「質問という名の演説」に終止符を

Slidoはイベントの救世主になる(のか)

Yasuto FURUKAWA
howmori
12 min readDec 24, 2018

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Slidoでのクリスマス風ビューモード

Civic Tech お役立ちツールキット Advent Calendar 2018の24日目です。
メリークリスマス。日本のサンタさんたち、おつかれさま。

Sli.doというツールはご存知でしょうか?(読み方はスライ・ドォです)

簡単にいうと、ライブイベント(セミナー・シンポジウム・カンファレンス)の聴衆が、スマホやPC経由で登壇者に質問を送り、良い質問に投票できるウェブアプリーケーションです。

聴衆は呪文のようなURLを苦労して入れなくても、とりあえずブラウザでSli.do にアクセスして4桁ほどのコードを入力するだけで参加できます。

スマホでもPCでも操作可能 via Slido

SlidoはCivicTechイベント運営にも大きな効果をもたらすと考えています。この記事では、そんなSlidoの紹介と参加・運用で気づいたことを共有してみたいと思います。

なぜSlidoがこんなに求められるのでしょうか?
Slidoのオフィシャル動画ではそんなサービスの背景やニーズが面白く説明されていたのでちょっと引用してみます。

「いいライブイベントはやることも多く、参加者の満足度を上げることも重要です」 via Sli.do
「…でも74%の参加者は質問が苦手なのです」 via Sli.do
「なにか聞きたいことがあってもドキドキしてしまいます」 via Sli.do
「また、みんなが聞きたい良い質問は出ず、一部の人たちが貴重な時間を独占します」 via Sli.do
「そんな独占によって4分3の参加者は黙ったままで、無視された…と感じるかもしれません」 via Sli.do
「いいイベントのためにはどうしたらいいの?そこでSli.doはどうしょう」 via Sli.do

…イベントを運営したことがある方や、内容の乏しいイベントに参加してしまった経験がある方にとっては、とても頷くイントロですね。

たとえば、本記事タイトルにあるような質問と称した5分にわたる抽象的な意見表明演説 や、ひとりで3つ質問した上に登壇者が最初の質問を聞き直すとか、全くディスカッションが始まる気配のないパネルディスカッションなんて事態に遭遇することもしばしばです。すると、「砂漠でラクダに逃げられたらいいのに…!」とフラストレーションをためてしまったり、イベント内容よりも家の冷蔵庫にある鳥胸肉の消費期限について心配をはじめてしまう聴衆もでてくるでしょう。
そして、このような方々はイベントや主催コミュニティに対してのよい印象が薄まっていくかもしれません。

そんなモヤモヤに効果がありそうなツールがSli.doです。
わたしが初めてこのサービスをみたのは2017年に台北で開催されたCivicTechFest 2017で、ほぼ全てのセッションで採用されていました

大会場でもslido

また、セッションのオーガナイザーも壇上でディスカッションをしながら手元のスマートフォンで質問の採用や管理をスムーズに行っていることに驚きました。
その上、わたしのつたない英語での質問もいくつか採用されて、そこから議論が沸き立つ瞬間は、とてもかけがえのない経験でした。

オードリー・タン大臣もオーガナイザーをしながらスマートフォンでSlidoの操作を行う(via.OpenCultureFoundation)

もちろん、今年のg0v summitでもSlidoは大活躍で、多くのセッションで採用されていました。

PDIS(Public Democracy Innovation and Serivce)のワークショップでもSlidoを軸に議論

台湾だけでなく、今年アルゼンチンで開かれたIODC18(International Open Data Conference 2018)でも利用され、アンケート機能なども使って参加者とのコミニケーションなどもとっていたようです。

IODC18での活用

国内でもここ数年でオープンソースやシビックテック界隈のイベントではよく見られるようになりました。たとえばFOSS4GイベントCODE for Japan Summitなどでも積極的に利用されています。

FOSS4G Tokyo 2017 at 東大駒場でもすぐ採用

また、コミュニティだけでなく、学術学会や総務省・国土地理院のセミナーでも導入が進んでいます。先日も某お役所系イベント事務局の方にSlido導入検討のお願いを恐る恐る連絡したところ、「あっハイ、いつも使っていますので」とあっさり返事が来て驚いたこともありました。

このほかにもTwitterのハッシュタグで検索すると国内外の様々なイベントで導入されているようですね

世界のslido via twitter

イベントではプレゼンでの質疑応答という基本的な使い方のほかに、パネルや合同セッションの際に登壇者と聴衆のコミュニケーションを潤滑にする「話のきっかけ」ツールとして効果的に利用されています。

どうでしょう、あなたのイベントにもSlidoを使ってみようかな…と思ってみました?

導入にあたっては、Shunya Uetaさんによる

あたりの記事がとてもよくまとまっていて参考になるかとおもいます。

では、実際の参加や運用にあたってはどんなTipsがあるのでしょうか?

