Vol. 3 桜新町、池尻大橋、学芸大学

現地レポートVol.3

世田谷区・目黒区の東急田園都市線、東横線沿い

11 min readNov 26, 2020

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今回の現地調査したお店は、ただの「オーガニックスーパー」ではありません。マクロビオティックの考え方が元となっている自然食品店、現代社会に感じる違和感を食を通して問い直そうとするお店…そんな個性的な3店舗を巡ってきました。

過去2回の現地調査とは一味違うスーパーに二人してくぎ付けになってしまいました。丸一日かけてじっくり見てきましたので、ぜひ、最後まで目を通していただけたら嬉しいです。

それでは、さっそく見てみましょう!

調査日:2020年11月15日

店舗数:3店舗

目次

  1. ムスビガーデン
  2. オーサワジャパン
  3. Food & Company
  4. 現地調査振り返り
  5. マクロビオティックとオーガニック
  6. 次回予告

1. ムスビガーデン

ムスビガーデン外観

基本情報

アクセス

運営会社
ムソー株式会社

沿革

1957年
マクロビオティックの創始者・桜沢如一の門下生、岡田周三により正食協会(現在関連会社である、株式会社日本マクロビオティックが運営)の活動が始まる
1969年
大阪市にてムソー食品株式会社(現・ムソー株式会社)が岡田周三によって設立される
1993年
有機農産物認証機関JONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)設立に参画
2015年
東京直営店(世田谷区・桜新町)を開業

コンセプトと調達・取扱い基準

コンセプト

  • 生産者とお客様をむすぶ
  • 大地と食卓をむすぶ
  • 安心・安全をむすぶ

ムスビガーデン 5つの基本

  1. 安全性の確保を最優先
  2. 素材を活かしたおいしさを追求
  3. 発酵食品・伝統製法の推奨
  4. 真の健康を確立する生活提案
  5. オリジナリティーを重視

ムスビガーデン 7つのお約束

  1. 安全性の確保を最優先
    顔の見える生産地からの原材料確保、すなわち誰がどこでどのようにして作ったかのトレーサビリティー確保による安全性の追求に努めます。
  2. 国内産農産物優先
    日本の食料自給率アップ、日本の大地の秩序回復、日本の伝統食復権のため、国内産農作物原料を優先して使用します。その中でも、産地特定・トレースできて安全の担保ができる国内産農産物を最優先して使用します。
  3. 食品添加物使用禁止
    基本的に指定添加物および既存添加物(天然添加物)の使用は認めません。ただし品質都合上、食品添加物を使用する場合、添加の必要性、安全性を確認検討し、最小限の使用を容認します。
  4. 化学調味料(うまみ調味料)使用禁止
    化学調味料(うまみ調味料)は使用しません。
  5. 遺伝子組み換え原料使用禁止
    安全性についての疑問、他品種との交雑による環境汚染問題、作物の種を一部企業が独占する危惧を考慮し、「遺伝子組み換えされた農産物」および「遺伝子組み換え不分別の農産物」は使用しません。
  6. 放射性物質を確認
    自主基準に沿って、放射性核種(セシウム-134・セシウム-137)を確認します。 ※放射性物質測定基準は随時見直しを行い環境状況に対応してまいります。
  7. 環境負荷の少ない容器包材の使用
    製造から消費、廃棄に至るまで人体にとって安全であり、環境への負荷の少ない容器包材を選択します。

(引用:ムスビガーデンHP

現地調査レポート

  • マクロビオティックの月刊誌「ムスビ」を発行している
  • 生鮮食品に限らず、加工品も国内産が多かった。輸入食材も置いてあるが、これまで見てきたオーガニックスーパーと比べて少ない
  • 野菜は西日本のものが取り扱われている
  • 売り場面積に対し、魚や肉の取扱量が多い
(左)マクロビオティック関連の本が陳列される。一番右の雑誌はマクロビオティックの月刊誌「ムスビ」、(右)加工品のポップ、製法などが軽く表記
(左)オーガニックスーパーで初めて見た日本産小麦で作られたロングパスタ、(右)野菜のポップは農薬・化学肥料の情報、有機JAS認定チェック項目あり、シンプルな表示
(左)鮮魚コーナーが今までのオーガニックスーパーの中で一番広かった、(右)生肉のコーナーも充実している

2. オーサワジャパン

外観

基本情報

アクセス

運営会社
オーサワジャパン株式会社(オーサワジャパングループの一企業)
マクロビオティック食品の商社で、マクロビオティックの創始者・桜沢如一の海外での愛称「ジョージ・オーサワ」を受け継ぐ。

沿革

2014年
直営店三店舗目として、池尻大橋にて開店

2018年
リマ池尻大橋店は、オーサワジャパン株式会社へ業務移管。オーサワジャパン池尻大橋店としてリニューアルオープン。
(参考:http://www.lima.co.jp/company.html)

調達・取扱い基準

自然食品の品質基準

  • 遺伝子組み換え食品不使用
  • 有機栽培優先
  • 食品添加物不使用

マクロビオティックの品質基準

  • 国内産優先
  • 伝統製法優先
  • 精製糖不使用
  • 動物性原料不使用

現地調査レポート

  • 生鮮食品より、自社製品の加工品の取扱いが多い
    特にもち麦や玄米といった雑穀の取扱量が非常に多い
  • マクロビオティックに関する書籍が多く販売されている
  • フリーペーパー「LM」が店頭に置いてある
(左)自社ブランドの種類豊富な味噌、(右)自社ブランドの丸麦、この他にもち麦や玄米等雑穀類は充実している
(左)加工品のポップ。グルテンフリー、シュガーフリー等の表示がされておりこれらを気にしている人にはわかりやすい、(右)フリーペーパー「LM」

