イノラボ
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4 min readJun 21, 2016

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第4回: イノベーションはチームで起こすもの

■いまの日本ではUberをつくれない

— — これまで森田さんが考えるイノベーションについて話を聞いてきましたが、最後に、イノベーションを、ここ日本で起こすにはどうすればいいのか、というところを教えてください。

森田(以下、M) いまの日本では新しい技術をつくっても、実装までできている人がいないと思うんです。たとえば、チームラボの猪子(寿之)さんは新しいことをやっているイメージがあるかもしれないけれど、Uberをつくっているわけじゃない。

Uberのようなサービスをつくるとしたら、「チーム」が必要です。ウーバー・テクノロジーズ社はチームの半分以上がリーガル(法務)なんです。なぜなら、訴えられても打ち返せるだけのビジネスモデルが必要だから。もちろん、創業者の力もあるけれど、Uberのビジネスのコアはリーガルなんです。だから、実装できている。僕は、実装までできて初めてイノベーションだと考えている。そういう意味で、イノベーションはチームじゃないと起こせません。

— — 日本人は協調性があってチームで動くことが得意なイメージがありますが。

M 僕は、日本人は「みんなで一緒にやる」というのが、実は苦手なんじゃないかと思ってるんです。最近、三菱重工が豪華客船の製造で大赤字を出したことが話題になりました。Wi-Fi完備といった今時当たり前の要望に戸惑ったり、外国人も含めた大勢の作業員をコントロールできなかったりで、納期が2年もズレこんでしまったわけですが、これは日本の企業を象徴しているように思うんです。チームワークが得意なようで、チームとして変化に対応できないでいる。

なぜ日本はロケットが飛ばせないのか、というのも同じことなんです。テクノロジーがあって、一人ひとりの技術者は優秀なのに、できない。日本人はルーチンワークをチームでやるのは得意だけど、高い目標に向かってチームで実現していくことは、実は不得意なのかもしれません。

— — では、今後日本でイノベーションを起こすのに必要なのはチーム力?

M そうですね。それはつまり、実装力でもある。日本のいろんな大学や企業で新しいプロトタイプをつくっているのを見せてもらうんですが、実装力がないところが多いんです。

たとえばスタンフォード大学なんかだと、落合(陽一)さんのような人のまわりには必ずスペシャル・チームが結成されているんです。ベンチャー・キャピタルなどが、ちゃんといろんなところから最高の人材を引っ張ってきて、プロトタイプの段階の先の、「どうやって売るのか」というところまで徹底的に考えている。日本との大きな違いを感じます。

■天才の発想力を世の中に実装したい

— — 天才はいるけれど、ちゃんと活用できていない?

M 日本が天才を活用できない理由として「組織」があります。会社や研究所のような組織に所属しないような天才とゆるくつながる仕組みがあまりないんです。イノラボはそんな現状を変えようと、「コラボレーション・パートナーズ」という枠を設けて、暦本(純一)さんや落合(陽一)さんなどを外部パネルとして活用する仕組みをつくっています。

彼らのような天才たちのモチべーションを、イノラボがチームとして、かたちに変えていけたらと思っています。そろそろ、イノベーションに振り回される側じゃなくて、起こす側になりたいですよね。日本企業が世界を振り回す日は、そう遠くないと信じています。

第1回:“消えてなくならないイノベーション”に必要なもの

第2回:シンギュラリティ時代のイノベーション

第3回:未来で最後に残る人間性はモチべーション

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電通国際情報サービス(ISID)の研究開発組織、オープンイノベーションラボ(イノラボ) です。普段は最新のテクノロジーを使ってプロトタイプを作ったりしてるよ。三度の飯よりイノベーションだよ。