NFTの暗号資産該当性について

Janction
Jasmy League
Published in
10 min readApr 27, 2021
iStock/Marina Funt

■はじめに

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、代替不能なトークンなどと呼ばれています。NFTはCryptoKittiesというゲームの出現により注目されるようになり、その後、NFT TOP SHOT等の出現や、Beepleをはじめ、複数のデジタルアーティストの出現等により、さらに注目されるようになったと考えられまれます。

その後、CoinCheckをはじめ、日本でも様々な企業がNFT関連事業に参入、あるいは参入を表明しています。そこで、今回は日本の法律上、NFTは暗号資産に該当するのかについて、金融庁の事務ガイドライン等を参考にした筆者の見解を記載させていただきます。

■資金決済法上の暗号資産の定義から見る、NFTの暗号資産該当性

資金決済法第2条5項に暗号資産とは以下のように定義されています。

“5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの“

上記要件を分解すると、1号暗号資産とは、以下の3つの要件をすべて満たすものであると考えられます。

① 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換できる
② 電子的に記録され、移転できる
③ 法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない

この要件を見る限り、少なくとも、ERC721にて発行されたNFTであれば、上記の②,③の要件は満たしていると考えられます。そのため、NFTが暗号資産に該当するかを判定するカギは、上記①の「不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換できるか」であると考えられます。

■金融庁の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(16 仮想通貨[1])交換業者関係の一部改正(案)でのNFT等に関する金融庁のコメント

金融庁は「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(16 仮想通貨[1])交換業者関係の一部改正(案)の(別紙1)パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方で、パブリックコメントに対して考え方を明示しています。

【パブリックコメントの概要Ⅰ-1-1 :仮想通貨の範囲及び該当性の判断基準】
No.1「いわゆるDappsがERC721形式でゲーム内での固有トークンを発行することに対して、何か法的な規制はあるか?国内外の事業者がDappsを開発し、日本国内でのサービスを展開するにあたり、法整備を進めていただきたい」。

上記のパブコメに対しての「金融庁の考え方」は以下のように回答されています

「資金決済法第2条第5項に規定する仮想通貨の該当性については、法令に基づき、実態に即して個別具体的に判断されるべきものと考えております。ご指摘のトークンが仮想通貨に該当し、その売買等を業として行う場合には、仮想通貨交換業者としての登録を要し、法令に基づく必要な規制を遵守する必要があります」。

この金融庁の考え方は、NFTが法的に暗号資産に該当するかは、個別具体的に判断すべきであり、一概にNFTであることをもって、判断することはできないと述べています。つまり、各NFTのプロジェクトの実態に応じて暗号資産に該当するかを判断するとのことであると読み取ることができます。

同ガイドライン内【パブリックコメントの概要Ⅰ-1–1 :仮想通貨の範囲及び該当性の判断基準】 №4にて、

例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。

という考え方を明示しています。

以上の点から、NFTが暗号資産に該当するか否かは、実態に即して判断すべきであり、一概に暗号資産に該当しないとは言い切れない。また、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカード等は2号暗号資産には該当しない、ということが述べられています。

つまり、金融庁の考え方からも、NFTの暗号資産該当性は各プロジェクトの実態を見て判断すべきであり、この判断の際に重要になるのが、決済可能性であると考えられます。

■FATFの暗号資産及び暗号資産業者に対するリスクベースアプローチに関するガイダンスの改訂ドラフト

FATFとは、Finance Action Task Force(金融活動作業部会)の略で、マネロン・テロ資金対策等に取り組む主要国政府による枠組みであり、事務局はOECD(経済協力開発機構)内に設置されています。FATFは2021年3月19日付で「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の改訂ドラフトを公表し、意見公募を開始しました。この改訂ドラフトの内容を見ると、仮想資産(以下、「VA」という)及び仮想資産サービスプロバイダー(以下、VPSPという)の定義の拡大解釈に関する記載があります。

