What is クリエイティブディレクション ?

Creative direction should be precise yet inspiring.

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クリエイティブディレクションって何?クリエイティブディレクターってどんな仕事?

AKQAにてクリエイティブ部門のトップを務める、イナモトレイ氏のツイート

クリエイティブディレクターという役職は、元は広告やファッション業界において、制作チームの指揮や運営を担う役職として存在した。最近ではAppleや、国内ではUNIQLOの成功に象徴されるように、いわゆるデザイン、つまりクリエイティブのビジネスにおける役割の重要性がより認識されはじめ、ビジネスそのものを駆動する役職として注目を浴びている。

Soccer PlayerがSoccerをPlayするのと同じく、Creative Directorの仕事は、文字通りCreativeをDirectionすることである。とはいったものの、サッカープレイヤーの「プレイ」と比べると、この「ディレクション」はやや抽象度が高い。もう少し掘り下げてみる必要がありそうだ。そもそもディレクションとはどんな意味だろうか。辞書による定義は以下のようになっている。

di·rec·tion

: the course or path on which something is moving or pointing

動いている、または指し示している方向への「道すじ」

: a statement that tells a person what to do and how to do it : an order or instruction

なにをどうやって行うかを指令する声明や指示、インストラクション

この定義に照らし合わせると、「ディレクション」とは指示、つまり一方的な命令や締め付けを暗示する言葉に聞こえる。指示というのは一方通行なわけで、インタラクティブ(双方向)なディレクションはあり得ない。(その場合に適切な表現はインタラクティブコミュニケーションであろう。)

一方で、至極当たり前のことだが「クリエイション」とは自由な発想から生まれる創作活動だ。「締め付け」と「自由」。この一見相反する単語を掛け合わせた「クリエイティブディレクション」。

では次にこの「クリエイティブ」と「ディレクション」の関係性を紐解いていきたい。このN極とS極を持った難解な単語を、助詞というメスを使って切り開いてみる。

クリエイティブ「の」ディレクションをする。

クリエイティブ「な」ディレクションをする。

たった一文字の違いだが、この二つの意味合いは180度異なる。

クリエイティブ「の」ディクションだけ、つまり指示を出すことだけに注力し、チームから発想の自由を奪ってしまっては、そこからイノベーションは生まれない。指示通り単純に作業をこなすだけならばロボットに任せれば良い。とりわけクリエイティブと呼ばれる職種のタイプの人間と単純作業は、水と油だ。そもそもどんな仕事でも、というよりも人間の存在や営みそのものがクリエイティブである。クリエイティビティはアーティストやデザイナーの専売特許ではない。(聞いた話だが、どこかの国の刑務所では、バケツ2つで水を交互に永遠と汲み続けるという刑があるらしい。単純作業の連続はそれほど苦痛で堪え難い。)

逆の場合はどうだろうか。クリエイティブ「な」ディレクションだけに専念すると、チームは混乱してしまう。プロジェクトを開始するオリエンで、抽象的な言葉だけで指示を出されたらどうだろうか。たとえば元巨人軍の長嶋監督が上司だったことを想像してほしい。「びゅーと、ぐわぁーと、もっとばしっーといこう」なんて言われても困ってしまう。一流選手ならばそれをうまく解釈出来るのかもしれないが、一般人の僕らではなかなかそうはいかない。(あれはきっと自分がどうテレビに映っているか、ファンに見られているか、っていう自己演出ですよね。きっとカメラがいないときは違うはず。それに周りには優秀なコーチもいますしね。偉大な長嶋監督を批判している訳ではありません。でも松井選手も苦笑いしてた。)

ここでふと思い返して欲しい。自分が行っていた(もしくは受けていた)クリエイティブディレクションはどちらに当てはまっているのか。「の」派ですか、それとも「な」派ですか?

至極当然だが、クリエイティブディレクションの役割はどちらか片方に偏ったものではないはずだ。この二つをバランスよく融合したものこそが本来のクリエイティブディレクションであるし、クリエイティブディレクターの役割である。

イナモトレイさんの言葉をもう一度思い出したい。

Creative direction should be precise yet inspiring.

Precise つまり「正確な」というのはここでいう「の」にあたり、Inspiring =「インスパイアさせる、奮起させる」「な」にあたるのではないだろうか。これをたった7単語で説明している。まさに的確かつインスパイアの種が散りばめられた、洞察に富んだ言葉だ。クリエイティブディレクションとは何かを示した一文これこそ、クリエイティブディレクションの理想ではないだろうか。

本来「言葉」とは、抽象的な事象や概念の意味を、意識または伝達するたに生まれたものだ。アラスカの先住民族のイヌイットの言葉には、雪を表す表現が50種類以上あるという。つまりイヌイットの人たちはその言葉によって50種類以上の雪の違いを認識し、表現出来るのである。

言葉は時代とともに成長し流動する。新しい価値観や事象とともに、多くの新しい言葉が生み出され、逆に多くの言葉が衰退し消えて行く。生まれたばかりの言葉は時代に反映しているがゆえ、トレンディーで便利だ。インタラクティブ、ディスラプティブ、インサイト。そしてクリエイティブディレクション。

しかしながら気を付けていないと言葉はコトバとなり、自らが意味や役割を規定しはじめる。一人歩きしたコドバは、本来とは違う意味を生んでしまうのだ。この現象を僕は勝手に「言葉からコトバへの変化」と呼んでいる。

言葉は強力な武器だ。自分の発言ひとつで相手の心情や、はたまたチームの成果に大きく影響を及ぼす。コミュニケーションをフィールドとする仕事であればなおさらだ。より一層、意識的に、そして適切に言葉を理解し、運用、発言していきたい。

*Disclaimer: イナモトレイさんは僕のAKQA時代のボスであり、今でも尊敬するクリエイティブディレクターです。

サンフランシスコでデザイナーをしています。もし記事に興味を持っていただけたらフォローをしていただけると嬉しいです。

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Takashi Kawashima
四苦ハック人生 in San Francisco

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