【第三回のびのび新卒研修記】SaaSとは?

Winny
henngeblog
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14 min readMar 14, 2019

皆さんこんにちは 。HENNGE 新卒のWinnyです。

新卒入社してから一年も経たずに、社名が変わってしまいました(HDEからHENNGEに変りました)。

さて社名は変わりましたが、「のびのび新卒研修記」では、引き続きHENNGEのビジネスや各部署の仕事について、新卒研修で学んだことを連載方式で発信していきます。

今回の連載では、普段はIT業界とかかわり合いの少ない学生の皆さんに対して、HENNGEについてお伝えするという目的のもと、第一回はクラウドについて、第二回はクラウドセキュリティとHENNGE Oneについて取り上げました。

第三回の今回は、「HENNGEのビジネスモデル・SaaSとは?」と題して、SaaS(サース)についてご紹介したいと思います!

近年、IT業界を中心に、SaaSについて見聞きすることも多いかと思います。実はHENNGE OneもSaaSです。

次回以降、HENNGEでのお仕事について取り上げる予定ですが、仕事内容はビジネスモデルに影響を受けるものなので、HENNGEのビジネスモデルであるSaaSを理解すると、HENNGEのお仕事についても理解が深まるはずです。

HENNGEの営業は、世間でイメージされるような「とりあえず売ればいい」仕事ではありませんし、学生さんには馴染みの薄いCustomer Successという部門のお仕事も重要だったりします。

IT業界のビジネスモデル

さて、SaaSについて詳しく取り上げる前に、まずはIT業界のビジネスをざっくりと概観してみましょう。

現在のIT業界には、大きく分けて、受託開発・パッケージ販売・SaaSの三つのビジネスに分けることができます。

受託開発は、ユーザーからのオーダーメイドでシステムを作るビジネスです。アパレル業界に例えると、オーダーメイドスーツを作ってくれる仕立屋さんが受託開発に当たります。

パッケージ販売は、多数のユーザー向けに同じ製品を販売するビジネスです。アパレル業界だとユニクロのようなブランドですね。

SaaSは、多数のユーザー向けに開発した製品を、定額課金制(もしくは従量課金・ユーザー課金)でサービスとして利用してもらうビジネスです。

SaaSを無理やりアパレルビジネスに例えると、「月額定額のスーツレンタルサービス」なのですが、イメージがしにくいですね(笑)

もっと身近な例に例えると、Spotifyのような定額音楽サービスがSaaSです。

(自分で引き合いに出しといてアレですが、月額定額のスーツレンタルサービスの説明はこの記事では割愛します、気になった方はググってみてくださいませ)

受託開発やパッケージ販売と比較して、SaaSは、ユーザーからすると「便利」なサービスで、SaaSを提供する企業の立場からすると、SaaSは「長期的」なビジネスです。

(この「長期的な視点」がHENNGEの仕事に与える影響については次回以降ご紹介します。今回の記事ではSaaSの特徴を噛み砕いてご説明します。)

SaaSをざっくりとまとめると、ユーザーにとっては「便利」なサービスであり、SaaSを提供する企業にとっては「長期的」なビジネスモデルです。理由は、以下の三つです。

  1. 特定のユーザーの為のオーダーメイドではなく、多くのユーザー向けの製品を販売
  2. ソフトウェアを利用する為の準備が簡素な、クラウドサービス
  3. ライセンスの買い切り型ではなく、より手軽なサブスクリプションの料金体系

この説明だけで、なんとなくSaaSがイメージできた方は、もうこの記事を読む必要はありません。そっと、ブラウザを閉じてください(笑)

上記の説明にピンとこない方は安心してください。この記事ではSaaSを、受託開発・パッケージ販売と比較しながら、SaaSの特徴について詳しく説明していきます。

SaaSの特徴①特定のユーザーの為のオーダーメイドではなく、多くのユーザー向けの製品を販売

まず第一に、SaaSは多くの人に同じ製品を販売するビジネスです(パッケージ販売も同様)。

対照的なのが、特定の誰か一人(一企業)のユーザーに合わせてシステムを開発する受託開発のビジネスです。

受託開発は、オーダーメイドのスーツ提供する仕立屋さん、パッケージ販売はユニクロのような既製品を大量に販売しているお店に例えることができました。

先ほどは、SaaSを無理やり「月額定額のスーツレンタルサービス」に例えてしまいましたが、レンタルスーツが既製品であるのと同様に、SaaSも多くのユーザー向けの既製品であることがポイントです。

さて、受託開発はオーダーメイドなので、一人のユーザーの要望にぴったりとフィットする代わりに、別のユーザーには別のシステムを一から作り直さなければなりません。出来上がるシステムの値段も高くなります。

対して、SaaSとパッケージ販売は、平均的なユーザーの要件を満たせるような一つの製品を多くのユーザーに販売します。当然、SaaS製品とパッケージ製品は受託開発と比べて、個別のユーザーの要望に寄り添えない部分もあるものの、値段が安く済むので、ユーザーからすると「手が届く」商品だと言えるでしょう。

