専門について語ろうじゃないか

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JISS blog
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9 min readMar 2, 2016

今月のブログのテーマに自分の専門についてという案が出ていたので長くなりましたが書いてみました。もう一度言います、長いです。

①専門というアイデンティティ

専門と聞かれて、皆さんなら何と答えますか?私は今でこそジェンダーと迷うことなく言えるようになりました。

大学入学後時、法にも関心がなかったのに法学部に入学した私は、法学部生、政治学科生と言うたびにアイデンティティの不一致を感じていました。勉強していくにつれて法にも政治にも関心は持てましたが、興味が増していくのはジェンダー分野。一方でジェンダーを専門と言うほど体系的に学べていないためジェンダーとも言えない…ううんどうしよう…としばらく専攻迷子に陥っていました。そしてもう一つ、ジェンダーという学問に対する理解が浸透しきれていないことから、他人にどう思われるかという恐れもありました。

ところが留学に来てからそんなアイデンティティ不一致人間にひたすら何でノルウェー来たの?何勉強してんの?将来何したいの?と自己紹介の段階で聞かれるため、ひとまずPolitical Scienceで…なんて言ってましたが政治家になりたいの?!と聞かれることにうんざりし(政治勉強している人がみんな政治家になりたいというわけではないよ…)、試しにGender Studiesだと言ってみてから会話にも自分の気持ちとしても楽になりました。

実際のところ、ジェンダーというトピックが日常的に話されるここオスロ大学でもジェンダー関連の授業は法律の授業、社会学の授業、文学の授業というように話は跨っていて、Gender Studiesという学部はありません。でも、そういう学科や学部に囚われず、専門なんて自分が思うものを言ってしまえば良いのだなと感じた出来事でした。

恐らく、自分の専門はこれだ、という時、人は興味や問題意識を抱き続けてきた分野、その分野を突破口に社会に関わっていきたいと思えるものを上げると思います。専門を公言するというのはその分野に責任を持つという表れとも言えるのではないでしょうか。留学前から現在までを通して自分の専門を公言出来るよになった過程は将来の方向性を定める上でとても意味のあるものでした。

②専門の勉強

というわけでそう公言してしまったのでいま勉強していることを少しだけお話ししようと思います。他のメンバーが書いているような機知に富むこと書けなくて情けないですが…

ジェンダー論は、性・ジェンダーという「視点」を使って社会を見つめる学問です。(少なくとも私はそう思っています。)

法律・経済・政治といった分野をジェンダー視点から切り込むことは近年日本でも話題が事欠きませんね。夫婦別姓の最高裁判決、女性の労働市場参加、女性議員の低数への勧告などがそれにあたります。家庭内暴力や女性の人身売買という身体的な人権侵害も扱います。そして、出生率の低下に関連し、生殖補助医療といったトピックも、そこから派生した生命倫理についてもジェンダー学では包含します。代理母、同性夫婦の子を持つ権利、多様な家族体系についてなど理系の要素と社会学の範囲が融合した分野も含めた多くの学問領域を横断する範囲の広い学問です。個人的にいまだ体系化されず日々進化していっている学問だと感じています。これが私がこの学問に惹かれる理由でもあります。

ここでざっと、自分がいままでやってきたことを紹介します。

中高時代から上記にあるようなことは関心を持ち、大学1年生のときに憲法をジェンダー視点で勉強する機会がありこれが今後ジェンダーを深めていきたいと思うようになったきっかけでした。大学2年では生命倫理を専門とする先生のジェンダーのセミナーに参加して生命倫理について関心を深めつつ、1学期間は各国の同性婚への対応について調べていました。(2013年当時同性婚の合法化を行う国が立て続けにあったホットだったトピック。)その先生からこの大学ではジェンダーを勉強するには限界があるから一度外に出てみなさいと助言をいただき、中高時代より関心のあった途上国の少女・女性の人権を扱う国際NGOの日本支部でインターンをすることにしました。講演会や会議にも出席して外で学ぶことを意識するようになったのが大学3年のこと。

途上国の支援をする団体にいるのに途上国に行ったことがないなんてナンセンスだと思ったことから、カンボジアの女性職業訓練場の視察に参加してみたり、バングラデシュのグラミン銀行が支援する農村へ訪問してみたりして、学問から離れて見ることもしました。そして途上国を訪問してみて思ったことが「途上国については私以外の他の人がやってくれる。でも、日本については日本人以外の誰がやるのだ」ということでした。とりわけ、日本の女性に関する話題を、日本人の女性である自分が関わっていかなければという責任感のようなものを感じたのを覚えています。

大学4年でそこからもう一度、日本という視点に立ち返ることを決めました。日本が抱える問題は複雑ですが、政府が北欧の社会福祉制度、ジェンダー平等政策を通じて問題解決しようと試みている部分がある以上はその政治体系での暮らしがどのようなものか、本当に日本が理想としているものがそこにあるのか見てこようじゃないかと、北欧に留学することに決めたのでした。そしてその判断は間違いではなかったと思っています。(半年経ったからようやく言えるなんてことは秘密です笑。はじめのうちは後悔ばかりでした)

