『フープのデザイン』完成!

昨年から弊社の作品集制作プロジェクトを長い時間をかけて進めていたのですが、ようやくモノができあがりました。

自社ウェブサイトが完成したのが昨年9月初旬、その後すぐ紙の作品集も作ろうという話が持ち上がり、方向性を模索し始めたのが9月下旬でした。模索当初のブレストではこんな案が浮かんでいました。

  • 捨てられずに長く保管してもらえるようなものにしたい。
  • A4などのスタンダードな会社案内のサイズではなく、ハンディなサイズにして、社員が常に何冊かバッグに入れておき、偶然出会った人にもその場で見せたり渡したりしたい。
  • サイズを小さくした分、ページ数を増やしたい。
  • 単なるポートフォリオではなくhooopのデザイン哲学が伝わるような内容にしたい。
  • 作品写真とデータだけが掲載されているのではなく、作り手の思いや制作プロセスが書いてあると時間をかけて読んでもらえるのではないか。
  • クライアントのコメントやインタビューが載っていると、読者が客観的な評価を知ることができて良い。
  • 制作プロセス自体が自分たちのデザインの経験値になるようなものにしたい。
  • アナログな手法、手作業を取り入れて、hooopのデザインを体現するようなものにしたい。

…ということで、小さな書籍のような形態にして、読み物としても楽しめる内容で長く手元に置いてもらう、というコンセプトがまとまりました。タイトルは『フープのデザイン』というド直球なものに決定! ウェブサイトの作品写真やテキストをもとに内容を詰めていきました。

制作を進めていく中で、冊子本体の印刷費を抑えめにして特殊印刷や活版などカバーに手間と費用をかけてみてはどうかという案が浮上してきました。それならばと、hooopが入居しているシェアオフィスの別拠点、co-lab墨田亀沢を運営しているサンコー印刷さんに相談することにしました。

のぞみペーパーとの出会い

最初に考えていたアイデアは、板紙をスリーブ状のケースにして、そこに手書きの細い線で出来たパターンをエンボスするというものでした。エンボスは手動活版印刷機を用いて空押ししようと思っていたのですが、技術的な話を伺うと、細かい模様を板紙のような硬い紙にエンボスするには凸型と凹型を作ってプレス機で機械押ししなければならないと判明…。そうなると結構な額の型代がかかってしまいます。いろいろなサンプルを見ながら用紙や印刷手法についての相談が続きました。

お話をしていく中で、「難しいこと、カタいことをデザインの力でやわらかく見せる」「手作業のエッセンスを活かしたグラフィックデザインをする」というhooopのデザインの特長が表現できるものであれば、板紙やエンボスにこだわらなくても良いのではないかと思い、それを具体化できる方法をサンコー印刷の有薗さんと西さんにご提案いただきながら考えていきました。

このときで11月頭。印刷手段を決めるのに1ヶ月以上かけるという自社媒体ならではの贅沢な時間のかけ方、楽しくて楽しくてたまりません(笑)

相談を重ねるうち、ふとサンプルを見せていただいたのが南三陸の福祉作業所で牛乳パックを原料にして手漉きで作っている和紙「のぞみペーパー」です。

この紙!手漉きなので厚みも不揃い、通常流通している和紙よりももっと不均一にテクスチャが出ていて、分厚くてふわふわした感触がたまりません(印刷機には通らないくらいの不均一さだそうです)。牛乳パックが原料なのでいわゆる「和紙っぽい色味」ではなく、クリアな白なのもいい感じで一目惚れです!素晴らしい!神!いや紙! 
この紙を使ってスリーブケースを作ることにしました。

分厚いファインペーパーは他にも沢山あるのですが、手漉きの和紙だけにある「耳(まっすぐに断裁されていない、漉きっぱなしのヘリの部分)」があるのも気に入りました。墨田区のすみのわプロジェクトでも使用したというこの紙、市場流通しているものではないので、これでスリーブケースを作ればあまり他では見たことがないものができそうです。福祉作業所の雇用創出や南三陸の復興支援に繋がるのもとても素敵でした。

紙の存在感が強いので、余計な模様などは入れずに手押しの活版印刷でタイトルとロゴだけを入れることになり、デザインも決定しました。

ただ、ここで問題が発生。スリーブケースを制作するのに足りるサイズが存在するかどうかが分からないのです。サンプルはハガキサイズしかないので、この大きさしか存在しないようだとアウトでした。もうコレしかない!という気持ちでいた我々は祈るような気持ちで有薗さんと西さんにコンタクトを取ってもらうことにしました。

吉報来たる

11月中旬、のぞみペーパーにA4、A3サイズがあるということがわかりました。ほっと一安心したのもつかの間、よく考えたら規定のサイズから必要なサイズを切り出すと、大事な「耳」が断裁されて普通の紙と同じく直線になってしまいます。整形されると、活版印刷の位置決めや折り目の筋押しの位置決めなどの作業がしやすくはなりますが紙の魅力が半減してしまう…。悩ましいところです。

そこへ更なる吉報が。なんと、特例としてこちらの制作物に必要なサイズに合わせて木枠まで作ってくれるというご提案をいただいたのです!紙!いや神!

すぐに木枠の制作と紙を発注し、待つこと2ヶ月、ようやくのぞみペーパーが出来上がりました!

そして、サンコー印刷さんに指南を受けながら自分たちの手でタイトルとロゴを活版印刷し、鉄筆で折り目の筋押しをしていきます。紙が想像以上に厚く設計図どおりに折ると内寸が小さくなってしまったり、直線の辺がないので印刷時に水平垂直が取れず文字が斜めになってしまうというアクシデントも、ちょうどその場に居合わせたco-labメンバーの篠原紙工の篠原さんに解決法を教えていただき、co-lab印刷コンシェルジュの越村さんに手動活版印刷機のコツを教えてもらいながら半日かけてようやく完成しました。

シェアオフィスでの人のつながりによって作るものがどんどん良くなっていくのは本当にありがたく素晴らしいことでした。神!いや人! 人の繋がりでここまでこれたことに感謝しながら活版印刷機をガッシャンガッシャン押し続けるhooopの面々なのでした。

印刷当日の様子はco-lab墨田亀沢のブログにも掲載されています。

振り返って

ふだん、仕事として請け負うものは(往々にしてタイトな)スケジュールがあり、ロットが決まっていて、大小さまざまな予算があり、クライアントがいます。自社の作品集を作るとなるとそれらの制約がなく完全に自由なアイデアでものづくりができますが、自由なアイデアには技術的な制約がつきものです(デザイナーの職業病で、何も制限がないフリーな状況だと逆になかなかアイデアが出てこない、ということも実感しました笑)。ビジョンを実現するために表現をどうすればよいか、表現を実現するためにどんな技術が最適か、今回サンコー印刷さんに相談したことで見えてくることが沢山ありました。

かくして、制作期間5ヶ月を費やした『フープのデザイン』ができあがりました。スリーブケースだけでなく、内容もいわゆるポートフォリオとはひと味違うものになったはず。これから営業用のツールとしてどんどん活用していこうと思います。
サンコー印刷の有薗さん西さん、co-lab墨田亀沢の印刷コンシェルジュの越村さん、篠原紙工の篠原さん、南三陸のぞみ福祉作業所のみなさん、コメントをいただいたクライアントのみなさん、ありがとうございました!


数に限りがありますが、デザイン発注の検討資料としてご希望があればお送りいたしますので、社名、業務内容などをお書き添えの上、ウェブサイトのコンタクトフォームからご連絡ください。

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