工務店の繋がり方(その2)

研究会インタビューシリーズ vol.08 — HEAD研究会ビルダータスクフォース委員長 権藤智之さん —

Okamawari Yukiko
HEAD Journal
8 min readMar 4, 2020

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ビルダーTF 委員長 権藤智之さん[東京大学特任准教授]

<工務店:スケールが小さいからできること>

HEAD研究会が始まった時に日本の建材を解き放つというようなことを言ってました。カタログは無駄だと言っていたんですよね。いろんな建材のカタログがあって、下手したら春夏秋冬変わるんですよ。結構分厚いし無駄でそんなに好みが変わるのかとか合わせる必要あるのかという話があって。ハウスメーカーとかだと一気に何千棟と買うから好みに合わせてもいいと思いますけど。

逆に工務店は少量でも使えるから少量つくっているところと直接結びつく可能性はあると思います。田舎でこだわりの金物を作っていますと言うような工房があったとしてそういうのも使えるんですよ。

ハウスメーカーが何千個作ってくださいと言ってもそういうところは作れないじゃないですか。何か問題起きた時に何千個リコールとかあったらえらい問題ですよね。そう言う柔軟性は工務店の強みですよね。だからもし建材の方も何かいっぱい売ろうとかに主眼になければちゃんと家づくりをしている人と結びつきたいとかそういう関係は出て来ているんじゃないででしょうか。

小さいところと小さいところが結びつく可能性はこれから開かれてくると思います。小さい数で注文ができたりとか、評価する時に何棟に使われましたではなく少ないけどこんな面白いものを作っていますというところを考えたいです。

— 最近、個人のハンドメイドを売れるサイトや広告とか作りますよといった自分の能力を販売できるサイトもできて普及していますしね。大量ではないけど自分をうまく表現するベースとなるところがあれば。使った人の評価とかそう言うところの判断が載るとか。

そうなんですよね。工務店もつくりたいもの探しと言うか。ずっと受け身で仕事をやって来ていて、けれどもわかりやすい指標が耐震や断熱気密性とか性能を軸にあったと思うんです。でも今はどこも性能は十分だし新築を買えばどこの家も暖かいし、そうすると技術的な競争は終わって何を作りたいのかやっと考えられるようになった時期じゃないですか。

例えば芸大の入試なんかでスケッチうまい競争をくぐり抜けてスケッチめっちゃうまい人たちが入って来たけど、で何を作りたいの?と言う感じの状況だと思うんですよ。耐震、断熱上手い人達が、で何を作りたいのという状況です。

今までは何か共有の軸の勝負をやって来たんですけどこれからは自分はどうしようかなと言う時ですよね。ビルダーTFにきている工務店さんは色々やっていますし、どこかに揃える必要もないし、違うことをやっている話を懇親会とかで聞けるのがいいんじゃないですかね。

— 今年の活動を見ていくと今までどのようなことがあってこれからどうしていきたいと言うことを講義でということでしょうか。

はい。最後行き着くところはデザインだと言っています。性能のことも事業体制のことも建材も統合するという意味で。

でも自分がやりたいことって言っても、注文住宅では工務店があんまり押し付けるわけにはいかないし。なんとかブランド確立して共感してもらいたいと思っているんじゃないでしょうか。

でも、良くないのは、ある程度規模がないとそれができない雰囲気になってきたことですね。年間3,4棟の工務店なんかも前は楽しくやっていたんですけど…今なかなか厳しくなって来ていると思います。長期優良をクリアしないと土俵にもあげてもらえない流れになってきて、それに手間を取られるんですよ。そうすると3,4人の工務店さんはなかなか厳しかったりします。あるいは、知り合いから受注みたいなことが減る中で、分譲みたいなことをしてあそこはそこそこやってるなみたいな信用がないと受注できないとか。

でも地域に工務店さんって必要ですよね。山代さんがやっている南房総なんかも台風が来た時は工務店さんは必要だなと思うけど、新築なんてなかなか建たない中で、普段何をやらせておくのって問題だと思います。

