親族との付き合い方・ご近所さんとの付き合い方
【第4回:ホームスクール保護者会 by HSJ】
ホームスクールジャパン(以下HSJ)ではホームスクール家庭が集まり、毎回テーマを決めて、カジュアルにリアルトークをしていく「ホームスクール保護者会」を連載しています。
今回はすでにホームスクーリングをしている家庭の日常の実体験をベースに話を進めてみました。
佐々木
さて、今回は「ご近所さんや親族との付き合い方」について話していきたいと思います。
日本ではホームスクールはまだまだマイノリティなだけに周りからの目が気になりますよね。
皆さんはご近所さんとのコミュニケーションで何か気を付けていることなどはありますか?
小田
ご近所さんについては、ホームスクールに切り替えた際、「平日の昼間でも家の前で遊ぶので何かご迷惑になることがあれば教えてください」とお伝えしました。
佐々木
鉄則ですね。
うちは、周りのご家庭に同年代の子どもたちが多く、はじめホームスクールをすることを近所に伝えたときは「え!」って感じでした。
その場では「うちはホームスクールにしたんですよ~。はは~。」ってあえて軽いノリで学校とのやり取りも併せて伝えました。
日中も普通に家の前で遊んでたりするので、不要な不信感を抱かれないように、「いたって普通」という雰囲気を出すのって大事だなって思っています。
小田
そう、「不信感を抱かれないように」ですよね!私もそれを一番気にかけています。
あとは、最低限のマナー。子どもたちには自分から挨拶をすることと身なりをある程度整えるよう伝えています。
秋山
「いたって普通」「不信感を抱かれないように」。そういう風に気を使ってるんですね。参考になります。
我が家はご近所さんに特に説明はしてないです。都会ならそうはいかないのでしょうが、うちは周りが畑で隣接する家屋がないので、わざわざ訪ねないと、近所の人に会うようなことはないんです。
佐々木
悪いことをしているわけではないのに、ちょっと気を使ったり、周りの目を気にしたり。
なるべく堂々としようとしているつもりでもマイノリティの謎の劣等感みたいなのはついて回ります。だからやっぱり意識的に明るく接する、というのは大切にしています。
小沼
普通に過ごした方が不信感を抱かれない、これは本当に勉強になります。
うちは以前、突然市から調査員が来たことがあります。驚くとともにショックをうけました。
一応マンションの同じフロアの人には話してありましたが、どなたかが市へ通報されたみたいです。
そのマンションからは昨年春に引っ越し、今はマンションではなく戸建て。引っ越しの際にご近所さんにはご挨拶で簡単に状況を伝えてあります。
小田
私も、以前ホームスクールをしている方のブログで、教育委員会や児童相談所が突然訪問して来ることがあると読んだことがあります。少し警戒しています。
小沼
児童相談所の方の訪問の後、学校に相談しました。
マンションの他のフロアの人にも事情を説明した方がよいか?と相談したところ、スクールカウンセラーさんから、「分かってもらえない人が大半だから、逆に話さない方が良い」と言われ結局そのままでした。その後は特にそういった事はありませんでしたね。
ただ、私も子どももショックを受けたので、そういう経験はないにこした事はないので、ご近所さんとの付き合い方は今後も課題です。
佐々木
ここで出てきましたが、日本でホームスクールを進めるうえで最も怖いのは「通報」ですね。通報されて話がこじれると児童相談所なんてケースも出てきます。なので、私もここは一番気を付けていて、①学校との円満な付き合い方、②ご近所さんとの円満な関係、③その他日中(学校の授業時間)は子どもだけで外出させない、は気を付けています。
児童相談所などになってくると、来られてしまった時点で半分アウトと考えるぐらいがちょうどいい。そもそも、日ごろからそういった事態になりえない防衛網を敷いておくことが大切ですね。
こういう話をすると、そういった機関に敵対しようとするホームスクール家庭もありますが、そうじゃない。
彼らはそういう機関であり、まだ日本にはホームスクールの土壌が育ち切っていないので戦えば確実に負けます。
だから、繰り返しになりますが、そもそもそういった勘違いを引き起こさせないような行動が大事です。ほんと、誰も得しませんから…(笑)
これはもっともっと大勢のホームスクーラーに伝えていきたいです。
ホームスクールというと誤解をまだまだ招きやすいところがあります。「学校に行かせていないんじゃないか。」「虐待じゃないか。」などの思い込みも事実として根強いんですよね。
