“あなたたちは私の憎しみを得ることはできない”

アントワンヌ・レリス

「金曜の夜、あなたたちは私にとってかけがえのない存在であり、人生の最愛の人である、私の息子の母親の命を奪ったが、あなたたちは私の憎しみを得ることはできない。あなたたちが誰なのかは知らないし、知りたくもないが、あなたちの魂が死んでいることはわかる。あなたたちが盲信的にその名の下に殺戮を行っている神が、人間をその姿に似せて作ったのだとしたら、私の妻の体の中の銃弾のひとつひとつが彼の心の傷となるだろう。

だから、私はあなたたちに憎しみという贈り物をしない。もっともあなたたちはそのことを望んだのだろうが、憎しみに対して怒りで応えることは、今のあなたたちを作り上げた無知に屈することを意味する。あなたたちは私が恐怖におののき、同じ街に住む人々に疑いの目を向け、安全のために自由を差し出すことを望んでいるのだろう。あなたたちの負けだ。何度やっても同じだ。

私は今朝、彼女に会った。ようやく、何日も幾夜も待った後に。彼女はその金曜の夜に家を出た時と同じように美しかった。12年以上も前に狂うように恋に落ちた時と同じように美しかった。もちろん、私は悲しみに打ちひしがれている。あなたたちのこの小さな勝利は認めるが、それも長くは続かない。彼女はこれからも毎日私たちと一緒にいるし、私たちはあなたたちが永遠に入ることのできない自由な魂の楽園で再会するだろう。

私と息子はたった二人になったが、それでも世界の全ての軍隊よりも強い。それに私はこれ以上、あなたたちに費やす時間はない。そろそろ昼寝から起きてくるメルヴィルのところに行かないといけない。彼はまだ17ヶ月で、これからいつものようにおやつを食べて、いつものように一緒に遊びに行く。この小さな男の子はこれからの一生の間、自らが幸せで自由でいることによって、あなたたちに立ち向かうだろう。なぜなら、そう、あなたたちは彼の憎しみを得ることもできないからだ。」

Post Original : Antoine Leiris, “Vous n’aurez pas ma haine”, 2015/11/16 21:18, https://www.facebook.com/antoine.leiris/posts/10154457849999947

Traduit en japonais par Dominick Chen

* 11月19日(木)23:30 放送のNHK NEWSWEBでこの手紙と下記のレリスさんのインタビュー映像を紹介します。


En tant que français aillant vécu à Paris pendant ma jeunesse, et moi même étant père d’une petite fille, j’ai été profondément ému et, de plus, énormément encouragé par la puissance de ce court texte écrit par Antoine Leiris qui a perdu sa femme aimée lors de l’attentat du vendredi dernier; il contient, à ma croyance, un grain d’espoir pour toute société dite démocratique d’aujourd’hui. C’est pourquoi je l’ai traduit en japonais pour mes amis au Japon.

パリに若い時分住んでいたフランス人として、そして僕自身も小さな女の子の父親として、先週金曜の夜の惨劇で奥さんを亡くされたレリスさんによるこの短いテキストの力に深く感動し、そしてそれ以上に、とても勇気づけられました。ここには民主主義的と呼ばれる全ての現代社会にとっての希望の種があるように感じます。日本の友人たちにも読んでもらいたく、日本語に翻訳しました。


追記

France5 “C à vous” interview,“Vous n’aurez pas ma haine” 17/11/2015

一部抜粋訳

インタビュアー:あなたの中に本当に憎しみや怒りはないんでしょうか。

アントワンヌ・レリス:自分にそれを禁じています。たくさんの人から「あなたは素晴らしい、あなたは模範だ」という反応を受け取っています。でも正しく伝えたいと思います。私は素晴らしい人間ではないし、模範でもありません。もしかしたら明日か明後日、またはその次の日に怒りがこみ上げてくるかもしれないし、同じ街に住む人たちに疑いの目を向けるかもしれませんし、恐怖を感じる時もあると思いますが、自分がそうしたことに屈しないためにこの手紙を書きました。自分の息子に、自分自身に言い聞かせるために。起こったことは取り戻せないし、ふたりとも一生悲しむでしょうし、彼女と共に私の一部が死んだことも事実ですが、それでもずっと受け身のままではいられないのです。そうしてはいけないのです。この手紙はそのことを言葉で書いたものです。そのような感情に屈してはいけないのです。なぜなら、私の息子が彼の、または私の中の恨みの感情と共に大きくなるのを放置してしまったら、そうなったら息子は彼らと全く同じ人間になってしまうからです。