「絶えず動く」、マグロの仲卸はマグロのようだった!?

daisuke_yoshinaga
いなせり(公式)
9 min readNov 17, 2016

仲卸インタビュー第3弾では、東京・築地市場で「冷凍マグロ」の仲卸を営む「大元商店」の横田繁夫さんのインタビュー模様をお届けいたします。

大元商店の3代目である横田さん。

大元の看板を背負い、マグロと向き合い続ける、その理由とは?

㈲大元商店・横田繁夫(よこた・しげお)

前職は鉄鋼系の商社マンとして仕事に従事。

現在は、東京・築地の冷凍マグロの専門店「大元商店」の代表取締役兼、東京魚市場卸協同組合の常務理事を務める横田繁夫さありません。

大元商店ではお客様のニーズに合わせ、目利きにより厳選された冷凍マグロを販売している。

■生のマグロにはない、「冷凍マグロ」の魅力とは?

- 大元商店さんは冷凍マグロの専門店なのですね。

ひとくちにマグロといっても、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロ、キハダマグロなどがあります。

その中で、うちは決まった種類の冷凍マグロを扱うのではなく、マグロの種類・大きさ・産地までお客様のご要望に合わせて仕入れています。

仕入れについては「セリ」(売り主が多くの買い手に競争で値をつけさせ、最高の値を付けた人に売る取引方法)と呼ばれる方法で行われるのが一般的です。

「セリ」は、その日上場(築地市場に集まる)されたマグロの本数と買いたい仲卸との関係により、価格等が決まりますが、もちろん上場本数が少ない場合もあり、仕入れが困難な場合もあります。

こうした上場本数が少ない場合も、「冷凍マグロ」は「生のマグロ」と比べて、温度管理をしっかり行っていれば、品質を保ったまま、長期間保存ができるので、お客様に安定して提供できるという強みがあります。

「生」と違い地味ですけど、極端に言えば、一ヶ月間仕入れなくてもお客様に提供ができます。加えて仕入れのサイクルと在庫状況を把握していると、お客様には安心してお取引していただけますし、新しいお客様へのアピールにも繋がります。

- 品質の良し悪しは、どういったことで判断されるのですか?

よく聞かれるのですが、の場合僕「五感」を使い、判断しています。

目、耳、手、舌といった感性をフルに活用していて、耳はマグロを叩いた時の跳ね返りの音で、良し悪しを判断します。舌は実際にマグロを食べ、味で判断しています。

同時に、「このマグロ買いたいな」「このマグロはあのお客様に使ってもらいたいな」なども考えたりして選んでいます。

実際にマグロ一本仕入れるのは簡単ではありません。高価なものなので、仕入れるにも度胸が必要ですし、いかにお客様のニーズに合わせ、捌ききれるかが重要なので、自分が本当に納得したマグロしか買わないことしています。

■冷蔵庫を見れば、そのお店の良し悪しが分かる!

- 冷凍マグロの仕入れ以外の作業で、気をつけていることはありましますか?

一番は「ダンベ」(冷凍マグロを保管している冷蔵庫)内の温度管理に気を使っています。

ダンベ内の温度は、一般的な冷蔵庫とは違い、マイナス50℃〜60℃が適切と言われています。しかし、無駄なものが入っていて整理がされていなかったり、開け閉めに時間をかけていると温度が一定に保たれず、マグロの品質に影響を及ぼします。

そのため、無駄なものを極力入れない、また、どこに何が入っているかは社員全員で把握しています。そうしておけば、効率的に動けますし、温度も一定に保つことができ、いつでもお客様に品質の良いマグロを提供することができます。

- 冷凍マグロは仕入れだけでなく「管理」にも気をつけているのですね。

「良いお店=冷蔵庫の管理がしっかりしている」と言ってもいいと思います。

だからこそ、自分のお店でもダンベの手入れや管理には一番気を使っています。

結果的に、いくら良いマグロを仕入れても、「管理」が不十分だと、良いパフォーマンスが出せない。

だから、僕たちだけじゃなく、お客様にも商品に合わせた管理方法・解凍方法をお伝えしています。

例えば、マグロを搬入する際、お客様のお店内の板場(調理場)に直接出入りすることを、僕は許可されているので、冷蔵庫内の状態を見て、気になることがあると、お客様にもっとこうした方がいいよ、など、話したりしていますし、逆にお客様からアドバイスをいただくこともあります。

こういったお客様とのやり取りを続けていくことは信頼関係を築いていくうえで、大切だと思っています。

僕の仕事はマグロをただ卸して終わりではありません。お客様の料理を食べにきてくれる人たちにも満足していただけるように、時には、第三者目線から、お客様とコミュニケーションを図ることも大切です思っています。

先日、ある料理人と話していたら、いくら良い商品を仕入れても、板場の環境、ホール(接客)の体制がきちんとしていないと、食べに来る人から良い評価は得られない。だから、仲卸と料理人に加え、お店のスタッフと「三位一体」になり、取り組んでいかないと駄目だと。

本当に満足いただける料理は、みんなが一つになって取り組んでいかないと提供できないと思っています。

■立ち止まらないことが、僕の生き方です!

