南房総台風15号後レポvol⑥

2020年10月31日-館山市富崎地区-

Okamawari Yukiko
HEAD Journal
Oct 29, 2021

--

このレポートシリーズはHEAD研究会の学生事務局を務める、芝浦工業大学院建設工学専攻プロジェクトデザイン研究室所属の大学院生、岡廻由貴子による、南房総エリアの2019年台風災害の復興支援活動のレポートです。大学研究室による現場支援の活動の現状を記します。

今回も自分の修士研究と研究室で行なっている屋根防水実験で富崎地域を訪問しました。

10月は気温もちょうど良く過ごしやすい天気で
気持ちよかったです。

富崎ベーカリー

〈新しいカフェができていた〉

初日休憩に新しくできたカフェに訪問させて頂きました。店主は2年前に古民家を購入してこの地域に移住したそう。

「もともとは都内で仕事でしていたそうだが何もやりたくない。何もやりたくないから移住した。」と言っていました。

なんだか私には不思議な感じでした。私は逆に忙しい方が好き。時間に追われていると隙間時間に勉強できるじゃんなんていろんなものに手をつけられる。逆に暇だと時間あるじゃんってサボりがちになって夜になって自分が嫌いになるのです。

〈何もしないとは?〉

なにもしないってなんなんだろうか?難しいけど喧騒とした街の中で毎日仕事をこなしている忙しい日々を何かしているというのであればゆっくりできた日は何もしていないのだろうか?

ただ言われた業務をロボットのようにこなしていたらそれはそれで何もしていないと感じるのかもしれないです。逆にのんびりと夕日を見ているだけでこの日に満足していたら何かやったと感じるのかもしれないです。何かやったの指標とはなんなのだろうか。その日に何かをするコトなのか、忙しさなのか、成果なのか、満足度なのだろうかと思います。

「何もやりたくない。」でも本当になにもやっていない訳ではない。このカフェも被災し、瓦が落ち、被害をうけました。修理して、自分の手でリノベーションをして出来たカフェで店長をし、住民の居場所をつくりだしています。「何もやりたくない」という生き方を店主自ら行なっていると思っていることが「何もやりたくない」の生き方なのかもしれません。

〈生き方はひとそれぞれ?〉

富崎地区にあるカフェ&宿泊施設。もともと二地域居住していたが、その後この土地に移住したご夫婦が経営しています。

安価な価格帯で多くの人に愛されている印象でした。

ここは人の交流の場になってもらいたいと夫婦は言っていた。サーファーが長期滞在している事もあれば、この地域に暮らす住民の親戚などが遊びに来た時に泊まるのは布団など出すのも大変なのでと泊まる事や空き家の所有者が空き家の様子を見に来た時に使うという方もいるそうです。

何度かカフェに遊びに行ったことがあるのだが、サーフィンで長期滞在している方が仕事を手伝ったりなんだか家族の様です。趣味などで通っている人・地域の人・空き家や親戚がいる人など幅広い人々が通い続ける場所には温かみをと交流の拠点となっていることが感じられた空間です。

〈目的もひとそれぞれ?〉

考えてみれば、富崎地区にあるベーカリーも県外から移住してきた方がやっている。狭い店内に並べられた小ぶりのおしゃれなパンは一瞬富崎にいる感覚を忘れさせるそんなお店です。

彼らが富崎に引っ越してきた目的はのびのびとした子育て環境と話していた。

ボランティア活動の際何度かパンを差し入れをもらっていたのを覚えています。長年ここに暮らしてきた住民とも関わりつつ、この地域にきたボランティアを暖かく受け入れてくれたのでした。

災害後、外部からの人を警戒する人もいる中、人を暖かく受け入れられる人がいることも地域で重要であるのかもしれません。

〈豊かに生きる〉

コロナの影響でリモートワークも広まってきた中、生き方や都心への考え方も変化しつつある。移住には様々な目的があるが、富崎地区だけにおいても私がお話を聞けた方3者ともそれぞれの生き方や信念がありとてもおもしろかったです。

「何もしたくない」をする

「地域の交流の場を提供する」をする

「のびのびとした子育て環境をつくること」をする

地域の外部から来た移住者に対し「どうせ何かあったらこの地域を見捨てて出て行くんだろう?」というようなセリフをテレビなどでもよく見ますが、その地域に対し何かしら目標とする生き方や信念があれば災害があっても変わらず地域に居続けてくれる可能性があるように感じました。

(文責 岡廻由貴子)

--

--