創業期の企業として思索する働き方・リモートワーク・副業について

Junya Hirano
HashHub
Published in
10 min readDec 13, 2019

今回の記事では、弊社HashHubでの働き方、その中でもとりわけリモートワーク・副業についての考え方を書きます。働き方改革というワードが広まり、多様性のある働き方には注目が集まり、それらが恐らく実際に広まっているのだとうということもなんとなく実感をしています。

とりわけHashHubは、創業初期の会社で所謂スタートアップ企業というカテゴリに属される会社です。

スタートアップ企業とは、多くの場合、ベンチャーキャピタルなどからリスクマネーを注入し、短期間で大きな成長を目指す企業です。

弊社の場合、現時点で外部資本を調達することはしていませんが、ブロックチェーンという領域についてコミットをして5–10年という時間軸で高い成長率を目指しており、その観点では変わりありません。このような短期間で高い成長を目指そうとするスタートアップというカテゴリの企業は、インターネット業界の周りにいる人は忘れがちかもしれませんが、本来世の中的にはマジョリティではなく他多くの企業と比べて特殊な企業です。

そういったマジョリティではない企業体として、自分たちが今のフェーズでどういった働き方をするべきかの現時点での試行錯誤を今回は書こうと思います。

そのため、今回書く話は、創業期でない企業については当てはまらないだろうこと、弊社の考え方も今後また流動的に変わるであろうことをあらかじめ免責しておきます。また多くの従業員には給与とは別に生株またはストックオプションのインセンティブ付与を前提としています。

■自律性や分散性が高い組織というトレンド

リモートや副業の前に、よりグローバルでは、自律性・分散性が高い組織というトレンドが少なからず存在するように思います。

特に私達の暗号通貨・ブロックチェーン領域ではこの傾向が強く、業界で有名かつ事業規模的にも大きな存在であるBinanceやConsenSysといった企業は、このような分散性・自律性のある組織を好みます。

これらの企業では、世界中にリモートワークするメンバーが広がり、出社しているメンバーも在籍するものの、自宅などで業務を遂行している従業員もかなり多いと認識しています。彼らはそれでありながら数百人の従業員を抱え、しかも高い成長率であろうという事例です。その他にもこの業界では、より小規模なプロジェクトや多くのオープンソースのプロジェクトがこのような働き方をしている例が世界ではあります。

暗号通貨・ブロックチェーンという業界は、その原点がサイファーパンクであったことからも、イデオロギーとしてこのような働き方を好み、この業界は恐らく最も先進的かつ実験的です。

また、ブロックチェーン業界以外に目を向けるのであれば、ピーターティールのFounders Fundも、自律性や分散性が高い組織であることが喧伝されています。同ファンドでは、定例会議はなく、全体ミーティングは数週間に一度程度、チームは運営的にも物理的にも分散的でサンフランシスコを拠点にしているわけでもなく、1.5億円ほどのチケットの投資意思決定はSlackで完結するといいます.全体で集まる機会は、四半期に一回、1日かけてオフサイトで全員集まるようです。(参照:https://techcrunch.com/2019/11/15/vc-cyan-banister-on-her-path/ )

文量の関係でこれ以上例は挙げませんが、このような組織は少しずつ増えています。

恐らくこのような自律的かつ分散的な組織の利点は、意思決定の早さ、そして一地域で人を募集するわけではないので多様な地域からタレントを集められる点です。

しかしながら、このような理想的な組織の実現は容易ではないですし、実際のところこれらの組織の内情も当事者でないとわからず鵜呑みにするべきではありません。

また、ブロックチェーン業界の企業にこのような組織が多いことについて、2017年前後のICOで通常の株式での調達と比べて必要以上に資金を集め、その資金をマネジメントしていることによって可能にしているという場合も少なくない点は割り引く必要があるだろうと感じています。加えて例に挙げたFounders Fundが、このような自律性が高く分散性のある組織になっていることは、同社がファンド業務であるという業務的な相性もあるでしょう。

これらのトレンドの反証にも触れておくと、米国最大の取引所企業Coinbaseは、数は正確ではないですが多くのリモート業務を2018年に縮小したことが発表されています。同社は結局のところ同じ場所で仕事をすることがより効率的で幸福でもあったとコメントしています。(参照: https://www.ccn.com/coinbase-downsizes-more-than-a-dozen-people-report/ )

リモートワークの向き不向きは、職責によるところも大きいでしょう。

■創業期の企業としての働き方の考え方

これらのトレンドが少なからずあることを前提として、今自分たちができる創業期の企業としての働き方を考えます。

リモートワークを取り入れるのであれそうでないのであれ、組織が分散的で否かに関わらず、世界に影響を与えたいプロダクトを作り高い成長率を目指す企業であるとするならば、他者と協力しなくてはいけません。

他者と協力するということは、つまり、全体は部分の総和よりも大きいことを理解することで、部分はそれに基づき行動することです。

具体的には仕事を分担する必要があり、仕事を分担するには信頼や謙虚さが求められます。信頼を醸成するには広い帯域のコミュニケーションが必要です。

リモートワークはときにこれを阻害することがあります。2019年ではビデオチャットやクラウドベースの業務ツールが一般化しており、リモートで普通に仕事することは出来るようになり、地理的に自由に仕事をしながら会社勤務以上の収入を得るような人も増えたと思います。