- 仕入れ〜お客様のサポートまでやることは難しくはないですか?

立場上、仲卸としての作業を全てできるかと言われたらそうではありません。どちらかと言うとお店を回すことやお客様をサポ​​ートする役目の方に重きを置いていて、その他のことは若い衆にリーダーシップをとってもらっています。

ただ、日々の会話からマグロを仕入れる際の感覚的な話やお客様への対応方法などは教えていますし、お客様からの仕入れがあった際には、在庫があるのか​​、ないのか、どこに置いてあるのかまで、タイムリーに共有し合っています。

たから見たら、毎日同じことをしているように見えるかもしれませんが、実はマグロと一緒で、立ち止まらず、日々新しいことを見つけるために前進しています。

実際にお客様とのやり取りの中から、新しい取り組みへのヒントを探したり、作業一つ一つに対しても、より良い方法はないかなど日々考えています。

お店を回すことやお客様をサポ​​ートすることに集中できるのも、若い衆が文句も言わず、支えてくれているからだと思っています。

- サポートというお話がありましたが、具体的にどういったことをされているのですか?

お客様をサポートするうえで、なのは重要項目「お客様の立場」になってる考えてるこです。

それしかありません!

例えば、自分の立場からだと、こういう方法を使えば「マグロのロスが減ります、持ちが良くなります」ということや、同じ悩みを抱えていた、他のお客様はこういう取り組みをしています、などお伝えしています。

また、食材に関すること以外でも、自分が持っている情報を元に、お客様のお店の地域性、消費者のニーズによって、別のお客様から得た情報を加え、こうした方がいいよ、など、色々提案しています。

以前、お店を新しくオープンするお客様がいらっしゃいました。地域密着型のお店だったので、地域性を知ったほうが良いと思い、僕の知り合いに話しを繋ぎ、地元の人との交流の場用意してあげたことがあります。

本来、仲卸がそんなことまでやる必要はないのですが、僕と取引していただいているお客様には、仕入れ以外の面でもサポートしてあげたいと思っています。

今は良いものだけを売っていればいいという時代ではないですし、また、それが、うちのメリットと思ってほしいと思っています。

僕自身、人の役に立つことが一番好きなので、お客様から、納めたマグロに対し「今回良かったぞ!美味かったよ!」と言われるのも嬉しいけど、僕が紹介した人同士がうまくいってくれることもすごく嬉しいです。

■これからも前進あるのみ!

- 横田さんが考える今後の新しい活動について教えてください。

大元商店をもっと大きくしていき、

マグロを通して、食の良さを届けていくこと!

大元商店を大きくするために、若い衆がどんどんリーダーシップを取っていき、色々なお客様をサポートできるように、育てていきたいです。若い衆がもっと活気づけてくれれば、自然とお客様は集まってくれると思っています。

そして、願わくば、消費者の人達にもっと食べることにこだわりをもってほしいとも思っています。

僕らの若い頃は、今の若い世代と比べると、美味しいものを食べることが一番の幸せでした。しかし、現在は家庭で、魚を食べられることも少なくなり、反面、加工品や冷凍食品が好まれています。

しかし、一人一人が健康な体を維持していくためには、「食」をもっと大切にしていかないといけないと思っています。

そのために、大元商店をもっと大きくしていき、消費者に対し、マグロを通して、「食」の素晴らしさを提供できる環境を創っていきたいと思っています。

横田さん本日は本当にありがとうございました!

インタビューを終えて

経営者として、大元商店の帳簿作業も行い、東京魚市場卸協同組合の常務理事まで担当されている横田さん。

休む暇がないほど忙しく、インタビュー前にもお客様と話されている場面を何度か目にしました。

インタビュー後には、これからお客様と打合せだよ!とすぐに向かわれる横田さんの姿が

絶えず動く、マグロのように見えた瞬間でした······。

【今回ご紹介した横田さん厳選のマグロはこちら!!】

https://goo.gl/ZXRJ9G

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