僕が15年前に面接で話した「リクルートを3兆円の売上にする方法」に見る、現在のインターネットの潮流

Kenji Sudo
Internet strategy 2 (tentative)
6 min readJan 5, 2016

もう15年前になっちゃうのが、恐ろしいんだけど一応氷河期と言われる時代に就職活動をした。

で、僕がリクルートの面接で何を言ったか?というところからスタートしたい。

当時のリクルート単体の売上は3000億円くらいだった。

「リクルートを3兆円の売上にしたいと思ってる」

と僕は話した。

当然、どうやって10倍にするのか?が大事なわけなんだけど、学生ながらなかなか良い事を言っていた。(と自分で言うと価値ないけど)

「リクルートは、今やってる事業をメディアだと思ってるけど、僕は3つの事をやるべきだと思ってる。一つ目は、決済。二つ目は、マイクロクライアントの獲得。三つ目は個人情報の売買。それぞれ1兆円ずつくらい売上上げられるはずだ。」

とのたまわっていた。

これが、僕が今のインターネットの面白さに繋がってるわけなんだけど、少しずつこのことについて説明したいと思う。

1:決済の重要性

当時のリクルートは、じゃらんで宿の紹介とかしてるのになぜか予約の際に決済をカードでできなかった。ホットペッパーも同じ。意味がわからなかった。

免許の問題だとか、あとで色々説明されたんだけどやっぱりよくわからなかった。

絶対に決済を抑えるべきだと思った。特に少額決済。そこから住宅とか結婚とか高額な事もやってるんだから、ローンとかそういう金融事業まで広げていくべきだと思っていた。

なぜ、そう思っていたかは、今Fin Techが面白いと思ってることに繋がる。

今僕らはお金を媒介として物をやり取りしてるけど、これは歴史から見ると最近のことに過ぎない。

いろんな本に書かれているから詳しくは、それを読んでほしいけど、通貨は進化の過程で取引履歴を切り離すことに成功した。ただ、情報ビジネスをやっている立場からすれば、最も面白いのはこの取引履歴の方だった。

誰が、どこにお金をいくら支払い、何を買ったか?

この情報は、とてつもなく面白い。ホテルに家族と行くけど、同一人物が彼女と旅館に行く。それぞれ文脈が違うし、そこから派生して考えられる消費も全然違う。

決済自体は、大変地味な事業だけど、このやり取りの履歴が宝の山なのだ。

今話題になってるFin Techも僕の観点は、この履歴をどうマネタイズするか?という別のゲームに見えるのだ。

これまで、銀行の与信能力では与信できない人にお金を貸し出せるようになるかもしれないし、これまでクレジットカードの料率が高い小規模小売店に利率を安く提供できるかもしれないし、保険料率をリーズナブルにできるかもしれないし、精度の高い広告が打てるかもしれない。

通貨の進化の過程で、切り離してきた取引履歴そのものに焦点が当てられ、それをどうマネタイズするか?という競争だと僕自身は見ている。

今までは、コストの関係で十羽一絡げで審査したり、利率を定めていたものが、細かく精度高く実現できる。このことが、イノベーティブなのだと思っている。

話を元に戻すと、この決済を真面目にやることで別のマネタイズが沢山見えてくるのだ。それを情報ビジネスの観点で、やらない方がおかしい。

それが、15年前の僕が素直に思っていたことだった。今ポイントとかやってるけど、それもいいんだけど、本流は決済だったんじゃないかなと今も思ってる。

2:マイクロクライアントの台頭

15年前のリクルートの広告商品で最も安かったのは、フロムエーか住宅情報賃貸版だったかで10万円くらいだったと思う。(この辺はうろ覚え)

でも、普通に考えたら高いなと思った。

町の花屋さんとか、魚屋さんでも出せるくらいの広告があるべきだと思った。3000円とかなんなら数百円から出せてもいい。

それくらいになると、取引できる顧客数の桁が増える。20万社くらいの取引先が10倍にできそうだなと考えていた。

でも、もっと大きいのはそこまで単価が下がると個人でも取引できるかもしれないと思った。

昔、「じゃマール」という個人間取引の紙メディアがあって、超絶面白かった。それはインターネットの時代にこそあるべきだと思った。

マイクロクライアントというのは、究極いうと個人になる。

今流行しているCtoCとかシェアリングエコノミーというのは、すべてこのマイクロクライアントを相手にしたビジネスである。

個人間の物々交換やサービス提供を簡単に実現できるのがインターネットだと思っていた。

で、究極に言えば企業と取引よりも個人と取引する金額の方が伸びていくのではないかと思っていた。企業も分解していけばマイクロクライアントになる。このマイクロクライアントが台頭してくるということが今まさに起きている変化なんじゃないかと思っている。

さらに言えば、IoT、ドローン、自動運転車というのは全てロボットと認識すべきで、AIはそこに乗っかる技術だと考えると、それらは全てマイクロクライアントになる可能性がある。

将来我々は、ロボットと取引してるかもしれない。

まあ、そうならない方がおかしいかなとすら思いはじめている。

3:個人情報を積極的に売れ!

これは、さすがのリクルートでも眉をひそめられた。

リクナビという圧倒的な通過率を誇るメディアを持っていたから、この会員情報をレバレッジすべきだと思った。ただ、その意見は若者の幼稚な主張という受け止められ方をしたし、事実そうだった。

その後の個人情報保護法など一連のプライバシーにまつわる問題でどんどんこれは難しくなっているかのように見える。

ただ、ターゲティング広告、レコメンデーション、パーソナライズ、ジオターゲティング広告など標準化された広告技術

マーケティングオートメーション、DMPなどの名寄せのテクノロジー

それだけじゃなくソーシャルメディア、音楽やマンガや映像などのコンテンツ配信サービス、アプリマーケット、UberやAirBnBなどのシェアリングサービス、先述のFin Techなど最近のインターネットビジネスは全て個人情報を違う形でマネタイズに利用してると考えた方が自然だ。

個人情報を、そのまま販売すると問題だけど、別の形でマネタイズするということが最近の主流だし、この後もそんなに変わらないんだろうなと思っている。

Health Techなど、センサー系の技術も個人情報と紐付けて別の形でマネタイズするというビジネスであると捉えた方が正しい理解じゃないかなと個人的には思っている。

「個人」へのパワーシフト

ということで、リクルートに入社して10年間僕は、上記3つのテーマについて折に触れて考えを深めてきた。

それらの全ては、何を示唆しているか?というと「個人」へのパワーシフトが起きているということだと思う。

いろんなところで言われてるので、今改めて言う必要ないかもしれないけど、決済も、マイクロクライアントも、個人情報も全てが「個人」のパワーシフトを象徴している。

それを理解の念頭に置くことで、未来が考えやすくなると考えている。

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