前期は良くも悪くも社会福祉国家の理念とする「平等」が機能する生活を体験し、カルチャー・ショックを受けていました。物価・消費税の高さ、「飛び抜けてはいけない」という感覚と言うのでしょうか…とにかく食材や洋服といった日用品から課外活動などのActivityを含め選択肢が少ない、あるいは似たり寄ったりなものが多いことから物事に満たされず、そして意外にも多いホームレスを見て豊かな国にも確かに貧困は残ること、そして講義を通じてようやく知り得た、ジェンダー先進国と言えど男女格差は賃金面、昇進等で強く残っていること、出生率の低下や少子化問題は改善の途中であり万能な解決策ではないことなどを知り、日本で北欧を批判することがあまりない中で理想として持ち上げる人が多くいることに一人あたふたしていました笑。日本で勉強しているだけだったらきっと私も北欧礼賛一辺倒だったと思うので実際に行ってみて体感することの重要性を思い知りました。(ネガティブな面ばかり並べてしまいましたが、もちろん実際に男性の育児や家事労働への協力の程度は日本で評価されているようにとても高いですし、出生率の改善に関しては社会福祉制度が機能したと評価が高いのは事実です)

そして、移民という視点が自分の中に取り組まれたのも留学してよかったと思ったことです。移民、とりわけ中東・南アジアからの移民は根強い宗教的慣習として男女の差がはっきり残っている場合があります。そのような移民コミュニティに対してもジェンダー平等政策を推し進めるべきか?という問いはいままで考えたことがなかったものでした。移民というマイノリティの中の、さらに女性というマイノリティに着目すること、これは北欧各国が現に直面している問題で、特に移民二世は両親の出身国の文化で家庭内では生活し、学校や職場という社会ではその生まれた国のカルチャーに合わせるダブル・アイデンティティを有しているためときにそれが衝突し彼らを苦しめてしまうことがあるようで、彼女たちへの配慮が欠かせないことも知りました。オスロの街を歩いていて実際に感じることは少ないですが、それでも移民と思わしき家族といわゆるノルウェー人とでは家父長制の程度の様子が異なるのは見て取れます。

さて今期はというと、日本のNPOのインターン生として選抜していただき2週間後に国連で開かれるCSW(Comission on the Status of Women)にNPOの一員として傍聴&世界各国から訪れるNGO団体のイベントに参加できるということで、それに向けて日本のジェンダー問題について整理し、国際条約について、国連や委員会組織について学習していました。正直日本にいてもできたな…苦笑 という感じでしたが、大学の授業が女性差別撤廃条約についてというどんぴしゃりなものなのでその力も借りながらマイペースに進めていっています。

留学している人の多くはグローバルに活躍することを望む人が多いかと思いますが、私はどちらかといえば日本でこれらの知見を生かせる場面を得たいと思っています。ただし、日本で何かを推し進めていく場合でも同じことを世界がどのように進めていこうしているのか、足並みをそろえながら、そしてときにはリードしながら進めていかなければならないと思います。そのためにチャンスがあれば世界に出てみて学びたい(まさに今こうして留学させてもらえているように)とは思います。今回の国連でのイベント参加はグローバル・スタンダードを知ることのできる貴重な機会と思い、日本と世界の国々でどのようにジェンダー問題を捉え解決しようとしていっているのかの違いを見つめ、これから日本が歩むべき道を自分なりに模索してみようと思っています。

あとは自分の今の英語力で意思疎通と議論に最大限トライすることも目標です。文献を読むばかりで英語を喋る機会を失っているのはさすがにまずいよ….。

とまあこんな調子です。

まとめると笑、ジェンダーは広範に及ぶ上に体系だっていない学問だから手探りで勉強していかなければいけないので、これからも機会を得ては勉強をしていきたいということです笑。

③最後に

ノルウェーでの留学生活について詳細は語らずして終わってしまいました…笑。というわけでダイジェスト↓

雪を踏みしめる音、小鳥のさえずり、窓から差し込む日差しと隙間風。暖かさと冷たさの入り混じる中で日が少しずつ長くなることに喜びを覚え、緩やかな時の流れの中のびのびと好きなことを勉強する、そんなスローライフ。先日は初めてフラットメイトとキッチンの使い方で喧嘩をしました笑。早い段階からキッチンの使い方を話し合って決めておけば良かったし、お互い嫌な思いをした段階で我慢せず伝えるべきだったとわかり、伝えないことには相手もわかるはずがないという初歩的なディスコミュニケーションをやってしまったと猛省した、そんな日々です。こんな感じで十分でしょうか笑

ではおしまい!まとまりのない文章の中おつきあいいただきありがとうございました!(ここまで読んだ人がいるとはとても思えないですが!笑)

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一向に家事スキルが上がらない