本たちの大移動
昨年の9月、新しい本棚を買った。ほぼ壁一面のバカでかい本棚である。バカでかいといっても北海道ほどではない。これまで部屋にあった小さな本棚たちをすべて処分して、大きな本棚ひとつにまとめて部屋をすっきりさせたかったからなん棚。壁一面に収納できる本棚を持つことは私にとって長年の、いや、遡って一ヶ月ぐらい、あるいはそれ以下の夢だった。衝動買いだったかもしれない。
注文してから届くまでの間は連日のようにTwitterでつぶやくほどの浮かれっぷりと心の躍り具合だった。実際に踊っていたかもしれないし、踊らされていただけかもしれない。
大きさが大きさだけに、ぶっちゃけお値段以上ニトリどころの騒ぎではない金額だったが、冬のボーナスに期待をかけて思い切ることにした。いま思えば期待なんかするんじゃなかっ棚と思う。
そして当日、台風が上陸するよりも一足早く、わが家に本棚が上陸した。興奮は隠しきれず、心のヘクトパスカルは台風と反比例するようにますます高まっていった。

箱を開封し、出てきたパーツをパーッと並べる。これらを説明書を見ながら組み立てる。「ちっ、めんどー棚」 休日には決して出ないやる気をこの日ばかりはと振り絞る。いや、やる気が出ないのは仕事の日も一緒棚。

少しずつ完成に近づく。台風も近づく。久しぶりの日曜大工であったが、作ったのは月曜だった。
小一時間、あるいは小一週間かけて完成し、心の中で歓声。本の引っ越し作業も残っていたが、しばらくはこの状態のままで眺める。ふと心の声が漏れる。「ああ、幸せ棚〜」 本棚を買ったのではなく、この幸せを買ったのだなと、買ったの棚と実感する。
その後、慌ただしく本の移動も終わり、まだまだ埋まりそうにない本棚のスペースに今後の読書欲も掻き立てられてきそうだ。
9月、読書の秋である。今年の秋は一冊も本を読まずに過ごしてこのバカでかい本棚を呆れさせてやろうか。
あれから半年近く、あれだけでかい買い物をしたというのに一向に読書欲が掻き立てられてこない自分自身に一番呆れている。

