お弁当に込めた日本人ならではの食文化

コミュニケーション・ディレクター江口が勧める今週の一冊

inVisible
inVisible Tokyo
3 min readAug 27, 2017

--

インビジブルでは「健康」をテーマにさまざまなプロジェクトを進めています。そうしたなかで、「健康」と関わるテーマとして「食」があります。各地のアートプロジェクトでも、その土地の風土や風習によって育まれたさまざまな食文化をテーマにした作品も多いです。

そんな食文化のなかにおいて日本独特の文化が、遠足や運動会、お花見で欠かせないお弁当です。古くは、昔話で登場する農作業のために持参させるおにぎりから始まり、学校に子どもたちに持参させるお弁当まで、時代を超えて私たちの日常のなかに当たり前のものとして存在しています。小さな箱の中に主食や野菜をバランスよく詰め込んだり、見た目の美しさにもこだわったり。握らないおにぎりの「おにぎらず」が持つ効率性など使う人の利用シーンや食べる状況によってお弁当のあり方もさまざまです。近年では、キャラ弁やそれらを彩るツールが登場したり、海外では「BENTO」という言葉とともに日本文化の一つとして世界に広がりを見せたりしています。

お弁当をつくるということは、つくり手と食べる人がいることになります。フタを開けた人がお弁当の中に驚き、喜び食べる。そして空になったお弁当をつくり手が受け取ることによって生まれる「ごちそうさま」というメッセージ。そこにある小さなコミュニケーションの愛おしさがあると著者の加藤さんはいいます。

つくる過程において、日々忙しいなかでも小さな工夫を生み出そうとする創造力や、ありものの食材を使った臨機応変さ(書籍内では編集力と表現)、箱そのものが移動することによる移動性のあり方、私たちの日常にある交通手段の発達や社会情勢の変化とリンクするお弁当という存在自体の変化など、日本人の価値観とこれまでの社会の縮図が詰まったお弁当の奥深さを感じることができる社会論、文化論として読むことができる一冊です。

本を読んだあとは、かつて作ってもらったお弁当に思いを馳せたり、いま子どもたちに作っているお弁当に対するあり方を違った視点で見ることができたりと、お弁当に対する考え方ががらっと変わるかもしれません。

inVisibleメンバーとともに

NPO法人インビジブルは、アートを軸にしたクリエイティブプレイスとして「invisible to visible(見えないものを可視化する)」をコンセプトに活動を展開しています。よりよいアイデアや行動を生み出すために、inVisibleメンバーとともにアートと社会の関係について考えていきます。詳細は以下よりご覧ください。

--

--

inVisible
inVisible Tokyo

invisible to visibleをコンセプトに活動するクリエイティブプレイス