未来は予想するのはやっぱり難しいし、未来にべットをすることはもっと難しいという話

Junya Hirano
HashHub
Published in
9 min readJan 18, 2020

私達の会社HashHubはブロックチェーンにコミットする会社です。ブロックチェーンはやはり新しい技術領域であり、未来への向き合い方みたいなものをよく考えます。

「未来は予想することは簡単であり、難しいことはタイミングの予測や参入角度」という言葉はよく知られています。この台詞のオリジナルは誰だか分からないのですが、これはある程度正しいと思います。

ただし、一方で正しくないと思う部分、未来は予想するのはやっぱり難しいと考えることもあり、それらについて書きたいと思います。つまり未来予測の簡単な部分と、やっぱり難しいという部分の整理です。自分が何を理解していて、何を理解していないかを認知する作業でもあります。

簡単な未来の予想とは何か

まず、簡単な未来予想とは何かから始めましょう。

例えば、インターネットが来る(来た)、人工知能が来る(来た)、XRが来る、ブロックチェーンが来る、これらは全て予測可能な未来で、当たり前の未来だと思います。

ブロックチェーンの有用性の一例として、そのネットワークに参加する人たちが交換するデータの信頼性を付与して、全体のバリューチェーンを効率化させたりします。これを実際に実現することのハードルはあれど、人はいずれ効率性を求めてその未来の実現に到達します。それを実現するにはいくつかのハードルが存在しますが、それらのハードルは将来解決されるハードルであり、頭がいい人が考えれば、大体同じ未来予想の結果に行き着きます。

パブリックブロックチェーンにおける暗号通貨であれば、それは不特定多数によるグローバルスケールでのコーディネーションを実行できる燃料です。これらが重視されない世界は考えにくいですし、これも頭がいい人が考えれば、行き着く未来予想の結果と言えます。

この程度の未来予想は簡単なのです。

難しい未来の予想とは何か

では、難しい未来の予想とはなんでしょうか。

例えば、最近ではEコマースサイトのバックエンドになっているサービスであるShopifyがとても伸びており、わずか4年で株価は20倍になりました。

私は、あのAmazonですらShopifyの価値に気づくのに時間がかかってリプレイスが難しくなっていることは示唆ある出来事だと思います。

Amazonは90年代から、インターネットが広く普及する世界を想像し、ECが広く普及した世界を想像してきました。ECが広く普及した世界を想像したら、マスECサイトと別に、顧客と関係値を深めながら商売する個人店みたいなECも存在していて然るべきです。前者はエブリシングストでありウォールマートのような存在、後者は街の個人店です。2020年であれば、EC業界はこうなると当然の如く分かるのにも関わらず、あのAmazonですら後者の世界を無視してしました。つまり、未来を予測しきれてはいなかったのです。

この場合、ECが普及した世界では、例えエブリシングストアがあったとしても、人々は自分のオリジナルのECサイトを作りたいという欲求があることを予想できなかったと言えます。ある技術や文化が浸透したときに生まれる新しい需要までを予想することは難しいです。

難しい未来の予想の例をもう一つ挙げてみます。インターネット産業で最も収益を補足したビジネスは、広告とクラウドでした。あらゆるインターネットビジネスの中で最も利益率の高いものがこれら2つです。

「インターネットが普及した世界」、これだけであれば、90年代にドットコムバブルがあった時点で大勢に予想されています。

しかし、そのインターネットが普及した世界で最も優れたビジネスモデルが何かは予想が難しく、多くの人の回答は曖昧であるか、または間違ったものでした。そのドル箱のビジネスモデルの解を最初に導き出したのはGoogleですが、同社は上場前はその収益性の高さを他社に知られないように3–4年もの間、収益状況について強い秘匿性を徹底していました。

競合企業が広告がドル箱であると認識した時はGoogleの上場準備中であり、より大衆がそれがそれを認識するのはさらに後です。インターネットを普及する世界を予想したときから10年近くの時間が経っています。予想した世界で何が価値を補足するか、これが難しい未来予想の一つです。

タイミングと参入角度、未来へのべットの仕方

「未来は予想することは簡単であり、難しいことはタイミングの予測や参入角度」に戻りますが、後者のタイミングの予測や参入角度に触れます。

Googleは検索エンジンを作って、その後にリリースするアドセンスで結果的に広告ビジネスをドル箱にしました。

Googleの場合は、検索ボックスにその人が気になるもの、今欲しいものが入力され、それが広告のターゲティングと極めて相性が良かったことを運良く発見しました。検索ボックスは彼らにとって素晴らしい参入の角度であったと言えます。

