インフラデータチャレンジ2019「道路・交通」部門の講評について

昨年度開催された「インフラデータチャレンジ2019(アーバンデータチャレンジ2019との共同開催)」は、地域課題・インフラ課題の解決に資するための重点分野(テーマ)として「道路・交通」と「生活・文化・地域アーカイブ」が設けられました。全162作品中「道路・交通」に関する26作品が提案され、最終審査には4作品がノミネートされました。

本ブログ記事では、昨年度の最終審査対象4作品と、審査員特別賞を受賞した「いきいきの輪」を含めた5作品について、「道路・交通」重点分野の審査を担当された板倉義尚さん(NEXCO東日本/土木学会土木情報学委員会インフラデータ・サービス共創研究小委員会)に、最終審査会当日にも講評いただいたコメントについてまとめていただきました。IDC2020の開催・今秋よりいよいよ募集が始まりますが、作品制作の参考になると幸いです。

【銀賞】 OTTOP Okinawa Transit & Tourism Open Data Platform

本作品は、データセットでのエントリーですが、見て頂いてわかる通り、ほぼサービスですね。審査員の声も、「既に実装されており、かつ実用性・完成度が高く、観光地だけでなくレンタカー店などの関連情報も出す点が素晴らしい。欲を言えばカテゴリを分けられると良いか。」とか「益々の発展に期待します。」という評価ではなく、完成されたサービスへの要望のようなコメントになっていました。

いくつかの作品でも地域の活性化として観光振興をターゲットにしたアイデアが多数ありました。是非OTTOPを参考にしていただくと共に、OTTOPもこれを基盤としてまちづくり、生活文化など他の分野も巻き込んで発展していってもらいたいと思います。

OTTOPの作品プレゼンの様子

【銅賞】自転車事故を無くしたいっ!Bicycle Scouter

本作品は、AIカメラを自転車のカゴに搭載し、人を検知したら運転手に注意を促すことで、自転車と人との事故を未然に防ぐことを目的としたデバイスの作品です。

まさに自動運転の衝突回避機能を自転車にも!ということで面白いですね。ほ報告では10代の事故、直線とありましたが、一方で65歳以上の自転車事故もありました。今後高齢化が進み、特に最近の自転車は電動もありますので、将来の自転車運転での事故ゼロが可能になると感じました。改めて実物を見て完成後も高かったです。

【銅賞】プライバシに配慮した人流センサシステムの開発

現在、人流データの活用が進んでいますが,その取得には個人情報を伴うケースが多くデータの取得・利用に制限が生じています。本作品は、個人情報を一切取得しない人流データ取得の原理を提案し,それを適用したセンサシステムを開発したものです。そして更に、そのデータ活用およびセンサの他用途への応用などにより地域課題解決について考察しています。

効率よくデータを取得するには、例えば携帯会社の基地局データやgoogleのタイムラインそういうものが使われていますが、やはり利用にあたっては、個人情報が課題になっています。よって、個人情報が不要で、簡便に低コストで移動できるような計測装置これは非常に役立つと思います。また、データチャレンジにデータを作る方法を提案するというのも新しい発想・チャレンジでしたね。

【銅賞】各駅昼間運行本数データ

本作品は、全国の鉄道駅の昼間時間帯(10時台~15時台)の列車運行本数データです。一言でいうとそういう事なんですが、これは非常に大きな意味を持つデータだと思っています。特に駅のサービスレベル、重要度的なものを数値化し、どれだけ利用価値があるのかを指標化しているものです。駅近でも、電車が走っていなければサービスがえられないそいう部分に着目した良いデータセットだと思います。翌年度以降、このデータを活用した更なる分析やアプリが開発されるのでは・・・そんな予感がします。

https://home.csis.u-tokyo.ac.jp/~nishizawa/station/station-honsu-data20200127.zip

【審査員特別賞】いきいきの輪

本作品は、「買い物弱者を地域のみんなで支えるITプラットフォーム。」です。

本システムでは、買い物弱者と買い物支援者を固定電話とクラウドシステムを用いてマッチングすることで運用の省力化を実現するものです。審査員の中からも、「スマホを持っている人だけでなく、そうでない人にとっての使い勝手も考えて作られている点に非常に感心した。また実証実験において実際にマッチングが行われていて、大変魅力的に思う」という評価でした。

特に、困っている課題に対し答えをだす。これはデータチャレンジの一つの目的ですが、その先に、地域のみなさんがつながって互いに助け合う、共助という社会が形成される。そいう思いが伝わる作品ということで推薦させて頂きました。

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