信用がお金に変わる瞬間を目の当たりにした

Masayuki Goto
JFDI
Published in
5 min readMar 6, 2018

誰にでも、少しずつ、信用を積み重ねる行動は取れる

最近堀江貴文氏や西野亮廣氏らが「お金ではなく信用を稼げ」というようなことを良く話されていると思います。

そちらに触発されたこともあり、信用に関することについて、昨年他界した僕の父の事務所をたたんだときの話を書きたいと思います。身内に関することをインターネット上に書くのは非常に不安なのですが、故スティーブ・ジョブズ氏も、かの伝説のスピーチで大多数の大学生の前でご家族の話をされていましたので、勇気を出して書いていきたいと思います。

僕の父は自営で水回り関係の工事を担当する仕事をしていました。生涯現役で働き続けていました。しかし寄る年波には勝てないと言いますが、ある日父の後々他界の原因となる病気が発覚したことをきっかけに、事務所をたたむことになりました。

何十年も父の仕事をする上での基盤となっていた事務所ですから、事務所のプレハブは当然残ったままですし、工事に必要な資材や備品はかなりの量になっていました。土地は借地でしたので、早急に土地を引き払わないと、費用だけがかさんでしまうという状況でした。

父は病気で身動きできない状況だったので、代わりに息子である僕が事務所の引き払いを担おうと思い、勝手が分からないながらも動き始めたのです。

僕の職業はプログラマでしたので、事務所をたたむということに関してはてんで素人でした。とはいえ、「借地を更地にして担当の不動産会社に返却する」ということがゴールだとおぼろげに想像がついていたので、そのためのアクションを取ることにしました。

まずは「資源 回収」とググり、金属や家具を資源として回収してくれる業者さんにできるだけ資材を持っていってもらいました。しかし、土地が更地になるくらいの量を回収してくれるわけではありませんでした。

次に「事務所 解体」とググり、プレハブの解体や後処理で更地にしてくれる業者の相見積りを取りました。結果、どの業者も「プレハブの解体と資材の処理だと、だいたい180 ~ 200万円くらいかな」との返答でした。父が病気になる直前では父の仕事としての稼ぎも極小でしたので、家族全員で立て替えて支払うにもかなりの負担となる金額でした。

途方に暮れながら、退院した父と話した時のことです。近況の共有も兼ねて、「業者に相見積り取ってもらってるんだけどね、どうも高いみたいなんだよね」という話を父にすると、「仕事で長い付き合いの奴に頼んでみる」との返答。

正直、父の様態もあるのであまり期待していなかったのですが、父は本当に知り合いの方と連絡を取ってくれたらしく、父と父の知り合いの方と僕で事務所の状況を見に行くことになりました。以下はその時の会話です。

父の知り合いの方「あー、しっかり資材とかプレハブが残っちゃってるね」

父「そうなんだよ、倅が業者に相見積り取ってくれたんだけど、180 ~ 200万くらいかかるらしいんだわ」

父の知り合いの方「なるほどね、んー、<父の名前>さんとは付き合い長いからね、まるっと100万円で受けますよ」

父「本当にありがとう。よろしく頼む」

あっという間の出来事でした。自分が今まで動いてきたことが嘘かと思えるくらいに。同時に、今回書きたかったことを感じた瞬間でもありました。

僕は、信用がお金に変わる瞬間を目の当たりにしたのです。他の業者が提示していた金額を、父の信用が大きく相殺したのです。

父の知り合いの方の立場からすると、提示した金額ではほとんど利益にならないことは明白でした。それでも、父と父の知り合いの方との間に長年積み重ねてきた信用があったからこそ、損得抜きに考えてくださったのだと感じています。結果、土地は無事更地にすることが出来、不動産の返却も完了できたので、父の知り合いの方には深く感謝しています。

話は変わりますが、巷ではクラウドファンディングが普及し始めています。「この活動をしているこの人になら支援しても良い」という、善意が伴う優しい活動だと思っていますし、現代における、信用がお金に変わりうる典型例だと思っています。

僕はこの「信用がお金に変わる」という具体例が、インターネット上で有名な人、応援したい人にしか当てはまらないと思っていましたが、今回の件でどうもそうではないのではと思い直しました。誰にでも当てはまることではないかと思うのです。

仕事を全うにこなし、少しずつ、一歩ずつ、他者からの信用を得られるように努力すること。これは誰にでもできることだと思います。その結果、目に見えてどのくらいのお金になるかということは、クラウドファンディングなどで定量的に見ないとわからないかもしれませんが、それでもその心構えは自身の活動にとってプラスになるのではないかと思います。

父はパソコンに疎く、クラウドファンディングという存在すら知らない人でしたが、長年仕事で積み重ねてきた信用をお金に変えるという現象を無意識に実現してみせました。

今後僕が仕事やビジネスをするときにも、より一層信用を大切にしていきたいと思うようになりました。別にクラウドファンディングで大成すること、インターネット上で有名になることを目的にするわけではなく、目の前の人に喜んでもらう、より良い仕事をしていくために、全うに働いていくことが大切だと思うのです。

--

--