Zendesk主催「Customer Experience Tokyo 2018」セミナー参加レポート
2018年10月11日 (木)、Zendesk主催のセミナー「Customer Experience Tokyo 2018」に参加しました。
今回は、オープニングと基調講演の参加レポートを共有いたします。
※Blog掲載に関しまして、主催のZendesk様に許可をいただいております。
その前に、当日のプログラムをご紹介。
プログラム
- オープニング
(株式会社Zendesk 社長 藤本 寛 氏) - 基調講演:JapanTaxiが挑戦する、新しい顧客体験の提供
(JapanTaxi株式会社 代表取締役社長 川鍋 一朗氏) - Stop distracting your customers
(Adrian McDermott, President of Products, Zendesk) - コーヒーブレーク
- 超アナログ業界におけるZendesk Chat活用
( 野原ホールディングス株式会社WEBカンパニー CSチーム リーダー篠原 明子氏) - パネルディスカッション
「Zendesk導入企業に聞く!今の時代に求められるカスタマーサービスのあり方」
JapanTaxi株式会社 カスタマー・エクスペリエンス部 マネージャー 手島 健志氏
野原ホールディングス株式会社 篠原 明子氏
Pioneer DJ株式会社 マーケティング統括グループ CRMグループ マネージャー 西川 正紀氏
株式会社Zendesk 社長 藤本 寛 氏(モデレーター)
オープニング
まず始めに、Zendesk日本法人の社長である藤本氏から、オープニングでご挨拶がありました。
2018年、Zendeskの国内導入数は2000社を突破
Zendesk日本法人が設立されておよそ5年。これまでは主にスタートアップビジネスで活用されてきたZendeskですが、 現在は大手企業のデジタル化での導入実績が目立つようになってきた印象です。
Zendeskは日本国内では2000社の導入実績があり、昨年の1250社からこの1年間で導入企業数が急増しているようです。
この流れを促進していく背景としては、オムニチャネル(実店舗とECサイトの情報管理システムを統一することで顧客をフォローし、機会損失を防ぐための販売戦略)の流れがあります。
顧客とのコミュニケーションの手段は「電話」だけではありません。
現在では、メール、スマホアプリ、チャットとチャネルが更に増加しています。
次のプログラムのJapanTaxiのユーザー事例を実際に紹介してもらうことで、より身近に感じる事ができました。
基調講演:JapanTaxiが挑戦する、新しい顧客体験の提供
日本交通における三つの変革
川鍋氏は、JapanTaxi株式会社 代表取締役、そして家業の日本交通株式会社代表取締役会長など複数の肩書きを持たれている方です。
2000年に家業である日本交通に入社。しかし、入社した時点で1900億円の赤字があることが分かり、試行錯誤しながらも会社を立て直したことで話題になりました。
その経験を元に、タクシー業界には三度の変革があったと説明。この変革こそが、新しい顧客体験の提供に繋がったようです。
(1) Suica決済機能の導入
今では、都内では当たり前になっている「電子マネーSuicaの決済機能」。これを日本で初めて導入したのは日本交通。すぐに支払いができ利便性が格段に向上したことで、顧客に喜ばれたようですね。
(2) スマホアプリの開発
全国タクシー(現:JapanTaxi)アプリを開発したことによって、Android・iOSにアプリを入れて、アプリ内でタクシーを呼んだり、事前に登録しておいたクレジットカード情報でタクシー料金の支払いができるようになったようです。
タクシーの配車については、既に70%以上がアプリで依頼があるそうです。既に、アプリ配車はスタンダードになっている事実を知り、時代の流れに正直驚きました。
(3) ウォレットの導入
最後に、第三の変革としては、「JapanTaxi Wallet」の導入です。
タクシーの後部座席に搭載されているタブレットでQRコードを読み取り、乗車中に料金の支払い決済ができるから、ユーザービリティが格段に向上したようです。
また、WeChat Pay (微信支付)、 Origami Pay、Alipayなどにも対応しているため、外国人観光客の利便性も格段に上がったようです。
日本人だけではなく、母国語が日本語ではない顧客がウォレットやアプリを利用することによって、日本語を話さなくてもタクシーを呼べたり、支払いも容易にできることは、日本での体験が、より豊かなものになることに繋がります。
JapanTaxi はエンジニアが6割在籍
決済機能付き広告タブレットについても紹介がありました。
Suicaなどの交通系電子マネーやクレジットカードなどでも決済可能で、お支払い方法は顧客自ら選択する時代になりました。
このようなタブレットの開発は、開発要件が非常に高いです。試作品ではなく、実際にタクシーに搭載させる端末は、当然ですが耐久性の要件もありますので、ハード専門のエンジニアが必要です。そのため、JapanTaxi では、エンジニアが全体の6割ほど在籍しているとのこと。ソフトウェアエンジニア・ハードウェアエンジニアどちらも必要で、もの作りを自社でスピーディーに進めているそうです。
