Day 7 — 芸術への興味の一歩

Fuyuko
henngeblog
Published in
10 min readDec 7, 2021

私は美術館が好きです。

芸術に対して、アートに対して、難しいことは何もわかりません。
知識もありません。

ただ、近くの美術館で気になる展示が始まるとふらっと出かける。そんな程度です。

芸術とはなんとも難しいものな気がします。

簡単には「好き」とは言わせてくれない。
そんな雰囲気が美術館には漂っています。

でも私のような「好き」の程度でも「芸術が好きだ」と胸を張って言っていいんだと教えてくれたアーティストさんがいます。

「びじゅチューン!」という子供向け番組でも活躍されている井上涼さんという方です。

大の大人が大きな声で言えたことではありませんが、私はこの番組が大好きです。
とっつきにくい「美術」というものを身近に感じさせることをコンセプトに作られた番組で、古今東西の美術作品を、井上氏が作った歌とアニメーションで楽しく紹介してくれます。

今日はその中からいくつかの作品を紹介したいと思います。

オフィーリア(Ophelia)

ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」

テート美術館

Ophelia by John Everett Millais

オフィーリアとは、シェイクスピアの4代悲劇の一つ、『ハムレット』に登場する、ヒロインです。

『ハムレット』は、急死したハムレットの父の死因が、毒殺だと知ったハムレットの復讐を描いた物語です。

そのハムレットの恋人がこの絵画に描かれたオフィーリアです。オフィーリアは、復習に燃える恋人に嘆き悲しみ自ら川に身を投じ、溺死に及びます。

この作品で描かれている花は12種類あるらしく、各草花の花言葉は「愛の悲しみ」や「見捨てられた愛」など、なんとも悲しい言葉が並びます。

悲しみの中にいるオフィーリアの最期を描いた作品です。

オフィーリア、まだまだ

YouTube:オフィーリア、まだまだ

ぐったりと水に浮かぶオフィーリアが、もし背泳ぎの選手だったら・・・!と井上氏が想像したことをもとに作られた映像作品です。

恋人から「尼寺にでもいけ!」と罵倒され、悲しみから川に身を投げたオフィーリア。
しかし昔、水泳大会でトロフィーをもらったことを思い出し、絶望から一転「まだまだ溺れちゃいられない」と華麗に泳ぎ始めます。
川をぐんぐんと背泳ぎで下り、とうとう自己記録100ノットを叩き出します。

明日に絶望した社会人に向けられた応援歌です。

風神雷神図屏風(Fujin Raijin-zu byobu)

俵屋宗達

建仁寺

Wind God and Thunder God by Kōrin

江戸時代に描かれた俵屋宗達の作品が一番有名ですが、その他、多くの画家によって作られた模作や模写が多数存在する屏風図です。

風袋から風を吹き出し風雨をもたらす風神
太鼓を叩いて雷鳴と稲妻をおこす雷神

屏風には金箔が張り詰められ、天で暴れ散らす風神、雷神の姿がなんとも魅力的な作品です。

風神雷神図屏風デート

YouTube:風神雷神図屏風デート

屏風から出てきそうな勢いの風神と雷神。これは「デート」に違いない!という妄想をもとに作られた映像作品です。

表向きは同じ会社に勤める仕事仲間の風神と雷神。
でも陰では付き合っていて、仕事終わりに無限空間の図屏風の中でドライブデートの待ち合わせ・・・

「あなたといればどこだってキンキラ!」とラブラブな二人の鬼神のデートの様子が描かれた作品です。

井上氏はセクシャルマイノリティをカミングアウトしており、映像を通してLGBTについても考えさせられる作品が多く、そこも魅力の一つです。

貴婦人と一角獣(La Dame à la licorne)

作者不明

フランス国立クリュニー中世美術館

The Lady and the Unicorn by Meister der Apokalypsenrose der Sainte Chapelle

詳しい制作年や工房などは不明で、フランスのお城に飾られていた謎に包まれた6枚組の連作タペストリーです。

このタペストリーのテーマは六つの感覚を示したものと解釈されています。「味覚」、「聴覚」、「視覚」、「嗅覚」、「触覚」、そして「我が唯一つの望み」(A mon seul désir)。

「我が唯一つの望み」の解釈は現在でも謎に包まれており一般には、第六感と言われる「理解力」や「愛」、「処女性」などが有力とされていますが、いずれも十分な証拠がなく、制作者の本当の意図は今も謎に包まれています。