そこで躍起になって、ホームスクーラー側が「こいつらとはかかわらねぇ!」「徹底抗戦じゃ!」という態度に出てしまうと火に油。見えなくなればますます周囲の不安や疑念は強くなってしまいます。
適度な距離感は保ちつつ、よく知ってもらい、理解を求める。
これにつきますね。
第一歩は小田さんのおっしゃっていた、身なりを整えて、きちんと挨拶。そういう当たり前のことを当たり前にやるのがホームスクールをやりやすい環境を整えるうえで大事だと思いますね。
あとは小学校の場合、地域の教育に関しての最も有力な声は学区の校長先生。なので、まずはここと円満にきちんと話し合うことが大切です。
小田
子どもと全く関係のない所で恨まれて、嫌がらせに通報というケースもあるようですね。
隠さなければならないことは何もないのに、なんとなく悪いことをして責められているような気持ちになることがあります。
まるで、運転中後ろにパトカーがいる時のような・・・(笑)
佐々木
そうそう、まさにそんな感じです。でもまぁそこまで行くとホームスクール云々を通り越してますよね。
そういう人に会ってしまったら運が悪い。でも、その場合でも周りの人に助けてもらえるよう、常日頃から第3者機関としてのご近所さんづきあいって大事だと思います。万が一の場合でも「いえ、あそこはしっかりやられていますよ!」って言ってもらえるように。
一例ですが、うちは、ホームパーティーに近所の子どもたちもよんだりしています。
秋山
せっかく地区の校長先生と信頼関係を築いても、年度が変わると異動があったりするので、またいちから説明するという覚悟も必要ですねヽ(´o`;)
佐々木
学校に限らずですけど、結局はその人の理解があるかどうかなんですよね。理解されなくてもこればっかりは仕方がない。
校長の異動は僕は未経験ですが絶対きついと思います。せっかく信頼関係を築けたのに!という気持ちになっちゃいますよね。
アピールするわけじゃないんですが、だからこそのホームスクール支援協会だと思っています。いざという時に個人対機関(学校)ではなくて機関対機関になれます。
良くも悪くも、日本は前例主義・長いものには巻かれることなど昔ながらの風潮が残っています。
こういった文化は簡単には変わらないので、機関同士で話し合うことで誤解が解けたり、理解を得られたりすると思います。
秋山
機関対機関。なるほど。心強いですね。
地域の子育て関連の勉強会で、児童相談所の職員の方と話す機会がありました。学校と家庭の間に入ることが多いそうです。その方は、子どもの立場にたって、家庭で安心して過ごせてるのなら、学校に無理に行かせるようなことはしたくないと話していました。学校側は、学校に来ないことは問題と捉えてしまうので、そこは学校側の課題だと話していました。 ホームスクールの話ではなかったけど、児童相談所も、地域や人によって様子が違うのかもしれませんね。
佐々木
そういった意味では、先生や児童相談所のスタッフも含めて話し合う機会などが持てると面白いかもしれませんね。そういうのもぜひやっていきましょうよ!学校VSホームスクールのようなディベートもそろそろ飽きてきたので(笑)「どうやったら、子どもにとって+か」「多様性を出して教育を面白くしよう!」みたいな議論を展開していければと思います。
秋山
私は、佐々木さんの記事「ホームスクールをハックする」(でした?)を見て、とてもいい考え方だと思いました。
ハックスクーリングとは、学習者が身の回りの人や物などのリソースを利用して自らの学びをデザインしていくこと。ハッキング、というと日本語では聞こえが悪いが、「受動でなく、どんどん自分に合うようにあれこれ工夫して学ぶ」という能動的な学び方を提唱している。
例えば、ご近所さんに話すことで、学びの機会だったり、なにかしらの場を提供してもらえたり、支えてもらえたりというようなことは皆さんありましたか?
小田
うちは・・・今の所、全くないです。(笑)
でも、可愛がってもらっていて有り難いなと思っています。
秋山
近所の人たちとの関わりも学びですよね。学校の先生だけが「大人」のロールモデルになるのはどうかなと思っています。
佐々木
うちもご近所さんに何かをやってもらった、ということはないのですが、「ホームスクールをしている」ということは尊重してくれていて、息子と会った時も「さいきんどう?」と接してくれます。それだけでありがたいですね。
あとは、学校のことを教えてくれたり。
子どもは、ご近所さんではないですが、学校の図書室の司書さんはとても好きみたいです。すごく理解のある方で、ふらっと遊びに行ってもいろいろと話を聞いてくれたり、お勧めの本を紹介してくれたりします。学校に一人でもそういう人がいるのは助けになります。
秋山
わぁ!羨ましい!!