ソフトウェアの開発だけではなく、端末のハード部分にも自社で力を入れることで、顧客の求めているものを世に送り出すことができますね。
タクシー業界のIT化による変革
このように、IT化によってタクシー業界も著しく仕組みが変わってきたようです。
タクシー運転手の担当エリアについても、「タクシーの運転手の長年の経験と勘」を頼りにしていた部分が大きく、運転手の成果にバラつきが出ていたところがあったようですが、IT化によりGPSでタクシーの位置を管理できるようになり、統計学を取り入れた顧客の需要位置が分かるようにより、必要なタクシーの台数で効率よく対応できるように変わってきたようです。
また、需要位置だけでは無く、顧客が入れたスマホアプリでタクシーを呼び出してもらうことにより、スマホの位置情報でお客さんの場所がわかり、顧客ニーズとのマッチングが容易になったようです。
顧客に選んでもらうためには
ただ、そのようにIT化で顧客が待っていそうな場所を予測することができたとしても、もっと大事なことがあると川鍋氏は言いました。
川鍋氏「タクシーは拾うから選ぶ時代へ。向かってきた1台目に手を上げるのでは無く、顧客から意図的に選んでもらいたい。」
この言葉が心に響きました。
お客さまに「選ばれる」ことは同業他社との差異化をしていかないと達成できないことですから、常々意識しないといけないですね。
顧客自らタクシーを選び、支払い方法もより簡単になることで、カスタマーエクスペリエンスの乗車体験が向上するのだと思われます。
コールセンターの置き換え
日本交通のコールセンターは昭和30年代から導入していて、会話の録音機能などを搭載していたそうです。ただ、かなり重いサービスで、少し変更するだけでもコストがウン千万円・・・そんな時代だったようです。
ZendeskからExcel管理にはもう戻れない
従来のコールセンターを、Zendeskに置き換え。
Zendeskはエージェント(契約ユーザー数)あたりの課金体系ですが、後戻りできないぐらいに便利になったそうです。
もちろんエージェント数による課金のためコストがかかります。しかし、結果的に効率化されたとお話しされていました。確かに、ZendeskからExcel管理には戻れないだろうと思います。
全社員で課題を意識すること
また、JapanTaxiでは、ZendeskとSlackとの連携をして、お客さまのお問い合わせを川鍋氏を含めた全メンバーが把握することによって、 課題にいちはやく気付き、即座に改善できるようにしているようです。
これがもし、サポート部隊からの定期報告のみだったら、小さな問題に気付かない可能性がありますが、Slackと連携して敢えて社内でオープンにする事によって、問題解決のスピードを速めているようです。
「カスタマーエクスペリエンス向上」は遅れるほど勿体無い
インバウンドにはGoogle Maps連携が最適
JapanTaxiでは他社と多数の連携を積極的に行っているようです。
例えば、外国人観光客の皆さんが、わざわざJapanTaxiのアプリをダウンロードすること無く、Google Maps 内で連携することによって、アプリ内でタクシーが呼べるようになっています。
ちなみに、Google Maps の国内ダウンロード数の3分の1は、京都エリアとのこと!インバウンドの京都人気がすごいですね。
カカオタクシーとの相互連携
例えば、韓国は「カカオタクシー」については自国内で制覇しているシェア状況なので、日本では2017年12月からカカオタクシーのアプリからJapanTaxiと相互連携しているようです。
その国内において、シェア数として勝つことが全てではなく、相互連携の方法などで協業を図ることも戦略の一つなのだと感じました。
AIアシスタントの活用
JapanTaxiはAmazon Echo(Alexa)、LINE Clova、などのAIアシスタントと連携が取れます。
音声にてタクシーを呼べた方が助かる状況(身体が動かないなど)で、これまでできなかったことが、できるようになりますね。
「カスタマーエクスペリエンス向上は、遅れれば遅れるほど勿体無い」
その川鍋氏の言葉は、とても心に響きました。
心地よい顧客体験が遅れたら、それは顧客に満足してもらえる機会も逃し、顧客から選んでもらえるチャンスも逃してしまいます。
タクシーの未来
現在、日本交通のタクシーは4500台。その台数で都内の主要道路をほぼ全てカバーし、これを利用して社会に対してフィードバックする仕組みを作りたいと川鍋氏は語りました。
例えばタクシーに搭載されているドライブレコーダーを解析し、ガソリンスタンドの値段表示がされている画像をディープラーニングで学習し、その傾向を調査するなど、地域貢献できるような仕組み作りについても紹介されました。
人口減少とコラボレイティブ・モビリティの可能性
最後に、「未来のタクシーの姿」について紹介がありました。
あくまでも構想段階かと思いますが、自動運転、コンビニ、乗り合い、IoTスマートタグのWi-Fi基地局で子どもの見守り・迷子の発見、宅配物の移動などをタクシーが一挙に引き受ける、地域に根付いたタクシーの温かいイメージ。日本は人口が自然減になっていくことが出生数でもわかっておりますから、地域密着型の「助け合い」の未来が、現実のものとなりそうだと思いました。同時に、私たちも現時点で課題として意識しておく必要があるかと感じました。
気付きが多く、学びも多かった基調講演になりました。
次回、後半を掲載予定です。