#1 陸の海 ー氷見駅(富山県)

JR氷見駅から、3本の道が延びている。

右の道は、氷見漁港へと続いている。観光客のほとんどは、この道を通っていくのだろう。
 左の道は、住宅街へと続いている。時々鳴る踏切の音が大きく聞こえるくらい、静かなエリアだ。
 そして、真ん中の道。ちょっとだけ右にカーブしていて、駅から道の先を見通すことはできない。商店街へと向かう数十メートルの道路には、青と白の粒が散りばめられている。

はじめ見た時、それらの粒は氷に見えた。「氷見」だけに、「氷」を表しているのだろうか。そんな風に考えた。

だが、歩道に打ち寄せる水色の曲線が、それが海だと教えてくれた。青い粒は海の色、白い粒は水面に映る日の光だ。であるならば、通りゆく富山ナンバーの車たちは、さしずめ泳ぐ魚といったところか。

考えてみると、陸の道と海の道は少し似ている。

整えられた陸の道:道路を通って先へと進む車の列は、 海の道:海流に乗って旅をする魚の群れを思い起こさせる。「車の流れ」とはよく言ったものだ。

遥か昔、人の先祖は海で生まれたという。今は陸で生活していても、私たちが海に親しみをおぼえるのはそのためなのかもしれない。
陸の道に海をつくってしまう氷見のまちは、特に海への愛着が強いのだと伝わってくる。漁師町だから、魚が美味しいから、ととぼちが有名だから…単にそれだけではない、親密さが感じられた。

陸の海は、よそ者の私に強い印象を与えつつ、今も静かに車の「流れ」を待っている。

訪問日:2015.10.23

※この文章は、2015年10月25日に発刊された「ひみどころ」第10号に収録されています。
http://camp.yaboten.net/entry/2015/10/24/103119