今年雪が少ないから日本海側の工務店やゼネコンさんは除雪の仕事が減って大変ですよ。いつも雪で困っているんですけど雪がないことでも困るんです。これでこういう会社がなくなっちゃって大雪が降ったら困りますよね。特に地方だと工務店は色々サステナブルじゃない状況ですよね。北海道も札幌はいいんですけど、他の地域は新築がほぼない状況で、まずは人を地域に呼んでこないとって工務店が地域づくりや移住促進みたいなことからやってますね。有名な当別の工務店は老人ホームですら、商店街の復興でもなんでもやっていますね。これはさっきの話でいうと地域の幅を広げないでやることを増やす路線だと思います。こうなると公共の仕事ですね。

<地域を担う工務店のあり方を考える>

— 地域づくりから関わってくれる工務店があればいいのかなと思いますね。

工務店さんに公共的な役割を担ってもらうなら、こういう仕組みが必要みたいな考え方が必要だと思うんですよね。

正月に、NEXT GENERATION GOVERNMENT(若林恵)という本を読んでいて今の世の中はインクルーシブになっていくと。インクルーシブっていうのは障害を持った方にも対応をしていくだとか性的マイノリティ、高齢者、外国人、子どもにも対応しないというのが広がっていくと。けど行政が払えるコストはどんどん減っていく。そういう時に住まい手、住民やここと接点を持つ工務店みたいなところに何かやってもらう必要が出てくる。行政は何をやるかというと情報のデータベースを作るのとその接点になるところが使う道具を提供するというのがその本の趣旨でした。

あげられた例の捉え方が間違っているかもしれませんが、中国の小さい病院がどこに何があるかが一覧になると、お金をかけて総合病院なんか作らないでも、患者はそれぞれの小さい病院みんなで診ることで総合病院みたいに機能する。

デンマークでも貧しい地区の若者がいて、ITスキルが低くて働いていないお金持ちの老人がいる。ITスキルがあれば老人ももう少し働けるかもしれないですという時に若者に教材と場所だけ貸して老人向けのIT教室みたいなことをやると行政はコストを抑えられるし、若者も少しやる気を出して働くし老人もスキルが上がってもっと働くようになって税収が増えるかもというような。

工務店の強みって住民と接点を持っていることじゃないですか。それを生かしてその公的な役割を認めるのであれば、道具と場所だけを工務店に渡すみたいなの面白そうだと思います。

そういう時に工務店1社だけだと行政も頼めないので、工務店にグループつくってくださいといった流れになる気がします。

東日本大震災の頃って工務店ってあまり意味ないよねという話もあったんですよ。木材、工務店、設計事務所のフローに沿った垂直連携に対して、同じ業種でつくる水平連携というんですけど、あんまり水平連携しても意味ないって言われたんですけど、福島で仮設住宅立てるとか、どこから何の材料調達か情報集めるとか、大工融通するとか、ってなると水平連携が必要になる。でも、そのノウハウって誰も持っていなかった。それをITの力を借りればうまくできるし、多少公共的なところが背中を押したりツール渡したり平常時枯らしておくってのがいいんじゃないかと思いますね。

<工務店のリフォームを再考する>

令和2年度のビルダーTFではどのようなことをしていきたいですか?

リフォームをテーマにやろうかと考えています。

元々工務店さんとしては、リフォームは営業的な位置付けも大きかったと思います。新築を取るためにリフォームを定期的にやっておいてリフォーム自体で儲けなくても新築の時はよろしくねと。でもリフォームを本当は儲るようにやらないといけないんじゃないかと思っています。

RCのマンションのリノベってだいたい方ができた気がしますけど、在来木造のかっこいいリフォームってまだこれといったプロトタイプがないようにも思います。

リフォームも色々な切り口があって、さっき言った大工が不足している話、社員にしないといけない。でも新築はないからリフォームを受けてなるべく波をなくしましょうとか営業の話とか色々な切り口があるのでそう言うのをまとめつつ、人を呼びつつリフォームの勉強をしたいですね。

--楽しみにしています。

(聞き手・文責 岡廻由貴子)

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