小田
素敵ですね。
不審に思われないように引きこもるのではなく、あえてどんどん外に出て「こんな生き方をしてますよ」と色々な人に知ってもらえたら嬉しいです。
佐々木
そうなんですよね!だからホームスクールの活動はもっと皆さんに知ってもらう必要があります。それもポジティブな方向で。
学校がどうこうではなく、ホームスクールってクールでしょ!っていう価値の発信を続けていきたいです。
そうしたら、将来うちの子が「お前ホームスクールやってたんだって?すげーなぁ!」って言われるんじゃないかって、夢見ています。
そして話は、「家族」との付き合い方へ
佐々木
親族との付き合いかたについてはどうですか?結構反対されません?(笑)
小田
以前私の記事の方でも書いた内容になりますが、夫と夫親族からは反対されていて、私側の親族は心配しながらも応援してくれています。
秋山
反対ということは、親族には事前に説明されたということですよね。率直にすごいなぁと感じます。そして、パートナーが反対ということは、小田さんの記事を読んでいて感じる以上に、きっと大変なんだろうなと思います。
小田
そうですね・・・事前に説明というか、家も近く娘が学校をお休みしたり行きたくないと言っているのを知っていたので、ホームスクールに至るまでの成り行きを見ていたという感じです。
秋山
我が家は、夫の親族からは冷ややかな目で見られてるようです。直接批判されるわけではありませんが。
先日も夫とそのことについて話していたところです。夫は、「周りの考えなんて全く気にしなくていい」と言っています。うちの子どもたちが大人になった時に、みんな納得するはずだって。
小田
心強いですね。私もそんな言葉をかけられたいです。
佐々木
本当にそう。
子どもたちを守るのは親の役目。前にもどこかで書きましたが、子どもに対しては一貫して味方であり続けるというのは当然のことと思います。
そういうと、モンペ予備軍のように聞こえるかもしれません。でもそうではない。
甘やかすとか、過保護になっているとかではなく、単純に最後まで子どもの力を信じて、気持ちに寄り添うこと、味方であり続けることが親の責任だと思います。
ましては、ホームスクールという荒波?を航路として選んでいるわけなので、そこは一緒に乗り越えて新天地へと!という熱い気持ちはあって当然ですね。
小沼
実は息子自身が夫の実家には行きたくないと言う時もあり、私と息子だけ帰省を控えた年もありました。
老齢の両親の事を考えると申し訳ないですが、やはり母親としては子どもの心を一番大切にしたいと思っています。
秋山
子どもの心が最優先ですよね。
我が家は、夫の実家が近いこともあり、子どもたちが直接あれこれ言われてしまいますが、本人たちは聞き流せるようになりました。とはいえ、さすがに嬉しくはないので、必然的に足が遠のきますよね。
近くにいるだけに親族との関係性は本人達に任せています。
ちなみに私は自分の精神を守るために、至近距離にいながら盆も正月も普段も親族とは関わっていません。
小田
私も昨年の盆と正月は行ける状況ではありませんでした。
サラッと聞き流せる大人の対応に憧れることもありますが、子どもが自尊心を失う原因になるようなことがあると、どうしても戦闘態勢になってしまいます。
(読者の方へ)
ホームスクール家庭に限らず、不登校(学校に行っていない)という事実は親族の心配を大いに煽ります。愛情があるだけに、親族は頭ごなしに「なんとか学校へ!」といいがちです。それが見えないところでホームスクール家庭の親だけでなく、子ども本人を傷つけていることがあります。
「何の考えもなしに」学校に行っていないわけではないことを一度受け止め、信頼すべき家族の一員として「理解しよう」という姿勢を持っていただけるとすべてがいい方向に流れていく…。親族とはその位影響力があるものです。
家族へ向けた、今後のホームスクール情報の発信もぜひ行ってみたいと思います。(佐々木)
秋山
なぜ行かなくなってしまったかというと、一昨年の正月に親族と過ごして、その後一月ぐらい精神的に苦しくて体調も崩したことがきっかけです。
「そこまでして行かなきゃいけない理由って何かな?」と考えたら、何もなかったんです。
「盆と正月は親族と過ごさなければいけない」ことと「義務教育は学校に行かなければならない」
同じような思い込みじゃないでしょうか。子どもたちと同じように、私にも自分の心を守る権利と自由があるって気がついたんです。
小沼
すごいですね。秋山さんのお話しを読んで、私も気づかぬうちに自分の心を縛り付けている常識と一つ一つ向き合い、自分なりの答えを見つけられたらもっと楽に生きられるかもしれない、と思いました。
佐々木
「触らぬ神に…」とは言いますがどこか触れていないといけない関係ってムズかしいですね。
また、一律的に「絶対に会うべき」とは全く思いませんが、やはり親族が応援してくれることは大きな原動力になりますし、子どもの自信にもつながります。