SaaSを提供する企業の目線に立って考えてみると、SaaSとパッケージ販売は、受託開発と比べてビジネスを拡大やすい特徴があります。

オーダーメイドの受託開発のビジネスでは、収益を二倍にしたければ、別のユーザーのシステムをまた一から作らないといけません*1。ただし、製品販売ならば、今ある製品の雛形でソフトウェアを複製すれば良いので、もう一つの商品を販売するのにかかる追加費用が安く済みます。

ということで、一つ目のポイントをまとめると、SaaSは多くのユーザー向けに一つの製品を販売するモデルであり、ユーザーからすると、受託開発と比べて手が届きやすく、SaaSを提供する企業からすると、ビジネスを拡大しやすいメリットがあります。

SaaSの特徴②ソフトウェアを利用する為の準備が簡素な、クラウドサービス

一つ目のポイントでは、受託開発とSaaS・パッケージ販売をユーザーのターゲット数で比較しました。

二つ目のポイントは、ソフトウェアを利用するまでに必要な準備の違いです。

受託開発はオーダーメイドで0から開発するので、大変手間がかかります。

パッケージ販売は、ユーザーがソフトウェアを使い始めるまでに、ソフトウェアのインストールを含めた諸々のセットアップの手間がかかります。

それらに対して、SaaSはクラウドサービスなので、利用までの準備がより簡単であるという特徴があります。

このシリーズの初回の記事で取り上げたように、クラウドとは、クラウド事業者が管理・運用するサーバー上のインフラやソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして利用する仕組みでした。

初回を読んでいない方のために、クラウドとオンプレミス(クラウドの対義語、ざっくり言うとパッケージ版と同じ意味だと思っていただいて構いません)の違いをわかりやすくプリンターに例えて説明すると、

自分でプリンターを購入し、自分の部屋に設置するのがパッケージ販売です。 初期設定やインクの補充は自分で行う必要があります。

クラウドは、コンビニのプリンターを使って印刷するプリンティングサービスのようなものです。既にセットアップされたコンビニのプリンターを必要な時だけ利用すれば良いので、初期設定やインクの補充は必要ありません。

クラウドサービスは、提供されるサービスのレイヤーによって、IaaS/PaaS/SaaSの3つに分類することができます(インフラ/プラットフォーム/ソフトウェアの三つのレイヤーがあります)*2。

SaaSは、ソフトウェアを提供するクラウドサービスです。
SaaSが”Software as a Service”の略であることも納得できますね。

ユーザーの立場からすると、ソフトウェアをより簡単に利用出来るクラウドサービスのSaaSは、パッケージ版のソフトウェアと比べて、より便利であると言えるでしょう。

SaaSが便利である理由をあえてもう一点付け加えると、ソフトウェアがアップデートされても、SaaSはソフトウェアの再インストールが不要なので、製品のアップデートを意識せずに利用出来るのもSaaSの特徴です(パッケージ版では再インストールが必要です)。

一方でSaaSを提供する企業の立場からすると、パッケージ版と比べて、SaaSは製品を改善しやすいメリットがあります。

パッケージ販売では、ユーザーが自分のシステム環境にソフトウェアをインストールするため、ソフトウェアを販売している企業はユーザーがどのようにソフトウェアを使用しているのかを直接把握できません。

対してSaaSでは、ユーザーはSaaS企業のサーバー上のソフトウェアを利用するため、ユーザーの操作ログから改善ポイントを発見しやすい側面があります。

さらに、SaaSでは、ソフトウェアのアップデートに伴うユーザーの追加作業を気にする必要がなく、SaaS企業はユーザーの作業負担を気にせずに製品をアップデート出来る側面もあり、結果として製品改善のサイクルを回しやすい特徴があります。

先ほどのプリンターで例えると、プリンターを販売している会社(パッケージ販売)は、プリンターを購入したユーザーがプリンターを使用する様子を直接把握できません。仮にプリンターを改善して、新しいプリンターを発売しても、ユーザーはプリンターを買い替える必要があります。

しかし、コンビニに設置されたプリンターをユーザーが利用する場合(SaaS)、プリンターの管理会社は、ユーザーがどのようにコピー機を操作したかを把握できますし、プリンターを買い替えても、ユーザーには手間がかかりません。

ということで、二つ目のポイントは、SaaSはクラウドサービスなので、ユーザーにとっては利用がより簡単で、SaaS企業にとっては製品の改善がしやすいことです。

もちろん、製品を改善し、より良いサービスを提供すれば、長く使ってくれるユーザーを増やすことができます。

SaaSの特徴③ライセンスの買い切り型ではなく、より手軽なサブスクリプションの課金型

SaaSが受託開発・パッケージ開発と異なる三つ目の特徴は料金の支払い方法です。

受託開発はプロジェクトの進捗に応じた分割払い、パッケージ販売はライセンスの一括買い上げ、SaaSはサブスクリプション型の料金体系(後述)が一般的に採択され、SaaSはユーザーからすると経済的に最も手軽であると言えます。

