ProductManagerが理解しておくべきプロダクトの成長段階 by Sequoia Capital

Masato Ishigaki
Masato Ishigaki
Published in
16 min readDec 20, 2018

この記事は、Product Manager Advent Calendar 2018の21日目のエントリーです

今回は、ProductManagerが理解しておくとよい『プロダクト成長段階』のひとつの考え方をSequoia Capitalの記事をもとに記載していきます。

https://bfore.hongotechgarage.com/entry/evolution_of_a_product

元記事は以下です。

Overview

この本では、プロダクトの成長について大きく4つに分けれれています。

  1. 初期段階 (Early Phase)
  2. 成長段階 (Growth Phase)
  3. 超成長段階 (Hyper Growth Phase)
  4. 成熟段階 (Mature Phase)

この記事では、こうした4つの段階の概要ついてまとめていきたいと思います。

以下の図にもあるようにプロダクトの成長は緩やかなS字カーブになることが普通(良いプロダクト)とされています。

https://bfore.hongotechgarage.com/entry/evolution_of_a_product

初期段階 (Early Phase)では、ゆるやかに上がりそこから成長段階 (Growth Phase)では徐々に上がっていきます。ここから良いプロダクトというのは超成長段階 (Hyper Growth Phase)といったPhaseになり急上昇します。最後には成熟段階 (Mature Phase)といった形で横ばいとなっていき成長率というのはなくなっていきます。

初期段階 (Early Phase)

初期段階、つまりサービスいわゆるプロダクトをローンチして約1ヶ月と考えるとおそらく有意義なデータ(数値)は確保できていないでしょう。

記事の中ではこのようにあります。

この段階中はデータが不足します。そしておそらく、皆さんが手にしているデータは信頼性が低いか、その製品の長期的な将来像を反映していないものです。月間アクティブユーザー (MAU) 全員が同時に新規ユーザーでもあり、離脱 (churn) や復帰 (resurrection) は存在しません。(注意: 一定期間中の合計アクティブユーザー数は継続ユーザー、復帰ユーザー、新規ユーザーの合計です)

いわれてみればそのとおりですが、xAU(アクティブユーザ)数というのはここでは3つのユーザー属性の合計となります。

xAU = 継続ユーザー + 復帰ユーザー + 新規ユーザー

ここの3つの属性は大事な観点になります。

プロダクトを世に出してから、1ヶ月は特に変化するべき点は、どのぐらいMAUがあったか。ぐらいですがそれが2ヶ月目からは変わってきます。

いままで、ユーザーの属性として

  1. 継続ユーザー
  2. 復帰ユーザー
  3. 新規ユーザー

の3つをあげていましたが、ここでもうひとつ『離脱ユーザー』が現れてきます。2ヶ月、3ヶ月と月日が経つにつれて、この新規 / 復帰 / 離脱のバランスの比率が見えてきます。復帰は少なく、新規ユーザーが依然として最大要因ではあるものの、離脱が重大な影響を与え出します。

ここのバランスを計算する指標として「Quick Ratio」という観点(式)が有効になってきます。

Quick Ratio = (新規ユーザー + 復帰ユーザー) / 離脱ユーザー

初期段階での健全なプロダクトは、新規ユーザーがMAUの大半を占めて離脱より復帰のほうが上回り、継続ユーザーのバランスを離脱と復帰のそれぞれのユーザーで取れている状態となります。

成長段階 (Growth Phase)

初期段階を終えるとそのプロダクトを利用しているユーザー層が一定層いる形になっているかと思います。

かといってそのプロダクトが爆発的に市場にfitしているか、この後爆発的にhitとするかはわかりません。このあと爆発的にhitするプロダクトの特徴を以下に述べていきます。

まず、MAUの中での新規ユーザーが占める割合が少なくなっていきます。そのかわりに、MAU全体の中に継続ユーザーが増えていきます。

まだ、復帰と離脱のなかで継続ユーザーのバランスをとっていますがいずれにしても定着しているユーザーが多いため復帰 > 離脱(新規ユーザーが多い)となり、グラフは上昇していきます。

https://bfore.hongotechgarage.com/entry/evolution_of_a_product

超成長段階 (Hyper Growth Phase)

これまで開発されてきた最高レベルの製品の多く (例えばFacebook、Instagram、WhatsApp、Amazon、Netflix、Uber、Evernote) にはある一つの共通点があります。すなわち、「超成長」段階です。

とあるように世界的にProductFitしているサービスはこの『超成長段階』に突入していきます。

特徴は以下に述べていきます。

新規ユーザーグループに定着率の期間の短さが上昇します。そのため、不復帰 > 離脱となり比率が改善されます。

いわゆるこのバズっている状態を引き起こすタイミングとして以下の2つの述べられています。

  • 実現可能な最大の市場規模に対し、一定レベルの普及率に到達したとき。
  • その製品がかなり有名になったとき。それに加えて、この段階中に古参集団の復帰数がより巨大になり始め、離脱数が減り始めます。
https://bfore.hongotechgarage.com/entry/evolution_of_a_product

