人生に悩む妻にGTDを教えたらどうなるか? 挑戦と成果の大長編!

Ken Takeshige
Creativity Magazine
8 min readMar 24, 2016

ある日、妻は悩んでいました。「なんかやるべきことをやれていない気がする……」と。そんな妻を説得し、GTDを試してもらったところ、なかなかいい成果が出たと思うのです。その挑戦と結果を大長編でご紹介。

妻が不安になっていた

現在、わたしたち夫婦はフリーで仕事をしていきたいと、アレコレ悪戦苦闘の日々です。収入が出てくるものもあれば、思ったよりも出ないものがあったり……。

最初からすべてうまくいくわけではないし、この悪戦苦闘も含めて予定通り、と思ってはいるのですが、妻は不安でした。

1日を終え、夕飯を食べても悶々とする。

「どうしたの?」
「これやってて意味あるのかなァ」
「どうして?」
「なんかもっと大事なことがあるような気がして……」

いろいろ話をしてわかったのは「なんとなく不安」という感覚……。わかります。いろんなことにチャレンジしていて、すべてで成果が出ているわけではない(まだ成果が出るのは先のこと)。

「今日は○○で1日使っちゃったけど、それで良かったのかなァ」
「じゃ、なにをやっていれば良かったと思う?」
「わからないけど……」

《The GTDが必要な人》に見えました。

「じゃぁ、明日の朝からGTDをやってみよう」
「ええ……、めんどくさそう……」
「でも、このままじゃ悶々とし続けるよ」
「わかった……」

GTDの概念くらいは教えてあったので、少しは興味はあったみたいだ。

翌朝、GTDキックオフ

朝起きて、朝食を終える。

「さぁ、やってみようか。手帳を持ってきて」

ノートの後ろのほうをGTD用に使う。インボックス/プロジェクト/次にやること/連絡待ち/いつかやる/Doneと6つのセクションを確保する。

参考:GTDを手帳と付箋で運用してみたら思った以上に良かった件

収集!

「とにかく気になることを書き出してみよう。迷ったら書く! 欲しいものとか、やりたいこととか、嫌だなって思うこととか」
「わかった」

20分ほどして「終わった」と言います。

「今度友だちと会うって言ってたけど、その日付とか待ち合わせって決まってる?」
「そういうのも書くの?」
「うん。仕事だけじゃなくて、爪を切りたいならそれも書く」
「……めんどくさい」
「こら」
「わかった」

その後、ひと段落したところで、GTDのトリガーリストをわたしが全部読み上げる。

「机の上で気になる物は〜?」
「最近抱えているプロジェクトは〜?」

ってな具合に。これが意外と効果があって「あ、あれがあった!」と気付く物が多かった。

全部で1時間弱。とにかく全部書き出した。100枚はなかったと思うけど、とにかく何十枚と書いた。

「もし、これぜーんぶ終わったらスッキリする?」
「する、かな……」
「ほんと?」
「たぶん……」
「ほんとに?」
「う〜ん、たぶん」

たぶん「全部書き出せたかが不安」なんだろう、と思ったから「今後も思いつくことは全部書き出して、貼っていきな」と伝えた。

GTDのひとつのウリは「すっきり感」だ。だけど、人によってどこで感じるかが違う。この収集のフェーズで感じる人もいれば、処理で感じる人、実際に作業を終えるルーチンのなかで感じる人など、それぞれなんだろう。

処理にも落とし穴が……

GTDのフローに従って処理していきます。

放っておくと、ほとんどが《次にやること》に割り振られていくようです。

そりゃそうですね。やりたいと思っていることを書き出しているんですから……。しかしこのままだと全部が《次にやること》になってしまいそうなので、軌道修正します。

「《次にやること》の目安は直近1〜2週間でやることにしよう。それより先になるようなことは《いつかやること》に置いておけばいい」
「わかった」

もうひとつ気になるのは、《プロジェクト》が少ないこと。そこでプロジェクトについて再度説明します。

「《プロジェクト》ってのは、会社で言うプロジェクトとは違くて、いくつかのタスクで成り立っているタスクのことを指すんだ。だから1アクションで終わらない物は全部《プロジェクト》に入れるんだよ」
「そしたら、全部《プロジェクト》になっちゃうかもしれないよ」
「それでもいいよ。例えば「ご近所さんのためにカステラを作る」ってのがあるけど、材料は揃ってる?」
「揃ってない」
「じゃあ、『買い出し』しなくちゃいけないね」
「たしかに」
「で、買うものは分かってる?」
「大体……、でも確認しないと……」
「ということは『買うものを調べる』ってのが最初の1歩かな?」
「うん」
「じゃ『ご近所さんのためにカステラを作る』は《プロジェクト》。で《次にやること》に『カステラの材料を調べる』を入れておこう」