何より、仲がいいことに越したことはないのでこういった発信活動や、今後のムーブメントも考えながら家族理解を高めていきたいですね。いやぁ、巻き込みたい人たちが多すぎますね。
「楽しみ!」って考えましょう!(笑)
ちなみに、わが家は肯定的ではないにせよ、 特に干渉されてはいません。これは今までの積み重ねもあってかと思います。
僕は教育論って宗教と同じで、何を信じるかですから、常日頃から子どもたちができるようになったことをたくさん共有して、ホームスクールを楽しんでいる笑顔の写真などをたくさん見せるようには心がけています。
家族は単純に不安ですよね。その不安を取り除く活動って何かな?と考えていきたいですね。
そしたら今は反対しているかもしれない親族も自然と応援してくれるようになるのでは、と静かに燃えています。
うちも最初はかなり口論になったこともありました。ホームスクールが引きこもりと捉えられると非常にネガティブなイメージを持ちがちなんですね。なので、最初はうちの子は特別なのでエリート教育をしたいという切り口で認めてもらえた気がします。英才教育というとなんか理解を得られるのは面白いし、理不尽ですが、でも結局その程度の「漠然とした不安」なんです。
僕の理想は、親族も含めて「みんなでこの子を育てましょうよ!」ということです。同じ舟に乗って、責任も分け合えるなら大いに干渉してくれて結構。でも、今は外野から石を投げ、ホームスクールだろうが学校だろうが、子どもに何があっても責任は取らないというスタンスだと思います。
率直に言えばそれは無責任な干渉です。
子どものことに積極的に干渉し、親身になって育てたいと思うのであればいっしょにやりましょうよ、と。
家族として責任を分けるのが極論としての筋だと思うのです。
小田
今の大人がホームスクールに賛成するには、学校教育を否定する必要があると思われていると思います。
それは自分たちが幼い頃にやらされて信じてきたことと向き合い、間違いだったかもしれない、と見直さないといけない。
ここに拒絶反応が起きるのも不思議ではないと、理解はできるんです。
ただ、親族の意見にはあまりに「人と同じでなければいけない」とか「たくさん我慢をしないと立派な大人になれない」というのが強く、本当にそうなのかと思うことがありました。
佐々木
たしかにアンチ学校の論調では賛同を得るのは難しいですね。
私たちとしては、「学校教育がダメだから」と消去法的にホームスクールを選んでいるわけではなく、あくまでも時代の変化の一つとして、またはこれからの教育の新たな選択肢として光を当てているわけですよね。
英語やパソコンなんて勉強しなくても生きていけた時代も今はそうではない。決して過去の選択が間違っていたとかではなく、そういったものの一部として理解してほしいなぁと強く思います。
私たちは「我慢をすれば立派な大人になるという根拠はどこに?」と思うタイプの人間ですが、結局「ホームスクーリングをすれば立派な大人に」にも根拠はありません。
あくまでも、選択肢としてどちらを選ぶか、ということを考えられるといいと思います。
ただ、職業だって数年前にはなかったものがゴロゴロありますし、本心としては「学校に行っていれば安全」というのはもう今は通用しないのかなと思いますが。(笑)
佐々木
それではそろそろまとめに入りましょう。
皆さんそれぞれにとって 親族やご近所付き合いで最もうまくやるためのコツはなんでしょう?
小田
私は、親族に関してお勧めできるようなコツはまだないのですが、反対する相手と関わる中で何か起きたら、お互い子どもの幸せを思ってのことだと念頭に置いた上で、やめてほしいことは我慢せず伝えるようにしています。
でも選択肢は色々あると思うので、子どもも自分も一番心地良くいられることを選べるといいですね。 ご近所さんとは、なるべく日頃からコミュニケーションを取って子どもたちの元気な姿を見てもらうよう心がけています。
小沼
私もコツというのはなく、日々試行錯誤です。
ただ先程も書いた通り、親族との関わりは大事ではありますが、一番大切なのは子どもの心なので、それを忘れない様に気をつけています。ご近所さんとの付き合い方も、私と子どもとで考え方が違う場合もあるので、うちは子どもと話し合いながら決めています。
佐々木
僕は成果物の露出と何より堂々とする事。
自信と責任を持てば、責める人はいないですね。
秋山
何が正しいとかはないと思うので、子どもを真ん中において、お互いを尊重できるといいなぁと思います。
佐々木
ありがとうございます!それではいったんここでしめさせていただきます。ホームスクールをめぐる様々な考え。みんな子どもたちを考えてのことだと信じたいですね。
また、今後のホームスクールをめぐる課題もたくさん見えた会だったと思います。
たくさんのご意見、ありがとうございました。