認したら人が介在しなくてもファイルはダウンロードができます。

これは想像していたスマートコントラクトとは異なりますね。では、僕たちが未来に欲しいスマートコントラクトに必要な要素はなにかというと、検証性と不変性の2つの要素です。

例えば、MakerDAOは、現在、CDPスマートコントラクトにETHがデポジットされており、そのデポジットを裏付けにDAI(Stablecoin)を発行しています。このときCDPにはETHをデポジットしたらDAIを生成できることが制御されており、さらにそれを第三者が検証でき、そのコードの変更が不可能なことが特徴です。
だからMakerDAOは公共財的に機能し、そのスマートコントラクトの裏付けがあるDAIは安心して二次流通が出来ています。スマートコントラクトという言葉の本質的価値は、トランザクションをプログラムで制御できるという事実に加えて、検証性と不変性の2つの要素があることです。

「契約の自動執行」というだけの説明には、この要素が含まれていなく、スマートコントラクトの価値をしばしば勘違いさせているという指摘は、日本語圏だけでなく英語圏でもよく問題にされます。

https://twitter.com/VitalikButerin/status/1051160932699770882?s=20

特に、検証性という特徴は、ブロックチェーンのユースケースを考える上でとても重要な要素の一つであり、考える余地がある分野だと言えます。そして、その要素が加わることによって、知らない人とお金の貸し借りができることや、担保資産の没収を強制執行できることが出来るようになります。

主要なプロダクト:DApps、DeFiなど

3.企業のブロックチェーンの活用

企業がブロックチェーンを活用することによって可能になることを簡潔に説明するならば、信用コストが削減されることによる業務効率化や新しいアプリケーションの実現です。

順序立ててわかりやすく説明します。

ブロックチェーンが用いられたネットワーク、例えばBitcoinにおいて、私があるBitcoinを持っていたとして、持っている事実を証明することはとても簡単です。

私が、自身のBitcoinの公開鍵を提示し、それに紐付いた秘密鍵で署名をすれば、そのBitcoinは間違いなく自分が持っていることを証明できます。

では、これがブロックチェーン上の大学の卒業証明書であればどうでしょう。

ある人がある大学が卒業したという大学の署名付きトークンを持っているという事実を証明することが容易になるかもしれません。

これによって削減されるコストは、個人が就職先などに卒業証明を提示しなければいけない時間・企業がある人がたしかに大学を卒業していると問い合わせなど確認するコスト・それらのコストを嫌って発生していたかもしれない学歴詐称という社会的コストです。

また、他にももう一つ例を出しましょう。貿易金融でのブロックチェーンの活用は世界的にもとても注目されているトピックです。貿易金融のネットワークにおいて、ある輸入者が、LC(信用状)を確かに発行しているという事実を簡単に証明することも出来るかもしれません。そしてその証明を用いて、これまでの事務コストが早く安くなる可能性があり、貿易事業者にとってはキャッシュインのサイクルが早くなるかもしれません。

これは信頼コストが削減されたことによる効用です。このような信頼コストを削減できるポイントは、各産業の様々なポイントに存在しています。

また、それをBitcoinやEthereumのようなパーミションレスなブロックチェーンではなく、コンソーシアムブロックチェーンで一部のビジネスロジックを秘匿化したり、権限を制御しながら実装をすることが一般的です。企業が利用をするコンソーシアムブロックチェーンでは、ある企業間で協業ネットワークを構築できます。

これらは、複数社間で共有ができる高度なERPシステムとも表現ができ、ブロックチェーンの適用箇所として大きな価値があることは既に実証されています。

主要なプロダクト:サプライチェーン、決済ネットワーク、証券化など

HashHubが取り組むブロックチェーン領域

このような新しいアセットクラス、グローバルステートを共有できる分散ネットワーク、業務効率化としてのブロックチェーン、これらは全て異なる重要性があり、それぞれに大きな市場が出来上がるはずです。

ブロックチェーンという一つの単語から様々な文脈が語られるので、このような分け方は中々しっくりくるのではないかと思います。

さて、そのうえでHashHubは上記のブロックチェーンの3つの文脈のうちで、どの部分を行うかというと、3つの分野全てに関わります。

冒頭に述べた通り、これらの3つはある地点で交わるポイントが増えるものでもあるからです。例えば、コンソーシアムブロックチェーンはあるコンソーシアムブロックチェーン同士、またはパブリックブロックチェーンと相互互換性を持ち得るはずです。

また、既にパブリックブロックチェーンのEthereumの開発アセットが、コンソーシアムブロックチェーンで適用される例も多くあります。つまり、近々でもパブリックブロックチェーン上の取り組みがエンタープライズブロックチェーンで活きることや、逆のパターンは大いにありえます。

中長期では、技術的な相互互換性がある点が多く生まれるに従い、エンタープライズブロックチェーンとパブリックブロックチェーンをどちらもビジネスで使うということは増えるでしょう。

今回のブログではブロックチェーンの文脈をあえて3つ分けていますが、そのときにはこのそれぞれの文脈が交わる機会も増えるはずです。

HashHubはブロックチェーンを基軸技術として知見を蓄積して、必要とタイミングに応じて、様々な産業に関わる準備をしています。

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