IDCウェビナー#1 #2開催報告【前編】

以前の下記の記事でもご紹介したように「インフラデータチャレンジ2020」は,全3回のウェビナー(第3回は11/11を予定しています)を開催する計画で,これまで2回開催しました.本レポートは,先日開催された2回のウェビナーを視聴された「法政大学デザイン工学部・都市環境デザイン工学科の有志学生」の方からお寄せい ただいた要旨と感想文を前・後編に分けて掲載したいと思います.

学生の皆さんの専門性や内容から,主に第2回のウェビナーについてまとめていただきました.本レポートをご覧になって動画を見たいという方は,下記のYouTubeアーカイブでぜひご視聴ください!

記事執筆にご協力頂いた皆さん,ご指導頂いた今井龍一先生(法政大学教授/土木学会土木情報学委員会インフラデータ・サービス共創研究小委員会・幹事)にお礼申し上げます.

「点群データを活用しよう」IDC2020ウェビナー#1
「インフラ画像&動画を大解剖」IDC2020ウェビナー#2

「静岡県伊豆東部点群データの特徴」朝日航洋株式会社・大伴真吾さん(第1回より)

「静岡県伊豆東部点群データの特徴」朝日航洋株式会社・大伴真吾さん

概要:一般的な三次元データ取得方法は直接的に取得する方法はGNSSとレーザーを用いた測量,間接的な取得方法は航空(ステレオ)やsfmが挙げられる。静岡県伊豆東部点群データの特徴として三次元データ取得方法は航空レーザ測量,MMS,デジタルカメラとLiderの2種類のセンサを積んだものでの測量が実施されている。以上の測量方法でデータ取得をしている静岡県では高密低速での点群取得が可能なレーザでの点群取得と走る車を中心に全方位で取得することが可能であるMMSを組み合わせることでお互いの機器の不足している部分を補完し合い対象部分を点群データで完全に再現することが可能となっている。またMMSや一般的なレーザ測量ではとることのできない水中はALBレーザで測量航空レーザでは取れない水域付近の海底の地形までデータをとることが可能である。

感想:山本莉子さん

まず今回のウェビナーの講演会を受けて静岡県では都市の災害対策やまちづくりに関して積極的に点群データを活用していく動きを実施していることを感じた。

実際に検討されている事例も多くあることが講演を聞いて分かったが,点群データを単純に測量としての役割だけではなく,災害時の土砂崩れが起こった際に瞬時に安全な避難ルートを選定したり,災害前後の地形データを取得することで土砂崩れの際の崩れてしまった度量の計算を簡単に実施できるようにすることができると考えた。今後地域ごとに抱えている課題が点群データを利用することで解決までのプロセスを簡略化することにつながったり,課題を直接的に解決することにつながらなくとも今まで考えていたことの可視化をすることで新たな気づきにつなげられると感じている。

しかし,ひとえに点群データといってもデータ量の課題があったり扱える人が少ない点やそもそも扱いが難しく理想的な精度を得るために時間がかかったりしてしまうといった課題が挙げられることも感じた。今回の公演を聞いて今後の課題として挙げられていた項目に向きあい,地域の課題発見,課題解決に点群データを活用しより良い都市空間を発展させていくことができるようになっていくことが重要だと考えるきっかけにすることができた。

「ICTを活用した協働のまちづくり『ちばレポ』」 千葉市市民局市民自治推進部広報広聴課・吉原睦さん

「ICTを活用した協働のまちづくり『ちばレポ』」 千葉市市民局市民自治推進部広報広聴課・吉原睦さん

概要:千葉市市民局市民自治推進部広報広聴課の吉原睦さんから、ICTを活用した協働のまちづくりとして「ちばレポ」の取り組みをご紹介いただきました。ちばレポは、道路の損傷や公園の遊具の破損といった課題を、市民と行政、市民と市民の間で簡単に共有することが可能なアプリです。道路の損傷といった課題を発見した市民は、ちばレポのアプリから位置を指定し、写真と簡単な状況説明を合わせて投稿することで、ちばレポにレポートが登録されます。行政側は、レポートに位置情報と写真が投稿されているので、場所の特定と状況の把握が容易にできるため、効率的な課題解決につながります。また、行政と市民はアプリ上で行政側の対応状況を共有できるため、行政と市民の信頼関係構築にも役立つとのことです。

感想①:難波尚樹さん

地域における課題点を,住民自身がレポートできるシステムが画期的であると感じた.また,レポート機能には4種類があるとのことで,公共施設に不具合が生じた際の「こまったレポート」だけでなく,市のおすすめスポットを募ったり,市民が自主的にごみや雑草処理をしたことを解決できる機能を設けたりすることで,単なる「意見箱」とは異なった形で,住民と自治体の繋がりを創出出来るのではないかと感じた.