貴婦人でごめユニコーン

YouTube:貴婦人でごめユニコーン

貴婦人と動物たちの仲がとっても良さそう!貴婦人は動物たちに甘やかされているのに違いない・・・との想像から作られた映像作品です。

オフィスで働く貴婦人。いつも貴婦人は仕事の失敗ばかり。髭を生やした上司から「甘やかしすぎなんじゃないの?」と言われ、貴婦人の代わりにユニコーンが謝ります。

「ごめユニコーン」。ダジャレです。

我が唯一の望みはね、ただみんなで静かに暮らすこと」と書類のミスをした貴婦人が言うと「聞きました?泣かせるでしょう?」とユニコーンが上司に同情を誘います。

我が唯一の望みというワードが歌詞に組み込まれているように作品に対するちょっとした知識も映像作品から習得できます。

三代目大谷鬼治の奴江戸兵衛

東洲斎 写楽

東京国立博物館

Kabuki Actor Ōtani Oniji III as Yakko Edobei by Tōshūsai Sharaku

この作品自体を「写楽」だと思っていましたが、どうやらこのモデルの男性は「三代目大谷鬼治」という歌舞伎役者だそうです。

東洲斎 写楽は江戸時代の浮世絵師で 生没年不詳の謎につつまれた絵師です。
日本ではとても有名なこちらの絵画ですが、写楽自体は江戸時代後期に10ヵ月間程度しか活躍しておらず、その短い10ヶ月間のうちに「役者絵」「相撲絵」などの版画140余図という多くを発表しました。

この版画というものは今でいうブロマイドのようなものだったそうです。

当時はおおいに人気を得たみたいですが、その後は浮世絵界との交渉をまったく絶ってしまった謎の絵師です。

写楽式洗顔

YouTube:写楽式洗顔

これから何かをしようとしているような、この懐手に注目した、井上氏。もしかすると、会社から帰宅していち早く化粧を落としたい時の緊迫感なのではないか?バッチリフルメイクをオフにする至福の時、その前後を描いた全国のOLが共感する映像作品です。

私もお客様との打ち合わせの時はいつもより気合を入れてメイクするためこの歌舞伎役者の気持ちがよく、わかります。

モナ・リザ

レオナルド・ダ・ヴィンチ

ルーヴル美術館

Mona Lisa by Leonardo da Vinci

説明はいりませんね・・

「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも書かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品が作られた美術作品」といわれているモナ・リザ。

当時では考えられない描写の繊細さ。この美女は誰なのか。

イタリア芸術家の著書によれば「レオナルドは、フランチェスコ・デル・ジョコンドから妻モナ・リザの肖像画制作の依頼を受けた」という記述があり、このモデルはリザ・デル・ジョコンドであると言われていますが定かではありません。

「謎」が多いこの作品は、現在に至るまで人々を魅了し続けています。

お局のモナリザさん

YouTube:お局のモナリザさん

笑っていてもどこか怖い。黒ずくめに眉毛なし。何を考えているのか分からないけれど、鋭い目は人の心を見透かしている・・・これは、会社によくいるお局さんでは?と想像したことから作られた映像作品。

The term “お局さん(otsubone-san)” is a Japanese expression that refers to an older, experienced woman who has worked in the workplace for a long time. It can also have negative connotations, such as “bullying the younger generation” or “nagging”.

(株)ジョコンダ社のお局さんであるモナリザは、様々な女性社員に「ネイルが派手ね」「スカートの丈だけがプライドね」と嫌味な言い方をします。社長にさえ「民を蹴散らす王のよう」と切り捨てることができる彼女はジョコンダ社の事実上のトップです。

でも徹夜明けの部下にそっとアンパンをあげたり、傘を忘れた部下には傘を貸して自分はずぶ濡れで帰ったり、優しい一面も時折見せてくれる素敵な「お局さん」が作品中には描かれています。

今回のブログではオリジナルの作品が有名なものばかり取り上げましたが、井上氏の作品は100点以上あり、資料集にも載っていないようなニッチな作品を題材に作られた映像もたくさんあります。(YouTubeで全て見ることができます。)

私自身、旅行中にパリのルーヴル美術館で本物の「モナリザ」をみた時、「確かに、お局さんみたいな微笑みだな」と心の中で笑ってしまいました。

他にも、上野美術館で 岸田劉生の「麗子微笑像」をみた時は、井上氏の作品「夢パフューマー麗子」を思い出し、昨日見た夢に再び吸い込まれていきそうな感覚になりました。

「太陽の塔」の中に初めて入った時は、井上氏の作品「保健室と太陽の塔」を思い出し、悩みを吹き飛ばしてくれる保健室の先生に包まれている気分になりました。

難波駅の地下でジョルジュスーラ作の「グランドジャット島の日曜日の午後」をみた時は、井上氏の作品「月曜日モンスター」を思い出し、「こんなに優雅なのにみんな明日の仕事に怯えてるのかしら。」と19世紀フランスの人々に共感しました。

芸術に詳しくない私が「芸術が好きだ」と言えば、誰かに怒られてしまうと思います。

もしくはバカにされるか。

でも世の中に溢れている様々な芸術的作品に対して親近感を抱いていることは間違いありません。

「あの絵画が上野美術館に来るのか。次の日曜行ってみよう。」

そんな、芸術がほんのちょっとだけ身近にあるなんでもない休日が私は好きです。

This article is part of the 2021 HENNGE Advent Calendar. An Advent calendar is a special calendar used for counting down the days till Christmas. 2021 HENNGE Advent Calendar presents one article by one HENNGE member per day for 25 days until Christmas, 2021

--

--