しかしながら弊社HashHubを始め、恐らく世に言われるスタートアップと呼ばれる企業は、より大きいものを目指しているはずであり、それを実現するためには高い帯域のコミュニケーションが必要です。とりわけ現在のHashHubの事業の半分以上は、顧客と密に向き合うコンサルティング業務や、自社のプロダクトも含まれるソフトウェア開発であり、リモートワークの不向きのポジションのほうが多いと認識しています。

このため現在、弊社ではリモートの勤務は推奨していません。なお週に一度程度集中したいときにリモートや大雨で自宅作業をするなどの判断は個々に任せており、その点では多少リモートワークは取り入れているのかもしれません。ただしこの場合も社内の他の人とのミーティングなどに支障がないよう原則をしていますし、生活を充実するためのリモートではなく、仕事の効率性を高めると判断したらリモートにしてくださいということを同じく各自判断してもらっています。

■副業についての考え方

また、多様な働き方では、リモートワーク以外に副業というテーマがあります。

週4日A社+2日B社で合計6日を働いたり、週2日A社+1日B社で合計3日を働いたりはあるべき働き方であると思います。

しかしながら、短期間で高い成長を目指そうとするスタートアップというカテゴリの企業にとって、これは一概には言えないと考えています。というのも、もし週に1日の副業がある人は、実際に副業の実務をするのは1日でもマインドシェアはより取られる場合も存在します。

そして、それらの副業をする人が、休日も会社のことを考えて試行錯誤をしてたり自己研鑽をしている人と同じ評価を受けることは定性的部分でフェアではないと考えます。(そして初期の創業企業にとってそういう人は存在するべきです。)まだ整備されていませんが、評価制度が作られるときは勘案されるべき事項だと思っており、そこにはフェアネスが存在するべきだと思っています。

しかし、同時に前述のように、複数の仕事をすることもあるべき働き方では考えており、それを希望する人がいることも知っています。

結論としては、HashHubでは副業は、あまり推奨はしていないものの、副業をしたい希望者は申告制にしています。

リモートや副業についての考え方は所謂ライフワークバランスのような話から逆行するというイメージを持たれるかもしれませんが、それぞれの会社には恐らくフェーズにあった働き方があり、創業初期からライフワークバランスを重視していたら会社は多くの場合成り立ちません。

■より未来を考える

端的には、ここまでHashHubでは現状のフェーズでは、リモートワーク・副業について決して推奨していないことを説明しました。その理由としては、既に述べたように大きなことを実現するのに必要なチームワークを醸成するためです。

ですが、さらに未来に目を向けてみます。

今後の日本ではどんどん労働人口が減ることも確実で、そしてその残った労働人口の平均年齢もあがることから家庭などを考慮した働き方を考慮する人がさらに増えることもまた確実です。加えて、5GやVRなども出てくるとリモートをさらに取り入れようという動きは明らかです。

それらを考えると、むしろ10年もしたらリモートでも広い帯域でチームを醸成できるようにならねばならず、これらは日本を例に出しましたが、グローバルスケールでも同じです。

長い視野の理想では、リモートでもコミュニケーションの質を落とさず広帯域のコミュニケーションでチームビルディングが出来て、タレントを広い地域から集められるべきです。そのように考えると日本人だけチームも望ましくはありません。

しかしながら、5–10年後に、今と比べた時にチームの人数も増えコロケーションで働くことを中心とした弊社が、そのような組織にいきなり転身できるかと言えば難しいはずです。

そういった未来を考えて、実験的な意味も込めてドイツに住みながら仕事をするフルリモートの社員が最近ジョインしました。(参照:https://www.wantedly.com/companies/hashhub/post_articles/194631 )

週5日8時間コミットの一般的な社員契約で、彼の主な仕事は、リサーチ業務やコンサルティング案件の資料作成で、これらは比較的リモートとは相性が良いと認識しています。今後、現時点でフルリモートの社員の採用を増やす予定はありませんが、個人的には自律性・分散性が高い組織で全てが上手くいくのであれば、それは望ましいことであるという理想は持っています。

その点で、将来にそれをHashHub内で実現できる土台を築いてほしいですし、既にリモートで効率性の高い仕事をすることに色々な壁が見え始めていますがそれらを試行錯誤して解決してほしいと思っています。

リモートワークや副業などを是とする企業文化が広まっていますが、それらにどのように向き合うかは会社のフェーズと事業性質を勘案して慎重に考えており、現状このような方針を立てています。

仲間を募集しています!

HashHubではやりたいことが多くありながらも、リソースが全く足りていません。エンジニア、ビジネスデベロップメントなどのポジションを中心に採用を強化しています。

現時点でのブロックチェーンの経験や知識は問わず、これまで読んで頂いた内容に共感をしてくれた人は是非お声掛けください。

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