この段階では、『復帰 > 離脱』の比率が確立され、プロダクトの新規ユーザーが増え続けるため、MAUが劇的に上昇し、あらゆるエンゲージメント指標が上がっている状態になります。

成熟段階 (Mature Phase)

この段階では、その市場の普及率が高いものに達しており新しいユーザーの増加数もそこまで多くはなりません。

成熟段階のその後。

プロダクトをローンチしてから、3つの段階を経て成熟段階に到達しました。では、このあとはどうするべきでしょうか?記事には以下とあります。

さらなる製品の成長や新たな環境における成長は再びS字カーブをなぞることになります。つまり、まずはゆっくりと成長し、次に加速・急増して飛躍的な成長率を達成しつつ、最終的には飽和状態に達します。多様化することで、S字カーブを重複させて成長の継続が実現できます。

例として、Netflixの軌跡を考えてみましょう。この企業は2007年、アメリカでストリーミング製品を始動させました。そして2010年に超成長段階へと突入しました (図6を参照)。この時、Netflixの上層部はすでに国際的な拡大に向けたインフラの構築を開始しており、そのプラットフォームは2010年の後半に他国でのサービスを正式に開始しています。数年後にアメリカでの成長率が成熟に達するまでには、国際的事業 (それ自体、S字カープを連続で重複させています) がNetflixの契約増加数の大半をけん引していました。Netflixと同じく、ほとんどの企業は最初の製品が成長段階に入った時点で製品とそのすぐ周辺の事柄について積極的に考えていくべきです。二の矢を放つのが遅れれば (あるいは何も放つことができなければ)、成長は妨げられるでしょう。

https://bfore.hongotechgarage.com/entry/evolution_of_a_product

とあります。いわゆる、新たに第2,3のプロダクトを生みましょうといった形です。

Metrics

では、成長の段階を自分のプロダクトが正しく踏んでいるのかについてどのようなメトリクス(指標)をモニタリングしていけばよいのかを見ていきます。

▼ 市場のメトリクス = MAU / インストール数

市場のメトリクス = TAM , SAM※などの指標です。

ここでの見るべき指標は、『MAU / インストール数』です。成長度を測定するためには、まずそのターゲット市場全体の総インストール数とプロダクトのインスール数 および月間アクティブユーザー(MAU)を追跡します。

成長市場の場合は、比較的『MAU / インストール数』は上昇していきます。しかし、その市場の普及度が限界に達するにあたっていわゆる新規ユーザーのπはなくなるため戦術的に新規ユーザーを増やすというよりかは復帰ユーザーをどう増やすかに注力するべきです。非常に強い製品の場合、古い時期のコホート(属性/グループ)が復帰し始めるため、「MAU / インストール数」が時間とともにゆっくりと増加します。

▼ 成長のメトリクス = 『MAU / WAU / DAU』

では、初期段階を追えて成長のフェーズに入ってきたときに追従するべき指標は、『MAU / WAU / DAU』です。

  • 任意の1日にその製品をアクティブに使用している人の総数が日間アクティブユーザー数 (DAU)
  • 任意の1週間における特定のアクティブユーザーの数が週間アクティブユーザー数 (WAU)
  • 任意の1か月間における特定のアクティブユーザーの数がMAU

引用 : https://bfore.hongotechgarage.com/entry/measuring_product_health

さらに、D/D、W/W、M/M、Y/Yの変動数を見ていきます。つまり

  • D/D = 前日比
  • W/W = 前週比
  • M/M = 前月比
  • Y/Y = 前年比

の数値もモニタリングしていきます。これは、プロダクトの属性によって『MAU / WAU / DAU』のどこが変動しやすいかが変わるからです。日によって変動が激しい部分や週 / 月でみないとあまり変動がないのかなどです。

また、『新規ユーザー、復帰ユーザー、離脱ユーザー』のバランスを見るのも重要です。つまり。「Quick Ratio」という観点(式)が有効になってきます。

Quick Ratio = (新規ユーザー + 復帰ユーザー) / 離脱ユーザー

という式が成り立ちます。これが成長度(Growth)の式としてとても有効です。本家から引用すると以下の説明になります。

クイックレシオ (新規ユーザーと復帰ユーザーの合計をチャーンユーザーで割った比率) が1より大きいと、純増数はプラスです。1より小さいと、アクティブユーザー数は対前月比で減少しています。ほとんどの場合、会社が成熟に達すると、復帰とチャーンがおおむね互いに相殺し、純増の大半が新規ユーザー数の増加によって起こります。飽和市場の場合、例えばアメリカのFacebookでは、新規ユーザーの獲得が極めて小さく、成長は比較的一定の状態が保たれ、チャーンと復帰は互いに相殺しています。引用 : https://bfore.hongotechgarage.com/entry/measuring_product_health

また、MAUと新規ユーザーとの関係でいうと初期段階ではユーザーの全体像として『新規ユーザー』が大半を占めるのは問題ありませんが、普及してもこの構造だと危険とされています。つまりいつまでも復帰ユーザーがおらずにずっと新規ユーザーが全体を占めている状態です。いったん製品が有効市場で高い普及率に達したら、その製品が持続可能なものとなるためには、成長の中で新規ユーザーの獲得から生じる割合は小さくなっていくべきです。