この解釈によると、VAにはステーブルコインのほか、NFTも含まれる可能性があることが示唆されています。

【FATFの改訂ガイドラインの78項(原文)】

“Flexibility is particularly relevant in the context of VAs and VA activities, which involve a range of products and services in a rapidly-evolving space. Some items — or tokens — that on their face do not appear to constitute VAs may in fact be VAs that enable the transfer or exchange of value or facilitate ML/TF. Secondary markets also exist in both the securities and commodities sectors for “goods and services” that are fungible and transferable.
For example, users can develop and purchase certain virtual items that act as a store of value and in fact accrue value or worth and that can be sold for value in the VA space.“

「表面的にはVAには見えないアイテムやトークンが、実際には価値の移転や交換が可能なVAであったり、マネーロンダリングやテロ資金供与に使われる可能性があったりする場合もある。また、証券や商品の分野では、兌換・譲渡可能な「商品・サービス」の流通市場が存在する。例えば、ユーザはVAの世界において、価値を持つ何らかの仮想的なアイテムを開発・売買することができる。」(※日本の暗号資産取引所の「BTCBOX」のHPに掲載されている記事翻訳からの引用)

この改訂ガイダンスの内容に対して、日本暗号資産ビジネス協会は、

「改訂ガイドラインの内容が確定した場合には、過剰な規制導入につながり、決済利用を含めた暗号資産の適法な利用ひいては暗号資産業界の健全な発展に支障をきたす恐れがあると考えており、2021年4月20日にFATFに意見を提出した」とHPで公表しています。

この意見の「8.パラグラフ42及び78について」に、NFTはFATFの目的である、マネーリンダリング防止とテロ資金供与対策の観点から、リスクは低いと考えられることから、VAに該当しないことを明確にすべきと意見しています。

8.パラグラフ 42 及び 78 について
パラグラフ 78 において、「certain virtual items」も VA の定義に含まれることが示唆されているが、以下の特徴を有する Non Fungible Token (“NFT”)は FATF の目的である AML/CFT の観点からリスクが低いと考えられることから、VA に該当しないことを明確にすべきである。
①取引履歴がブロックチェーン上に履歴が残ること
②1 つ 1 つが唯一性を持つこと(容易に特定が可能であること)
③一般的に発行数が有限で、大量購入/大量売却が難しいこと

これらの結果、日本国内でNFTの暗号資産該当性に対してどのような法整備が行われるか注視していく必要があります。

■おわりに

NFTに関しては、いまだ明確な定義はなく、NFTの設計次第では、様々なビジネスに活用することが可能でしょう。しかし、実務を考慮せずに法整備が進んでしまうと、世界に後れを取ってしまう可能性もあります。そのようにならないためにも、法整備を進める際は、広く実務家から意見を集め、海外に対しても後れを取らないような国になることを切に願っています。

【参考HP】

・日本銀行HP
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c27.htm/

・金融庁「事務ガイドライン(第三分冊):金融関係」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について
https://www.fsa.go.jp/news/r1/virtualcurrency/20190903.html

・BTCBOX FATF暗号資産規制ガイダンス改訂案の要点:Chainalysis寄稿記事
https://blog.btcbox.jp/archives/13773

・日本暗号資産ビジネス協会 2021年4月20日 「仮想資産及びVASPに対するリスクベースアプローチのためのガイダンス更新案に対する日本暗号資産ビジネス協会のコメント」 https://cryptocurrency-association.org/cms2017/wp-content/uploads/2021/04/JPComments-of-Japan-Cryptoasset-Business-Association-on-the-draft-revised-VASP-Guidance.pdf

・日本暗号資産ビジネス協会 2021年4月21日 報道発表資料
https://cryptocurrency-association.org/cms2017/wp-content/uploads/2021/04/b8733f1e2c9444ff8f86ee1413bb966c.pdf

--

--