市民が地域における課題をレポートしたり,市民協働によって解決したりすることで,地域のコミュニティ維持や,行政の負担減につながると講演されていたが,まさにその通りであると感じた.私自身も郊外住宅地に居住しているが,近隣住民との関わりがほとんど無くなっており,細道路や小規模の公園施設の損傷までを行政が見回っていない現状である.政令指定都市である千葉市だけでなく,郊外や,人口減少が進んでいる地方部においても,このような取り組みが広まれば,市民サービスの向上にも,自治体の人手不足対策にも良い影響をもたらすのではないかと感じた.

レポート数の内訳を見ると,公共施設の不具合に関する報告にあたる「こまったレポート」の割合が多くを占めていることに気づいた.この結果から,「ちばレポ」が住民にとって気軽に街の課題を投稿できるツールとして活用されている反面,単なる「意見箱」として捉えられている可能性があると考えられる.今後,このアプリを幅広い用途に活用させることで,更に住民の満足度が向上するのではないか,と感じられた.

感想②:岡崎智仁さん

今回ご紹介いただいたちばレポの仕組みを活用することで、市民からあがってきた課題や要望を行政は容易に把握することができ、迅速な対応によって市民に向けた行政サービスの質の向上に繋がり、市民の行政に対する不満の軽減や市民生活の質の向上に寄与できると感じました。また、市民側もちばレポを使うことで、行政に対する要望や提案を容易に行うことができるシステムとなっているため、行政サービスに市民が参画するハードルが下がり、今まで行政に対して要望をあげていなかった市民が課題を発信できるようになる点が画期的であると感じました。

一方で、ちばレポに投稿されたレポートは、公共施設の不具合などをレポートする「こまったレポート」に比べて、市民協働による解決活動をレポートする「サポーター活動」や、市民が発見した地域課題を自主的に解決したことをレポートする「かいけつレポート」が少ないと感じました。そのため、ちばレポを通して市民が行政に課題を投げかけるだけでなく、市民が主体的に地域課題を解決し、レポートする仕組みがあることをより周知していく必要があると感じました。

ちばレポによって、市民と行政との間に新たな繋がりが生まれるだけでなく、行政側の維持管理コストの削減にも繋がるため、非常に効率的で素晴らしいシステムであると感じました。

「工事現場と建設機械の動画で工事進捗を管理(施工自動化に向けた研究開発等)」 国土交通省国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター・ 社会資本施工高度化研究室 兼任 社会資本システム研究室・大槻崇さん

「工事現場と建設機械の動画で工事進捗を管理(施工自動化に向けた研究開発等)」 国土交通省国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター・ 社会資本施工高度化研究室 兼任 社会資本システム研究室・大槻崇さん

概要:建設現場における生産性の向上や,魅力ある建設現場を目指すための「i-construction」の取り組みの実例を紹介したウェビナーである.国土交通省では現在までに約一万件の工事を実施し,そのうちの約2千件はICTを活用したものにすると公示されている.実施率も年々増加しており,ICT施工への期待の高まりを感じられる.今後,国土交通省では自動化施工を目指すためにICT建機を現場で多く使ってもらい,学習データを収集する方針である.学習データとして考えているのは,ICT建機等の移動履歴データやドローンなどによる計測点群データである.課題として,ICT建機の普及率がかなり低く,このような学習データの収集が思うように進まない点である.したがって,当面は現場の俯瞰画像から施工現場の様子を学習データとして活用していく方針である.

感想:安藤祐輝さん

私は情報土木の分野に興味があり,研究では物体検出手法の一つであるYOLOを用いた人物流動解析を調査しております.そのため,大槻さんのご発表はとても興味深く,新たな知見も多くあり勉強になりました.ありがとうございました.

学習データの作成においては,学習させる画像は多ければ多いほど良いと思いますが,撮影条件のばらつきが大きいと検出精度に影響が出てしまうと考えられます.学習データを作成する際に汎用性の高い画像で構成される「汎用データ」と現場特有の条件を含んでいる「専門データ」をどのような割合で盛り込むかという観点が重要であると私は思っております.また,重機同士のオクルージョンによる検出精度低下はアノテーションの付け方に大きく左右されるのではないかと考えております.油圧ショベル,ダンプトラック,ブルドーザーそれぞれの特徴的な部分のみをアノテーションすることによってオクルージョンを減らすことができるのではないかと思いました.

i-constructionの取り組みは,建設業界が10,20年後により魅力的かつ,国を支え続ける業界となるための大きな一歩目であると私は思います.近年,働き方改革による長時間労働改善や作業の効率化が進められ,特に,若者はライフワークバランスを重視する傾向にあります.また,中長期的な担い手の確保は,高齢化する現場を改善するために進める必要があります.作業の効率化を図るべく,最新のICT技術の導入を進め,情報と土木を融合させていくことは,若い人材を確保し建設業界がさらに発展していくために重要なカギであると思いました.

後編に続く

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