▼ 継続率のメトリクス = 『Dn / Mn / Wn』

プロダクトが成長するのに一番大事と言っても過言ではないのが『継続率』です。プロダクトに触れたユーザーがいかに継続してそのプロダクトを使い続けるか。仮にその割合が大きければ大きいほど愛着をもってプロダクトを利用しているとみなして成功と言えるでしょう。

継続率はコホート単位で評価されます。すなわち、任意の日、週、月に製品をインストールしたユーザーたちを追跡し、そのうち最終的にリピーターとなっている%を確認する方法です。

メトリクスのとり方としては以下です。

長期的な継続を表現する単純なやり方は、あるコホートでおよそ1年 (例えば、364日間) 後に継続した人数を複数の比で分析することです。以下の方程式の通りです。D1リテンション = D1 / D0。これはつまり、1日目で継続させたコホートの比率です。(D0はあるコホート内のインストールした人数で、D1はそのコホート内で製品を1日後もまだ使っていた人数です。) (訳注:D は Day を意味しています)

全てのコホートで「D7 / D1」が比較的一定に保たれていながらも、D1リテンションが下降を始めている場合、D1リテンションの向上を重視しましょう。なぜなら、これは長期的な継続にとって最大の手段になる可能性が非常に高いためです。同じく、D1リテンションが水平でありながら、D7 / D1が下降している場合、初日よりもむしろ初週にユーザーをエンゲージメントする新たな方法を見つけることを重視しましょう。自社の製品に最も合致するメトリクスを選びましょう。

そして、Dnリテンションメトリクスにプラスしてそれをグラフ化した『コホート曲線』の分析が重要です。これが横ばいなのかなにかしらの変化があるのかを見たほうがよいです。実際に良いプロダクトは、高い割合で横ばいになるようにするのが望ましいです。

▼ スティッキネスのメトリクス = 『DAU / MAU』

スティッキネスとは、ここでいうところのユーザーのプロダクトに対する『粘着度』です。つまり、そのプロダクトなしに生活ができないぐらいに必要とされているということです。

そんなときに使える指標として、DAUをMAUで割った数値です。

スティッキネス = DAU / MAU

たとえば、DAU / MAU率 = 0.6」とは、その製品を毎月利用している人々のうち60%が毎日利用してもいるということを意味します。

▼ エンゲージメントのメトリクス

エンゲージメントとは、ここでいうところの「絆」「繋がり」です。プロダクトの成長、特にSNSサービスなどにとってはユーザー同士の『繋がり』は重要です。

一般的なエンゲージメントを促進させるサイクルは以下です。

https://bfore.hongotechgarage.com/entry/measuring_product_health

ユーザーがコンテンツを作成し、次にそれを他者が見て満足感を得ます。そのコンテンツの消費者は賛成票、コメント、リアクションなどの形でフィードバックを返します。これにより、ユーザーはコンテンツを再び作成したいと思うようになるわけです。この「作成 / 消費ループ」がエンゲージメントを生み出します。これはユーザーのリピート頻度 (セッション数)、消費コンテンツの増加 (閲覧数)、サイト上で過ごす時間の増加によって測定できます。

そんな中、メトリクスとしては以下で述べるものが有効になってきます。

  • 『消費時間 / DAU』・・・消費時間というのはエンゲージメントを計る上で重要になってくる指標です。
  • 『セッション数』・・・その日にプロダクトをどのくらいアクセスしたかにセッション数も重要な指標です。
  • 『消費時間 / セッション数』・・・いわゆる1セッションの中でどのくらい消費時間(滞在しているか)は重要です。
  • 『利用可能な在庫』・・・例えば、Facebookでいえば新しい投稿がなければコンテンツが消費できないためこちらも在庫があることが重要です。
  • 『コンテンツ消費数(閲覧数)』・・・たとえば、『消費時間』が1時間だったとしてもそのうちどのぐらいのコンテンツを消費しているかは重要です。
  • 『コンテンツ作成数』・・・コンテンツの作成数とは、先程のFacebookの例でいればどのぐらい投稿されたかなどの指標です。
  • 『コンテンツに対するフィードバック』・・・これは『いいね!』やコメントなどのリアクションのことです。

まとめ

  • 成長の段階として以下の4つがある
  1. 初期段階 (Early Phase)
  2. 成長段階 (Growth Phase)
  3. 超成長段階 (Hyper Growth Phase)
  4. 成熟段階 (Mature Phase)
  • ▼ 市場のメトリクス = 『MAU / インストール数』
  • ▼ 成長のメトリクス = 『MAU / WAU / DAU』
  • ▼ 継続率のメトリクス = 『Dn / Mn / Wn』
  • ▼ スティッキネスのメトリクス = 『DAU / MAU』
  • ▼ エンゲージメントのメトリクス = 『消費時間 / DAU』, 『セッション数』, 『消費時間 / セッション数』,『利用可能な在庫』,『コンテンツ消費数(閲覧数)』,『コンテンツ作成数』,『コンテンツに対するフィードバック』

以上です。

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