#123 間違った目標設定と評価制度が”失敗”を作る

Masato Ishigaki
Masato Ishigaki
Published in
Aug 2, 2024

間違った目標設定と評価制度が失敗を作るという話をしたいと思います。
エンジニアであれば、薄々感じている方も多いのではないでしょうか。

  • 評価期間になると評価者に対して、一生懸命自分がやったことをまとめる作業時間を作り、開発する時間が減っていく
  • エンジニアとして事業への定量的な数値を求められるが、無理な定量化になり辻褄が合わなくなる
  • 事業目標とエンジニアとしての目標が繋がってこないので定性的な目標になりがちになるがそれだと評価されにくい
  • 毎回、目標を設定するのが期の終わりになり、評価の時期は成果確認で終わる
  • 良い評価をもらっても、さほど査定結果が良くなくロジックが不透明に感じる
  • フィードバックの中身が薄く、完了したものが少ないので自己達成感もない
  • 総じて、何のために目標設定をしているのかがわからない

こうした課題は多くの企業に存在しています。 目標設定を適切に行い、それを評価しフィードバックをしながら達成感と課題感を伝えることで次に繋げモチベーションを上げていくという行為 はとても難易度が高い仕事の1つです。

関係性の恐怖としては、目標設定による評価制度が自分の給与に深く紐づいているため、無下にすることもできず「その時間を開発に当てたほうが良いのにな…」と感じながら、毎回目標設定とその達成度のモニタリング(1on1)に勤しむエンジニアも多く存在します。

目標設定・評価制度をうまく組織の中で活用できなければ、評価システムが余分な時間や思考を作っていきます
ソフトウェア開発の時間を邪魔し(フロー状態をなくす)、関係性を悪化さえ、モチベーションを下げていきます。

「急成長を導くマネージャーの型 ~地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント」(技術評論社、2021)には「目標設定は予測ではない」と述べられています。

つまり、推論や事業KPI、市場分析からブレークダウンして起こす事業的な売上数値の目標の類いとは設定の仕方も目的も違うのです。
本来、目標設定というのはメンバーやチームがその目標を目指すことで、 モチベーションが上がり、能力を最大限引き上げるため のものです。そのために個人はどういった振る舞いをするべきで、その期が終わった後に「自分はどんな成長をしていて、どんな状態になっているのか」にワクワクできることです。

つまり、目標の正確性もいりません。
そして極論、上長や会社から評価されるためでもありません。数値(査定額)は後から付いてきます。
無理に事業目標と個人目標を近接的にしすぎたりすると結果を見たときに他の要因によって個人目標も達成できなくなることも多く、上長や会社が求めていることだけを目標にしても個人が必ずにもワクワクできるとは限らず、モチベーションの維持的にも目標達成が難しくなったり、達成したとしても成長曲線が上がるとは限りません。

何が必要かを考えると目標が達成することで、成長曲線が正しく上がっていることを意識します。
評価・起案するマネージャーはメンバーが目標を達成することで成長曲線の確度が上がっていくことを期待・予見し、それが結果として事業成果に繋がっていくようなコンバーター的思考が求められます。

成長曲線で言えば、エンジニアは基本、年々成長幅が鈍化していきます。エンジニアに成り立ての頃はいろんな技術スキルが足りなく吸収することが多い状態のため成長確度は高くモチベーションも高いですが、エンジニアとしての武器が増えてくるとそれを使って何をするべきかという活用フェーズになるため、伸ばす方向性を悩んだり鈍化していることによってモチベーションのエンジンがかかりにくいエンジニアも多いでしょう。

そこを補完するための目標設定です。
目標を達成することで、エンジニアとして成長しているという実感のエンジンを作り、それがプロダクトや組織の価値に繋がっていることがモチベーションとなり、結果として組織への帰属意識にも繋がってきます。

人は自分のスキル量に満足するのではなく「より多くの成長を自分はしているか」「数年後にできていそうか」という部分にモチベーションを持っています。一方こういった実感がなければ、成長できない環境という認識をもち(別の人によっては成長できる環境にも関わらず)、離職にも繋がってくるでしょう。
それほどまでに目標設定に紐づく評価制度は重要であり、失敗を防ぐ根源的な人的資源の支えとなります。

最後に、成長しているかどうかは自分自身で気づくことは難しく他者からの意見によって自身の成長箇所の発見することが多くあります。そういった意味でも目標設定とフィードバックは重要な役割を示します。

成長したいすべての人へ DMM.comのVPoEが語る、「成長」に必要なマインドと実践すべきこと」では以下のように述べられています。

成長に気付くのは、本人がいちばん最後。
ほとんどの場合、周りが先に気付き始めるのですが、その時に自覚はなく、しばらく経ったあと、たとえば次のプロジェクトを始めてみてから気づくことになるのです。
ここでも他者から意見を聞ける環境があれば、自覚がなくとも「周りから見て成長していると思うよ」といった声をもらえるため、くじけけそうになっても頑張ろうと思えるのではないしょうか。
他者との関係というのは、どこまでいっても大切ですね。

Unsplash / Ioann-Mark Kuznietsov

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Masato Ishigak / DMM.com LLC / Division Maneger / Engineering Maneger