まだこの世にない価値=「みらい」の兆しの見つけ方

Haruka “HRKS” Sakuta
idealdesignlibrary
Published in
5 min readJan 24, 2019

昨今インフォバーンでは、まだ存在しないモノ・コトを前提に、「みらい」を考える、デザインする依頼が増えています。ビジネスの先を見据えて、新しい商品やサービスを考えることは、当然あるべき姿でしょう。しかし、ターゲットが「みらい」である以上、だれが、いつ、どこで、どのように……といった、ユーザーや利用状況が想定できない部分も多いものです。

ではこのような条件下で、どのようにして「この世にない価値」=「みらい」の兆しを見つけ、デザインすればよいのでしょうか?

先にわたしたちの結論をお伝えすると、「強い仮設に基づいて『実現したいみらいの形』=『プロジェクトとして取り組むべき課題』を定義する」ことだと考えます。そのために「意志のある先進的ユーザーが描いていくみらいから、意志的に問いを見つける」ことを足がかりとしてアプローチしていくサービスを、IDL Future SEEking Program(以下FSP)としてローンチしました。

今回は、2018年12月7日(金)にアーゴデザインとHCD−Netの共催イベントでIDL・デザインディレクター・辻村がお話した内容をもとに、FSPの内容を詳しくご紹介します。

【IDL Future SEEking Programとは】

FSPは、インフォバーンと株式会社SEEDATAが共同でローンチしたサービスです。以前CHANNEL IBでとりあげたイベントでも少しご紹介しています。

FSPの大きな特徴に「強度の強い仮説を意志的に作っていくこと」があります。そのために、わたしたちはSEEDATAが所有している「トライブレポート(以下トライブ)」を活用しています。トライブは、現在の2〜3年後の当たり前を行くような先進的消費者グループと定義し、1トライブあたり3〜5名程度のサンプルから、生活パターンや、思考、行動などの傾向別に56種類に分類しています。

FSPでは、プロジェクトで取り扱う領域に応じてトライブを選定し、その視点をベースとして価値観の変化をレポートします。この「価値変化レポート」は

・現在と未来の価値観の変化のようすを説明(解説)する

・トライブレポート中から、価値観の変化に影響しそうな行動・思考を抽出し紐づける

・価値観の変化の蓋然性を裏付ける、最新事例を紹介する

以上のような要素で構成されます。このように、トライブの思考や行動を起点に発想した価値観の変化から、起こりうる未来の姿やそこに生じる問題を意志的に提起します。

そして、これらのプロセスを経て得られた「意志的に見つけた問い」を起点に、初期仮説の設定、未来洞察、仮説コンセプトデザイン、サービスデザイン、仮説検証という大きく6段階のプロセスでサービスを発想していきます。最終的には仮説として、「意志的に見つけたい問い」の強さを測るために、利便性、機能性、JOB適応性の大きく3つの観点から検証します。

なかでも「JOB適応性」=「サービスに対する価値観の変化が起こったときに、妥当性があるかどうか」について、

「長い」…しっかり耐用性があるか

「親しい」…ユーザーに慣れ親しんでもらえる余地があるか(親和性)

「新しい」…既にあるものと区別できるかどうか(弁別性)

「柔らかい」…つぶしがきくかどうか、ほかのケースで応用が効くかどうか(適用性)

「固い」…蓋然性(確からしさ)が高いかどうか

上記のような視点から「仮説としての問いの強さ」を検証します。それらをもとに、前述の6段階のプロセスを、全体的または部分的に繰り返すことで、「プロジェクトとして取り組むべき課題」を定義するというゴールに到達できると考えています。

FSPは、ここまでご紹介したとおり、まだ世の中に存在しないモノ・コトを前提とした「みらい」を発想するためのサービスです。しかし、実際にどのような場面で活用できるのか、想像できない部分もあるかもしれません。たとえば、インフォバーンにいただいた依頼では

「自動運転」をテーマにサービスを開発したい

「2050年の社会問題」を定義して、解決案を発信したい

「ウェルビーイング」をテーマに新規事業を考えたい

「人事戦略」のあるべき姿を考えたい

などが例として挙げられます。これらに共通するものは、現在あるサービスの改善や改良ではなく、「みらい」をターゲットに、新規サービス開発の糸口を見つけたい、見つけられずに困っている。そして今ある問題解決に留まらず、強度のある問題発見をしたいということではないでしょうか。

どんなときでも「みらい」を想像することは、期待に満ちているものでしょう。そんなプロジェクトをインフォバーン・IDLでお手伝いできれば幸いです。

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