バイオハッカーとWilly Wonkaの出会い

ボディーアーキテクトであるLucy McRaeが、オーストラリアのポップバンドArchitecture in Helsinkiのために作った、”食べられる”ミュージックビデオ

Lucy McRaeはボディーアーキテクト— 人間の身体とテクノロジーの融合を探求するアーティスト — である。彼女の超現実的かつ挑発的なプロジェクトは多岐にわたる。ある時は飲んで使う香水を作り、またある時はポリエステルフィルムで身体を包みその中をバキュームで吸い込むことでスペーストラベルを表現したりしている。と、上記2つを見る前に読んだだけでもうお腹いっぱいだ、というあなたはまずこれから見てほしい: McRaeが作った、オーストラリアのバンドArchitecture in Helsinkiの曲”Dream a Little Crazy”の、現実離れした泡だらけミュージックビデオだ。下のビデオを見ればきっとヨダレが出てくるだろう。その後にこの記事を読み進めてほしい。McRaeとそのチームがどのように合成生物学、彫刻として使う食べ物、3Dプリント技術というアイデアを、粘液とパウダーでいっぱいのマッドサイエンティストの研究所に昇華させたかがわかるはずだ。

Lucy McRaeが作成したArchitecture in Helsinkiの”Dream a Little Crazy”のミュージックビデオ

誰かに自分の仕事を説明するとき、どのように説明していますか?

私はスペキュレーティブなストーリーテリングをやっている。つまり物事を推測し、そのストーリーを伝える仕事、と説明していますね。サイエンスフィクションを根底としたパラレルワールドを作っている、という時もあります。作品を作るときはいつも、テクノロジーの可能性を具現化することと、人々がどうやってその未来を生活に取り込むのだろうか、ということを考えていますね。しかもそれをいたずらっぽくするのが私のやり方です。ある意味、科学とイマジネーションを結合する組織を作っているとも言えますね。私は技術者でもないし、科学者でもありません。科学的思考にインスピレーションを受けて作品を作るアーティストなのです。科学的思考を使ってフィルムやコンセプトを操っているんです。

Architecture in Helsinkiと一緒に仕事をすることになった経緯について聞かせてください。

私のプロジェクトは偶然の巡り合わせから始まることが多いですね。このプロジェクトもそうでした。私は今LimeWharfというロンドンのcultural innovation hubを仕事の拠点にしているんですが、ある時LimeWharfにいるときに突然バンドからメールをもらったんです。当時私自身もArchitecture in Helsinkiの数年来のファンでした。バンドのリードシンガーのCameron Birdが私の作品を見たことがあったけれど、作者は知らなかったらしくて。そのあと彼が、私もオーストラリア人だということを知って、「へえ?なんで今まで彼女に連絡しなかったんだろ?」といった感じだったらしいです。

それで彼からメールをもらって、「是非ともその曲の映像を作らせてください。」って返事したんです。彼らはビデオクリップを非現実的で、瞬く間にネットで広がるような、ちょっとおかしなものにしてほしいと言っていましたね。また今回アルバムのアートワークをフィンランド人のイラストレーターSanttu Mustonenが担当しているんですね。彼ははっきりとした3D幾何学を使ってアナログで、泥っぽくて、しずくのようなイラストを手作業で作る人なのですが、その彼の作ったアルバムアートワークとの相乗効果を得たいとも言っていました。

ビデオ”Dream a Little Crazy”より、Architecture in HelsinkiのリードシンガーであるCameron Bird

そこからどのようにバイオロジカルベーカリーのコンセプトに繋がったのですか?

当初のコンセプトは、合成生物学がどのように一般家庭に入り込んでいくのかをユーモラスに探求することでした。曲を高速道路のように使って複雑なアイデアを表現しようというものだったんです。今回一緒に仕事をしたRachel Wingfieldと私は合成生物学と、産業化された食物の大量生産、風船やキャンディーの製造方法に興味があったんです。なのでどうにかしてこういう工業マシンと、身体のどこか一部を融合できないかと模索しました。最初は小麦粉と水で作った液体に様々な色をつけて、それを使ってメンバーの顔を3Dプリントすることから始めました。

このフィルムに出てくるものは全て食べられるんですよ。まず医療用の3Dスキャナーを使ってオーストラリアでメンバーの体をスキャンして、そのデータをロンドンに送ってもらったんです。そしてそのデータをもとに3Dプリントして、メンバーのミニチュアバージョンのお菓子を作りました。

Cameronが自分の顔を使ってバンドメンバーの顔型をコーンスターチのトレイに置いていくシーンがあるんですが、あれは工場でキャンディーを作るときの工程を模しています。実際の工場では巨大なコーンスターチのトレイを作って、そこに型を作るんですけど。例えばお菓子会社のHariboはコーンスターチに型を作って、そこに液体を注ぐというプロセスでキャンディーを作っています。ビデオの中ではそのテクニックを拝借して、舞台セットの一部として使っています。

ビデオを作ってから二日後、私たちはライブイベント用にセット全体を再構築しました。その世界にオーディエンスを招いて、ビデオのシーンを再現して見せたんです。液体を爆発させたり、身体中に現実離れしたタトゥーをペイントしたり。最終的に私たちはフィルムと実験的アートを舞台セットの中で融合させることに成功しました。

フィルムの中でオーディエンスが実際に支柱を食べていますよね?あれは何でできていたのですか?

ええ、撮影時に私たちはLimeWharfのシェフと一緒に働いていて、3Dプリントした鋳型にProsecco(イタリア産のスパークリングワイン)と洋なしとタイムの葉のジャムを入れて、食べられる顔を作りました。ビデオの中でオーディエンスが食べているのはそれです。チョコレートバージョンも作りました。オーディエンスは事前に白いものを着るように言われていたので、なんだかWilly Wonkaにいるようでした。 Cameronは(この取材場所のような部屋で)演奏していて、液体が部屋中に溢れ流れ、そしてオーディエンスが支柱を食べていました。

“Dram a Little Crazy”のメイキングシーン

それで今、バンドはオーストラリアでお菓子会社とコラボレーションしているんです。私たちが作った鋳型が棒付きキャンディーに変わったというわけです。このお菓子はアルバムの付録になっています。面白いですよね、最初は会話の中でアイデアを出し合って、それがミュージックビデオになって、その次は実験的なアート、そして今度は本当にバイオロジカルベーカリーを作ってしまいました!

物質の形を変えて何かを表現することって面白いです、特にその点で食べ物は最高ですね。食べ物で作品の内部構造を表現することで、作品を様々な方法で体験できますから。触ることもできるし、食べることもできる — それによって観覧者が作品の一部になるんです。

そしてあなたはその食べ物が表現する内部構造を自身の内部に取り込んでいるんですね。

まさにその通りですね。そして私の作品は未来 — 私たちは人間のクローンを作り上げる日が来るのか、それとも人間が人間を食べる日が来るのか — を示してもいます。様々な研究分野を叩いて渡っていくような感じです、それもちょっといたずらっぽいやり方で。

(Lucy McRaeのTEDトークはこちらHow can technology transform the human body?

ビデオ“Dream a Little Crazy.”より。

このインタビューは元々TED Blogに投稿されていたものです。

TED Fellowsは世界中から若きイノベーターをピックアップし、彼らの活動を世に広め、そのインパクトを最大化することを目的としたプログラムです。