《次にやること》に入るタスクはできる限り動詞で終わること。それが大事。

〜〜に電話をする

〜〜について調べる

〜〜について書き出す

〜〜を作る

みたいな感じ。で、プロジェクトをどこまで分解するかは人それぞれだけど、一気に終わらない物は分けておかないと、いつまで経ってもタスクが消えなくなる。

前述の「ご近所さんのためにカステラを作る」というのは、少なくとも『買い出し』と『調理』にわけておくことで、『今日は買い出しだけ』っていう風に、少しずつ進めていくということができるようになる。

GTDを運用!

妻には、『毎日、GTDで作ったタスクに目を通して、今日と同じように処理していくように』と伝えた。

どうなることやら……。

そして一週間……。

妻のブログにこんな記事が投稿されていた。

夫が伝授したがるGTDとやらをやってみた

(夫は)GTD歴7年だそうで。若干引くレベルでまめ〜にタスク管理をコツコツしています。

引かれてた! 笑

気を取り直して、妻のブログを読んでみると、こんな課題があったようだ……

  • 「やんなきゃ」と思うことが多すぎて、書くのが追いつかない
  • 《次にやること》がプロジェクト毎に別れていないのが違和感
  • 山のようなポストイットに圧倒される

「あるある」と思わず頷く。これって、誰もが通る道。なんか手助けがいるかな〜、と読み進めていくと、自分なりに改善しているようだ。

その中で、自分も無意識にやっているのが「同じ or 近いプロジェクトにあるタスクは近くに貼っておく」というもの。

これ、実はポストイットでGTDをやる究極のメリットかもしれない。

アプリやサービスでやろうとすると、きっちり管理して「同じグループに入れておく」みたいにしなくちゃいけないんだけど、ポストイットなら「なんとなく寄せておく」という曖昧な管理ができる。

これいいことに気が付いたよ、妻よ。

さらに1週間……

悩みつつ、ちゃんとGTDを続けていたようだ。こんな記事がブログに投稿されていた。

夫が勧めるGTD、やっとつかめてきた!

生産性がワタシの300%くらいの夫が勧めてきたのがGTDでした

こんどは褒められていた。よかった……。

さて、彼女はふたつの大きな気付きに至りました。ひとつ目は……

(モチベーションを高めるには)インセンティブを作ることに尽きます。タスクをどんどんこなしたくなる「ニンジン」を鼻の先にぶら下げることで生産性は上がるし、GTDが楽しくてしょうがなくなってきます。

> この場合のニンジンはタスクを細かく分け、完了した瞬間にそのタスクが書かれたポストイットをピッと「Action」から剥がして「Done」に張り直す。その瞬間が結構快感で次から次にやりたくなるのです。

これぞGTDの醍醐味ですね。GTDの気持ちよさって、「ぜーんぶ書き出して、ガリガリ終わらせていく」ということに尽きると思うのです。妻はそれを実感したみたい。

もうひとつ驚きの発見が。

例えば会社で「部長になるのが夢」だとしたら、何歳までに部下を持って、何歳までにリーダーになって、何歳までに……そのためには……さらにそのためには……、と小さく小さく目標をブレイクダウンします。

これ、GTDを長くやっている人でも見逃しがちな考えです。ウェブで語られているGTDって、ひたすらボトムアップ的なアプローチなんです。ちゃんと本を読めば分かるのですが、じつはトップダウン的なアプローチも重要。

それにちゃんと気付いて実践していました。エライ!

妻は正直だからおもしろい

こうやって妻がGTDやってるのを見ていると、反応が正直でおもしろい。

「なんか、ポストイットばっかりでグッタリする……」

みたいに思うことってあると思うんです。GTDをやればストレスゼロと言いたいところですが、やっぱり苦労もあるんですよね。それを乗り越えることで、大きなストレスは改善される、のだと思います。

みなさんもチャレンジしてみては?

妻の仕事術を今後も取材していこうと思います。

Originally published at 日刊ケネミック.

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Ken Takeshige
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小説書いてます。『池内祥三文学奨励賞』受賞。世界旅を終え、作家活動中。 noteやMediumで小説を連載。ブログ『日刊ケネミック』→ http://kenemic.com | Amazon著者ページ→ http://amzn.to/1sh7d1f