わたし自身もなんやかんやで質問や構築運営などで10〜20個くらいのSlidoのルームで関わっており、わかったことをいくつかメモっておきたいと思います。これからSlidoを使ったり参加してみようと思ってる方の参考になれば幸いです。

まず使えるように案内する

Slidoイイね!と思っている「あなた」はどんな人間でしょうか?…何回もSlidoを使うイベントに参加してて、URLも打てて、スマホ入力がうまくて、英語もちょっとわかって…なんてこともあるかもしれません。

しかし、webサービス全般に慣れてないとSlidoのインターフェースや導入はまだちょっとむずかしい場合があります。そんな場合は質問できる状態までのサポートを準備することも必要になってくるでしょう。

たとえば、台北でみたInternational data economy summit 2017の一般向けシンポジウムでは、受付にSlidoのアクセス先や使い方が示された案内があり、一般市民の方も熱心に説明を読んでいました。

使い方とイベントコードの入力方法

また、使い方やイベントコードが記載されたフライヤーを各席に置いておいたり、それらの情報を壁に掲示しておくなどの工夫も必要かもしれません。こうやって多様な参加を即すことで、「うまい質問」も増えるとおもいます。

このへんの使い方フライヤなどはCC BYなどで共有できるとよいかもしれませんね。

CC BYのSlido案内フライヤをハウモリ山形さんが速攻こさえてくれました、ありがたや。

「うまい質問」はみんなを幸せになる

ここはあなたのTwitterではない

「質問」と一言でいいますが、じつはなかなかむつかしいものです。相手からうまく情報を引き出し、双方で次の考えのステージに進めるとなんだか得した気になります。このイベントに参加してよかったなあ、ってね。

イベント中にSlidoの管理画面を凝視していたり、登壇者として質問を見たりしていてよく感じることは「着眼点はいいんだけど、これは良い聞き方じゃないな…」という投稿がしばしばあります。自ずとその質問には👍の投票がつかないため、どんどん下におしやられていきます、なんかもったいない。

たとえば、「うまい質問」に関する記事では(孫引きで恐縮ですが)このように紹介されています

「うまい質問」は会話を弾ませて、よい印象を与えます。
「へたな質問」は会話をしぼませ、悪い印象を与えます。
神岡 真司著「口ベタでも、人を動かすうまい質問」より引用

また、質問するときの3つのメソッドとして

1. 誰にどんな質問をするのか、目的を明確にする
2. 相手が答えやすい質問をする
3. 適切なタイミングを見計らって質問する
神岡 真司著「口ベタでも、人を動かすうまい質問」より引用

なども参考になるかもしれません。

登壇者は往々にして緊張状態にありますし、プレゼン直後で疲弊をしています。質問する側もフラットな立場で「うまい質問」を投げかけてみると、双方や参加者全員にとってよい成果になるかもしれませんね。

また、「うまい質問」をするためには、しっかり登壇者の話からストーリーやキーワードを掴み取る必要があるので、内容に集中できたりします。これは意外な成果でした。

質問しやすい呼び水

いざSlidoを導入したものの、開始して30分たっても質問ゼロなんてイベントをみたことがあります。また、ある大学の講義で導入したところ、本題とは関係のない講師の容姿などに関する感想だらけになったという話も聞きました。

ファーストペンギンのごとく真っ白なボードにいきなり飛び込むのは勇気がいるものです。また、とりあえず適当になんでも書き込んでくださいと場を初心者に放置しておくと、素敵なパーティーにするつもりが一気にパイ投げ大会になることもあります。

そんなときは、前もって運営サイドからテーマや登壇者をよく知る方などに投稿への協力をよびかけてもよいかもしれません。
また、運営からのお願いや、前述の「うまい質問」文例などを最初からSlidoに載せておく方法もあります。

first penguin via Pixbay

振り返りに使ってみる

時間的な制約などで、登壇者はすべての質問に答えられないことはよくあります。そのような場合、のちほど登壇者の方がSlido上でお返事するパターンも最近見られました。

有料版だとテキストファイルにエクスポートできるようなので、そのあとのまとめも楽かもしれません。また、質問一覧のCSSをスクレイピングしてGoogle Docsなどに貼っちゃうスクリプトやIFTTTもあると便利かなと思っています。

Slidoは「銀の弾丸」でも「Sli道」でもない

ここまでSlidoを推薦気味に紹介しておきながら何ですが、Slidoだけであなたのイベントが素晴らしいものになるわけではありません。

15名ほどのこじんまりしたセミナーでのことです。そこでは演者と参加者の温度感もよかったので、準備していたSlidoルームはほとんどつかわず、話題提供のあとは全員でのフリートークにしたこともありました。

すぐ目の前の席にすてきな紳士淑女がいるのにLINEやメッセで「そこの醤油とって」と連絡しないのと同様に、場の温度や距離感でSlidoの利用割合が調整できるとよいかもしれません。

また、スマートフォン普及率が高くないお年寄りやお子さんの参加が多いイベントもあるので、Slido一辺倒になるのでなく、挙手やポストイットなどの組み合わせを行う運営上の工夫も重要ですね。

こんな距離感ではslido使うのはちょっと違うよね via Pixbay

ということで、いろいろな効果もたらすSlidoですが、もし気になったらあなたのイベントでの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

また、操作に慣れてきて予算に余裕があれば、より高機能な有料版の購入もよいかもしれません。個人ではちょっとお高いですが、スポンサーのつく大きめのイベントなどではあらかじめSlidoの使用料を予算に組み込んでおくと大丈夫でしょうし、課金によってSlidoの維持や成長につながりますしね。

あ、そうそう、2018/12/30までSlido#ctt18にお試しルームを置いておきます。先日フィンランド大使館で開かれた事業者向けイベントでのSlido…とでもしておきましょうか。ルームへの入室や質問のテストなどにお使いください。

来年はあなたにとっていいイベントができるといいですね、良いお年を。

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Yasuto FURUKAWA
howmori
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GIS Engineer / Organizer 人と位置と科学。Code for Japan/OSGeoJP/MIERUNE/Code for Sapporo/Rakuno Gakuen Univ./CoSTEP04