インディ作家を救うのはβリーディングだ
日本ではまだ知られていない、『βリーダー』についてご説明します。英語圏ではもはや当たり前のものなんですよ。
βリーダーの必要性
電子書籍が広がったことで、誰でも本を出せる時代になりました。
しかし問題は出版社のチェックを通っていない本が、そのまま出版されることです。お金があれば、校正を外注することも可能ですが、それが難しいときはどうするか?
そこでβリーダーという仕組みが重要なのです。
βリーダーとはなにか?
βリーダーとは公開前の本を読み、内容をチェックする人です。
英語圏ではすでに定着している仕組みですが、日本ではほとんど見かけることはありません。
ソフトウェアでも “βテスター” と呼ばれる役割がありますが、それと同じですね。βテスターは、まだ公開前のソフトウェアを一般の人が使ってみて、問題があれば報告するというやつです。
βリーディングの流れ
βリーダーという仕組みがまったく知られていないので、そのおおまかな流れをご紹介します。
1. 募集
まず著者がβリーダーを募集します。本のタイプや著者の要望によって、募集要項は変わるでしょう。
この時点でどのようなβリーダーを募集しているのか、どのようなチェックを依頼したいのか、を明確にすることが重要です。
たとえば『文字校正』をお願いしたいのか? ストーリーをチェックしてほしいのか? この辺を明確にしないと「ストーリーをチェックして欲しいのに、誤字脱字ばかり指摘してくる」なんてことになりかねません。
2. βリーダーの選定
大勢集まるようであれば、選定する必要がありますね。ただ、大勢の目を通すことはメリットなので、1人2人に絞る必要はないでしょう。
英語圏の記事を読むと「多ければ多い方がいい」と言い切る人もいました。とはいえ、何百人もいたら大変なので、10人くらいがいいのかな、とわたしは思っています。
3. βリーダーへの原稿送付
βリーダーを担当してくれる人が決まったら、原稿を送ります。
作品の長さによりますが、長編であれば、一気に送らない方がいいと言われています。たとえば1章だけ送り、そこまで読んだ感想を送ってもらってから、次の2章目を送る……、という手順が良いでしょう。
そうすることで、冷静なコメントをもらうことが可能ですし、なにより「第1章を読んで、第2章を読みたくなりましたか?」という質問ができます。良い本の条件です。
4. レポートを送ってもらう
読んでもらったらレポートを送ってもらいます。
ただ、漠然と「感想を送って」とお願いしても、βリーダーは困るでしょう。
「おもしろかった」で終わる人もいれば、何千字にわたる書評のように送ってくるケースもあると思います。
そこでフォーマットを決めておくことが重要です。フォーマットについては別の記事で触れたいと思います。
βリーダーがなぜ重要か?
大袈裟に聞こえるかもしれませんが……、
インディ作家という分野を成長させていく上で、βリーディングというプロセスは超が何個もつくほど重要だと思っています。
たとえばソフトウェアを想像してください。フリーウェア・シェアウェアという、プログラマーが趣味で作ったソフトウェアが世界中に広がりました。その成功要因のひとつはβテスターの存在だと思っています。
大勢でソフトウェアをテストする。不具合を減らすのはもちろんですが、使い勝手の悪さを指摘し、足りない機能も指摘する。そういったことを繰り返し、ときに大手企業が作るソフトウェアよりも品質の高いソフトウェアが出来上がることがありました。
その結果、そういったフリーウェア・シェアウェアは一般の人にまで浸透したわけです。
同じようにインディ作家の成長の鍵はβリーディングにあります。
本を消費する読者自身が、「自分が読みたい本」をブラッシュアップしていく。自分が読みたい本を、もっと自分が読みたい形にしていく提案ができる。まさに “共創” です。
作家からすれば、大勢の目を通すことでアラを潰すことができるし、みんながどういうものを読みたいのかチェックすることができる。
今後、βリーディングについて情報発信をしていきたいと思います。注目です。
ちなみにわたしもβリーダー募集中です
世界旅小説(アジア編)のKindleを出版予定です。
ベータリーダーに興味がある人は こちら の記事最下部にあるフォームからお名前とメアドを送ってください。詳細をお知らせします。
Originally published at kenemic.com on June 1, 2016.