受託開発では、システム開発費用が高額なうえ(何百万円〜何億円の規模)、開発着手から完成までに長い期間を要します。そのため、受託開発ではプロジェクトの進捗に応じて複数回に分けて料金を支払うことが一般的です。

パッケージでは販売は、受託開発と比べて料金が安いので(通常は何千円〜何十万円規模)、ユーザーはソフトウェアのライセンス(使用許可)を一括で買い上げることが一般的です。このような料金体系を買い切り型と言います。

それらに対して、SaaSは一般的にサブスクリプションの料金体系で提供されます。

サブスクリプションでは、ユーザーは決められた期間(一ヶ月、もしくは一年)ごとに料金を支払うことで、その一定期間サービスを利用できる権利を得ます。

サブスクリプションの中にも、課金の方法は複数あります(サービスの金額が一定の定額制や、サービスを利用した分に応じて課金される従量課金制、ユーザーごとに課金されるユーザー課金制など)。

いずれの課金方法であれ、サブスクリプションにおいてユーザーがサービスを利用できるのは、お金を払っている期間だけです。もちろんサービスが不要になれば、ユーザーはサービスをいつでも解約できます。

買い切り型とサブスクリプションの料金体系の違いを音楽ビジネスで例えると、買い切り型のパッケージ版ソフトウェアは、CDアルバムを3000円で買うのに似ています。

CDを3000円で購入したユーザーは、一年でも10年でも、気の済むまでCDを聴き続けることができます。追加の料金は発生しません。

対して、サブスクリプションは、Spotifyなどの月額課金制の音楽配信サービスの料金体系です。毎月1000円ほどの料金を支払うことで、ユーザーはその月からサービスを利用でき、サービスを利用し続ける限り、解約するまで毎月料金を支払います。

ユーザーからすると、サブスクリプション型のSaaSは、買い切り型のパッケージ版よりも少額の料金でサービスを手軽に利用し始めることができる上に、いつでも解約できるため、新しいサービスを試しやすい特徴があります。

また、サービスを提供する企業からすると、サブスクリプションでは、ユーザーに長くサービスを利用し続けてもらうことで、収益が安定して伸びやすい特徴があります。

というのも、サブスクリプションの場合は、既存のユーザーからの収益が、解約されるまで定期的に見込めるため、毎月新規ユーザーを獲得した分だけ、収益が積み上がっていきます。

買い切り型の場合は、ユーザーが料金を支払ってくれるのは一度だけなので、毎月収益を上げるためには、毎月新規ユーザーを獲得する必要があります*3。

例えば、サブスクリプションでは1月に1000円支払ってくれたユーザーからは、2月も1000円分の収益が見込めます。
2月にもう新規のユーザーをもう一人見つけられれば、2月の収益は2000円になります。
3月に新規ユーザーが獲得できなくても、既存のユーザーから2000円の収益が見込める為、3月の新規ユーザーからの収益分だけ収益が伸びます。

対して、買い切り型の場合には、1月に2000円の収益があったとしても、2月に新規ユーザーを見つけられなければ、2月の収益は0円になります。
仮に土壇場で2月に1000円の収益を上げたとしても、3月もまた新規ユーザーを獲得して、収益を0から作らなければなりません。

このように、収益の見込みが立てにくい買い切り型と比べて、サブスクリプションの料金体系では、ユーザーに長くサービスを使い続けてもらうことで、長期的には収益が伸びやすい特徴があります*4。

というわけで、SaaSの三つ目の特徴をまとめると、SaaSはサブスクリプションの料金体系なので、ユーザーは手軽に新しいサービスを試すことができ、SaaS企業からするとSaaSは長期的に収益が伸びやすい特徴があります。

まとめ

さて、今回はSaaSについてご紹介しました。

改めて、受託開発・パッケージ販売・SaaSの三つを比べてみましょう。

SaaSはこれらの特徴から、ユーザーは手軽にソフトウェアが使える「便利」なモデル、企業目線だと、収益が安定的に伸びやすい「長期的」なビジネスです。

いかがでしたでしょうか?この記事によって、みなさんのSaaSへの理解が深まれば幸いです。

次回は、SaaSの「長期的」なビジネスモデルが、HENNGEでの仕事にどのように影響を与えているかを取り上げたいと思います。

それでは、また!

(この記事は、諸々の概念を簡略化して説明しています。詳しくは、是非書籍などをあたってみてください。)

*1 わかりやすくするため、出来上がったシステムの保守や改修は考えずに、あえて収益源を新規案件に絞って単純に考えています。

*2 ソフトウェアより下のレイヤーで、インフラやプラットフォームを提供するクラウドサービスをIaaSやPaaSと言います。Twitter社に対して、Twitterを動かすサーバーや開発プラットフォームを提供しているのが、IaaSとPaasです。

*3 ここでも話を単純化するために、既存ユーザーからのクロスセルやアップセルは考えずに、あえて収益源を新規ユーザーに絞って単純に考えています。

*4 買い切り型は、通常サブスクリプション型よりも単価が高く、売上が立てばすぐにまとまった額の収益が見込めるため、長期的な視点のサブスクリプションよりも短期的な資金繰りの観点でメリットがあります。

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