3.FOOD & COMPANY

FOOD & COMPANY 外観

基本情報

アクセス

運営会社
FOOD & COMPANY
「リテール事業」(今回調査した学芸大学店他二店舗)と商業施設における食品販売売り場のコンセプトメイキング等を行う「パートナーシップ・コンサルティング事業」が主な事業。

沿革

2014年3月に学芸大学にオープン

コンセプト

会社のビジョン・ミッション「優しい経済の仕組みを日常に」

自分たちが実現したい未来の姿にしていくための方法の内の一つが食と小売りを組み合わせたグローサリーストアだそう。

リテール事業のコンセプト

  • 唯一無二の商品のセレクト
  • お客様との距離の近さ
  • 心地よさを重視した空間設計
  • 独自の着眼点と柔軟な視点
  • 幅広い領域でのリソース

(参考:RETAIL | OUR BUSINESS

調達・取扱い基準

「F.L.O.S.S(フロス)」

商品選びのガイドライン(以下に一部を抜粋)

FRESH
大切な食材を余すところなくいただくための色んなアイディアを添えて

LOCAL
物理的距離の近さだけではなく、同じ感度や価値観、みたい未来の方向性を共有できる作り手との幅広いパートナーシップを大事にしている。

ORGANIC
自然の摂理を大事にしながら環境や他者との調和を重んじる姿勢が私たちの考えるオーガニックの本質。認証制度にとらわえることなく、作り手との信頼関係を第一にオーガニックな姿勢をもつ食材を優先的に取り揃えている。

SEASONABLE
あらゆる食材に一年中アクセスできる今だからこそ、「旬のもの」が生み出す感動や喜びという価値に着目し、食材を通じて感じられる日本の四季の美しい循環をお届け。

SUSTAINABLE
自然の移ろいや適地適作を大事にした栽培方法であること。継続的に購入できる現実的な価格帯で、そこに関わるステイクホルダーがずっと笑顔で居られること。

現地調査レポート

  • 野菜の種類が多い
  • 東日本で生産された野菜、例えば今まで巡ったスーパーにはなかった福島県産の野菜もあった
  • もったいないコーナーがあり、鮮度が良いものと棚が分けられていた
    商品選びのガイドラインのFRESHがちゃんと感じられた
  • 肉や魚の取扱は少ない(チーズなど一部の加工品のみ)
  • 生産者の情報より、食材のおすすめの調理方法が表示されている
    旬の食材を食べてもらう工夫が感じられた
(左)数多くの種類の野菜が取り揃えられている、(右)マコモダケのおすすめ調理法が示されたポップ
フードロスを減らすための取組み。フードロスの現状が説明されたポップ。

現地調査振り返り

今回まわった3つのお店は、オーガニック商品を販売すること自体が目的ではなく、販売を通してそれぞれが目指すことを実現しようとしていると感じました。

ムスビガーデンやオーサワジャパンはマクロビオティックを基本的な考えに持ち、健康で長生きすることを目指していて、FOOD & COMPANY は誰にとっても身近な食を通して、やさしい経済の循環の仕組みを作ろうとしている。そんな売り手側の思いがお店にも表れているようでした。

例えば、3店舗の特徴として以下のようなことが挙げられます。

  • 住宅街のすぐ近くにある
  • 売り場面積が広く、ゆったりとしている
  • オーガニックの情報量(なぜオーガニックがいいのか、商品の取扱い基準を説明したポップ等)が少なかったが、そのかわり製法や調理法の提案などが目立った
  • 生産者の情報が強調されているわけではない
  • 認証マークはあまり強調されていなかった

また、これまで調査したスーパーと価格面で比較すると、普段使い出来そうだと感じました。やはり、オーガニック食材が消費者にとって少しでも身近なものになるには、継続して買える値段であるということは重要でしょう。

価格の違いが、流通段階のどこかの部分から来るものなのか、原価率の違いなのかは現時点ではわかりません。価格に関してはどのスーパーにとっても悩ましい問題だと思います。安いことが必ずしも良い事でもありません。これについては、いずれ調べてみたいと思っています。

次回予告

マクロビオティックとオーガニック

マクロビオティック(※以下マクロビ)とオーガニックは混同されがちですが、そもそもの目的が異なり、並列して比べられるものではありません。マクロビが長く健康に生きることを目的とした「食事法」であるのに対し、オーガニックは自然と調和しながらどのように農産物育てるかという、「農法」です。

しかし、マクロビの基本は玄米や旬の野菜を丸ごと食べること。これは身体と土(環境)は、切っても切り離せないという「身土不二」や「一物全体」の考え方を反映していて、これらの考え方は、オーガニックの土づくりや環境への配慮などを通して自然と調和した農業と多く共通するところがあります。マクロビは「食」から、オーガニックは「農」からと、アプローチは異なるものの、自然と人とのつながりを大きくとらえているという意味では親和性のある考え方でしょう。

次回予告

ということで、マクロビとオーガニックの違いについて深堀するべく、マクロビの歴史を辿ってみることにします。実はマクロビは日本で生まれた思想であること、それが近年欧米から逆輸入されたこと、またこれらの歴史に深くかかわる三人の人物がいるということに焦点を当て、マクロビにとどまらず、オーガニックとの関係も紐解いていければと思っています。お楽しみに。

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