「海老、一本一本に命をかける、お客様に安心と信頼を届けるために。」

海老一筋25年。1日に数百、数千本の海老を取り扱い、その海老を仕分ける姿には誰もが圧巻されます。

仲卸インタビュー第10弾では、築地「佃熊」の藤村欣司さんのインタビューをご紹介します。

㈱佃熊 藤村欣司さん
(株)佃熊/藤村欣司(ふじむら・きんじ)
仲卸歴25年。仲卸として働く前は一般企業に勤めるも、学生時代に経験した仲卸のアルバイトで、人と人との繋がりに魅力を感じていたため、勤めていた会社を退職し、築地の仲卸「佃熊」に入社。現在は常務を務める。

<目次>

第1章:自分の手できちんとお客様に届けたい。

第2章:海老一本一本に命をかける、お客様に安心と信頼を届けるために。

第3章:1を「0にも100に」するにも自分次第。

■第1章:自分の手できちんと届けたい。

−藤村さんが仲卸として働くことになったきっかけとは。

学生時代に一度築地で仲卸のアルバイトを経験したことがあり、そこで、人と人との繋がりの楽しさや、自分で目利きした食材がお客様から感謝されることに魅力を感じていました。

そこから当時勤めていた会社を辞め、築地の「佃熊」という仲卸に入り、今は仕入れから出荷までの作業を全て私一人で行っています。

−全ての作業を一人で行うことは大変ではないのですか。

海老は非常にデリケートな食材なので、「仕分け作業」や「箱詰め作業」に時間がかかってしまうと質がすぐに落ちてしまいます。

仕分け作業と箱詰め作業は人によって作業の仕方に違いがでるので、作業毎に担当が変わってしまうと、逐一海老の状態を確認しながら行わなくてはいけません。

デリケートな食材だからこそ、素早く作業できるよう、自分の手で最後の出荷まで見届けたいと強く思っています。

実際に佃熊にも仕分け担当と箱詰め担当はいますが、30〜40種類ある生の海老に限っては全てを私一人で見ています。

■第2章:海老、一本一本に命をかける。お客様に安心と信頼を届けるために。

−海老を取り扱う上で、重要なことはなんでしょうか。

特に重要なのが「仕分け作業」です。

お客様毎で海老の好みが違い、外見や身の質感など細かな好みに合わせて、素早く、正確に仕分けしていくことが必要になります。

私の場合、毎朝、何百・何千という海老を20グラム・25gグラム・30gグラムと「5gグラム」単位で仕分け、その後お客様の好みに合わせて更に仕分けていきます。

−水槽に入った海老を、もの凄い速さで仕分けされていましたが、どうやって選別されているのですか。

まず、水槽から掬った海老を「目」で見て、この海老は何グラムなのかを判断します。その後「グラム」分けされたカゴの中に海老を振り分けていきます。

気を付けないといけないのは、仕分け作業では「目」が重要になるので、メガネなどをかけて作業をすると、眼球とレンズの間に隙間ができ、海老の正確な大きさが判断できなくなります。

私自身、普段はメガネをかけて生活をしていますが、仕分け作業を行う際には必ずメガネを外し、人一倍神経を研ぎ澄ませて作業をしています。

−仕分け作業以外に気を付けていることはありますか。

海老を取り扱う上で、仕分け作業以外に「温度管理」が重要になります。

海老は15度を境にし、温度が高くなるにつれ、状態が悪くなっていくので箱詰めする際の温度管理には気を付けています。

最悪の場合、箱の中の温度が高くなると海老が暴れ、疲れ切って死んでしまうこともあるので、箱詰めする際には「おがくず」や「保湿材」を使い、常に箱の中を15度以下に保つようにしています。

また夏場になると、「おがくず」や「箱」自体の温度も高くなるので、箱を水で冷やしたり、おがくずを凍らせたりするなど、海老に最適な温度を常に保つようにしています。

仮に海老20本の注文が入り、20本の海老の中で、1本でも状態が良くない商品があった場合、お客様にとってそれは悪い商品になります。

そのため、お客様と信頼関係を築いていくためにも、海老1本1本きちんと管理し、最高の状態でお客様に届けたいと思っています。

■第3章:1を「0にも100に」するにも自分次第。

−取り扱っている海老の中でも特にこだわりを持っている海老はありますか。

特にこだわりを持っている海老は「アカザエビ」です。アカザエビは他の海老に比べ、特に味に甘みがあり、濃厚で品がよく、私自身、海老の中でも一番美味しいと思っています。

今ではメジャーな海老の1つとなっていますが、20年ほど前は、築地への入荷も少なく、また高価な食材だったため、取り扱う仲卸はほとんどいませんでした。

しかし、当時、海老を取り扱う他の仲卸と同じ食材を取り扱っていてはダメだと思っていた私は、お店の看板食材としてアカザエビを取り扱うことにしました。

取り扱いを始めた当初は、仕入れても中々売れず、失敗ばかりでしたが、次第にお客様に受け入られるようになり、味にこだわりを持つ飲食店のお客様に大変ご評価いただいています。

−藤村さんが今後目指す仲卸像とは。

常にお客様の立場になって考えられる仲卸になることです!

経営的なことを抜きにして考えると、今以上に間口は広げず、常にお客様と近い距離を保ちながら仲卸を続けていきたいと思っています。

お客様によっては1本単位や1グラム単位での注文もあります。築地の中には小ロットの注文は受けないという仲卸もいますが、私の場合どんな注文でもお受けするようにしています。

今もお付き合いのあるお客様の中には、最初1本の注文だったのが、今では100本の注文をいただくようにもなりました。海老1本であれど、必要としてくれるお客様がいれば、お届けし、1本の注文からどう信頼関係を築いてくかを考えることが大切だと思っています。

私はこれからもこのスタイルでより多くのお客様に自信を持って届けていきたいと思っています。

藤村さん本日はありがとうございました。

■インタビューを終えて

1日に数百~数千本もの海老を取り扱う藤村さん。インタビュー当日、現場に伺うと、ちょうど仕分け作業の最中でした。

1本1本お客様の要望に合わせ仕分ける藤村さんの姿を見ると、普段の笑顔とは裏腹に声をかけられないほど真剣な表情でした。

自信を持っている海老だからこそ、1から手をかけたいとおっしゃっていた藤村さん、普段何気なく食べている海老には、藤村さんのような仲卸がいることで、私たちは安心して常に美味しい状態のものを食べられているのだと気づきました。

今後の藤村さんの活動を応援していきたいと思います。

◎取材協力:㈱佃熊 藤村欣司さん

東京都中央区築地5–2–1 店舗番号6045~6048

聞き手・構成/吉永大祐

撮影/駒ヶ嶺亮一