マーケティングはプレイスが全て

Kenji Sudo
Internet strategy 2 (tentative)
5 min readJan 5, 2016

--

僕は出来が良い学生とは言えなかったのでマーケティングについて覚えてる事といえば4Pがあるんだよということだけだった。
Product、Price、Place、Promotion

社会に出て、リクルートで学んだ事はその中でもビジネスインパクトが大きいのが実はプレイス戦略だということ。

流通というのが、最も希少性が高いというか面積が限られてるものなのだ。
例えば、コンビニの棚というのは敷地面積にしてみると全然大したことないけど、メーカーにとってみれば一等地だ。
買えるものであれば、買い占めたいくらいに。

デパートの目抜きエリアも一等地。
ポータルのトップも一等地。
Facebookのウォールも新しい一等地。

要は、人のアイボールが集まる所は全て一等地となる。
当然アイボールというのは、ターゲット人口:heavy_multiplication_x:活動時間によって総計の時間が計算できるから、有限だ。

なおかつ、それを集める一等地は限られている。
良く言われる販促費のマーケットというのは、誤解を恐れずにいえば買い占めるための実弾に近いお金と言える。

ここを独占出来れば、最も強いビジネス上の城壁となるし、良く言われるマーケットシェアというのもここで決まる。
そして、最も計算しやすく、強固なプレイスから上がる超過利益も莫大である。

世間では、マーケティングというとプロモーションとかブランドとかプロダクトが注目されるんだけど、強いビジネスは全て徹底的に考え抜かれたプレイス戦略の上に構築されている。

別にこれは、リアルに限ったことじゃなくてネットもITも同じだと思う。

OSというデバイスの入り口を抑えるプレイス戦争
ブラウザというOSにできた新しい入り口を抑えるプレイス戦争
ポータルというブラウザの入り口を抑えるプレイス戦争
検索というポータルの入り口を抑えるプレイス戦争

動画も
アプリも
メッセージングも
全部新しいプレイス戦争で出来たプレイスなんです。

それに対して
SEOだの
ASOだの
バイラルだのの流通戦略があるだけで

いつだってそのビジネスが抑えるべき一等地を奪取することが極めて重要で、そのために
ブランドや
プロダクトや
プロモーションや
プライスや
なんなら会社の組織や
ケーパビリティーも
人事制度も
財務戦略も
全てがしたがうものだと思ってる。

要は、自分たちのビジネスにとって何が203高地なのかを考えることとその奪取方法を考えることが経営戦略の最も重要なパートだと思っている。

僕自身は、リクルートのマーケティング局でとても面白い経験をした。
普通の会社では、プロダクトとプライスとプレイスとプロモーションは別の部門で別の担当者が決めている事が多い。

ただ、僕が担当していた市販の情報誌は、中身こそ編集長がつくるけど、表紙からタイトル、価格や流通、プロモーションまで広範囲に携わることが出来た。

販売して、カスタマーの手に届けるための全てをハンドル出来たのだ。面白くないわけがない。

そこで、出版不況と言われながらも、同じ予算で販売部数を毎年30%伸ばしていた。担当する雑誌30誌くらいのほとんど全てで、それを実現した。しかも2年連続で。

マーケティング予算は増やしていない。
ただ前年を踏襲した予算の置き方はしなかった。
僕がやった事はシンプルだった。

・毎月毎号ただ出稿していた新聞や中吊りを、朝日と読売のラテ欄下(要はTVの番組欄の下、これだけ新聞読まれない時代でもTV番組欄だけは主婦層を中心にかなり見られてる)に振り返る
・ただ高いので隔月で、しかも朝読を交互に入れた
・ラテ欄は、そもそも一見さんでは買えないという敷居が高い枠だったけど、年間できちんと安定出稿すると約束して風穴をあける
・ラテ欄が入らない号は付録を付ける
・当時は付録を付けてる雑誌なんてほとんどなかったので、棚が取れるし、新聞出稿で売れた号の次号予告に必ず付録の告知をして引っ張る
・紙を値段が安く束厚が厚いものに変えてボリューム感を出す
・下げたコストから雑誌の販売価格を下げて、その分流通や小売に落ちるマージンが減らないように販売奨励金で戻す

などを丁寧に少しずつやった。
一気には出来ないけど、一つの雑誌で成功事例をつくって、それを横展開していった。

月刊誌だけじゃない、週刊誌もムックも同じ予算で販売部数を伸ばした。
販売収入は落ちたが、コスト削減で賄い、部数を伸ばして広告収入を増やした。

印刷にかかる費用、配送費用、流通マージン、小売マージン、広告宣伝費用、販促費用、3年間で大体60億くらいのお金の使い道を少しずつ変えながら、プレイスをいかに抑えるか?に頭とお金を使ってきた。

それらの戦略の全ては、良い棚を長く確保するために実施した。それで、言うなればそれだけで右肩下がりの部数の時代に2年連続で30%部数を伸ばすことが出来た。

ピーターティールも言っている。
「縦に独占せよ」と

僕は、「あなたの顧客接点における一等地を独占せよ」がどんなビジネスにおいても正しいと思ってる。

問題は、今の時代はその一等地が動き続けるってことで、これが厄介なんだけども。

--

--