タイミングと参入角度の選定は難しいですが、これを暗号通貨業界でこれを最も優れた形で実行した企業がどこかと問われれば、私はBinanceと答えます。取引所Binanceは2020年の今もユーザーに支持をされて、世界最大級の出来高を維持しています。同社の1年目の利益は、ドイツ銀行を上回り、その成長スピードは異例です。ドイツ銀行は、創業から148年、支店数は2400、従業員は98720人ですが、Binanceの従業員は当時の時点で200人です。同社は、人類の歴史上、最も早いスピードで、創業期のgoogleやFacebookより早いスピードで現在進行系で成長を続けている企業です。

タイミングの点でいえば、Binanceの創業は2017年です。BinanecのCEO・創業者であるCZは、中国の取引所OKEXでのCTOとしての勤務を経て起業していますが、すぐには取引所を創業せず、他取引所に技術供与をする受託の期間を1年間ほど経ています。2017年に自身の取引所を設立して参入した理由は漸く市場が大きくなりつつあったからと語っています。彼によると、2016年時点では、マーケットのサイズが大きくなく、良いビジネスではなかったからと言います。

確かに日本国内でみても、2016年まで暗号通貨取引所はほとんど黒字化しておらず、すぐに利益体質なビジネスを構築することは難しかったでしょう。このとき彼は機会を見計らいながら、他取引所への技術供与を通して、キャッシュフローを得て、かつ開発力を高めました。そして2017年に暗号通貨市場に新しい市場参加者の流入の兆し、具体的には、日本でコインチェックなどの取引所がテレビCMを打ちはじめたり、韓国市場の本格的な立ち上がりを期に、同年6月にBinanceを創業します。

参入角度の点では、取引所というビジネスを選定して、その中でもBinanceはCrypto to Cryptoの市場から事業を開始しました。Crypto to Cryptoの市場は簡単に国境を超えてグローバルの顧客に訴求できます。

同社は、グローバルで市場を専有してからそのあとにスポット取引以外の市場提供や各国のローカル取引所を開設、現在ではレンディングやステーキング、独自ブロックチェーンへと事業を広げています。もし、Binanceの創業事業が、一カ国をターゲットにした戦略や、最初から法定通貨<>Cryptoに拘っていたら今のようには成長していないでしょう。他にも将来に振り返れば「あの企業はタイミングも参入角度も完璧だった」という企業が今すでに生まれているかもしれません。

また彼らがBinanceをはじめるにあたり、タイミングと参入角度を見極められた理由は、CEOが当時2015年でのナンバーワン取引所であったOKEXというバンテージポイントでCTOをしていた経験によるのだろうと思います。タイミングと参入角度を見極めやすい位置もまた存在します。

未来を予想してさらに適切な位置から適切な方法でべットすることはさらに難しいと思います。

未来予想の難易度のランク付けをしてみる

ここまで整理すると、未来予想について簡単なことと難しいことが大分整理出来てきました。未来予想の難易度をランク付けをしてみるとこんな感じになります。

“ブロックチェーンが来る”みたいな大雑把な未来予想:難易度★☆☆☆☆

ある技術や文化が浸透したときに生まれる新しい需要までを予想:難易度★★★☆☆

その未来の中でどのビジネスが最も価値を補足しているか具体的にイメージする:難易度★★★★☆

予想した未来に対してどうべットするかをイメージする(参入角度・タイミング):難易度★★★★★

私達は、大雑把な未来を予測して、その未来の中で自分たちが得るポジションを見つけて、現実にするための角度を見つける、実際に行動できるだけの力量を準備する、ということを進めています。

”ブロックチェーンが来る”という大雑把な未来予想は未来予想ですらなく、既に実現しつつある事実だとも言えます。「インターネットが未来である」と信じた人がその後、インターネットが普及した世界で人々がどのようなものを欲するか全ては予想しきれなかったり、広告やクラウドが最も収益性が高いビジネスと気づかなかったことなどと同様に、今私達の未来予想は十分ではありません。

HashHubでは、その既に進行している未来に、一緒にべットできる創業メンバーを募集しています。そもそもあまり何をやっている会社か、何を生業にしている会社か外からは見えにくいですが、候補者にはオープンです。今回の記事やこれまでのブログから少しでも気になった方はお問い合わせ下さい。

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