1年間の留学を終えてみて

Chikamasa Wakabayashi
JISS blog
Published in
6 min readApr 5, 2016

先月末にバンコクから日本に帰国しました。1年を通してインドネシアを除く全てのASEAN10か国を訪れ、そこで「元国費留学生」約355名にインタビューすることができました。(インドネシアを訪問する日にテロが起きたため渡航を中止したため)今回の調査でお会いした元国費留学生は総じて母国で大学の先生やビジネスマンとして活躍していました。

シンガポールを除いて他のASEAN諸国で「日本留学をしたい人数は増加する」「日本留学する人数も増加する」と答える傾向が強く、その理由はもちろんそれぞれ違うのですが「地理的・文化的に欧米は遠い」「英語は皆んな話せるので別の言語を使う先進国に行きたかった」「研究技術が高い」という声が大きかったです。その中でQS世界大学ランキングやTIMES世界ランキングが発表するランキングの影響力が強まったこともあり、日本の大学レベル低下を心配する声も聞くことができました。

また日本留学の現状を少し理解することができました。長くなりますが6点にまとめました。

①日本留学は世界的に選ばれているのではなく、アジア地域の中から選ばれています。JASSOの外国人留学生の構成比を見るとアジア出身者が多いことが分かります。

②政府と民間企業が抱える事情が異なる。
日本政府は外国人留学生を卒業後に日本で就職してもらう目的を立て、各大学に外国人留学生の人数を増加させようとしています。しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の「企業における高度外国人材の受入れと活用に関する調査」によると外国人を採用する意欲があるのは日本企業の一部であること、採用する企業(主に大手企業)であっても採用人数が限定的であることが分かりました。

③企業が求める日本語能力はN1(日本語能力検定1級)
訪問した国で日系企業に理由を聞いていくと、日本企業は日本企業同士で取引関係にあるから営業や電話なども当然日本語になってしまうからだと仰ってました。一方で、日本人の言語能力(英語と現地語)が低い・努力していないのも大きな問題だとも聞くことができました。

④外国人留学生が日本で就職したがらない
主な理由としては、無意味な長時間労働、人事評価が不透明、仕事内容が曖昧、永住権ビザの取得が難しいなどがありました。個人的、これらの問題は企業がまだ外国人を雇用した経験が少なく、どうしたらいいのか分からない状態にあるのかなと思ってます。次の世代、その次の世代になれば経験値が溜まり解決していく気がしています。なぜなら、1980年代から似た問題は今日まで話し合われており徐々に社会が変わりつつあると感じているからです。
外国人を雇用することは企業が持つ戦略に基づいて欲しい人材を雇用していくと思うので、雇用する企業もあれば雇用しない企業が出てくる予想されます。つまり、各企業が外国人を雇用したいと思えば雇用すれば良いし、する必要がないのであればしなくても良いと思っています。ただし、企業が雇用すると決めたらしっかりと受け入れ体制を整備しないといけません。

⑤欧米諸国と比べて外国人留学生誘致体制が弱い

⑥アジア地域における高等教育のハブ化が進んでいる
ASEAN(東ティモールも含む)には、東アジア教育大臣機構(SEAMEO)があります。教育改革センター(INNITECH、フィリピン)、理数教育センター(RECSAM、マレーシア)、高等教育センター(RIHED、タイ)、熱帯生物学センター(BIOTROP、インドネシア)など、域内に19のセンターを持っています。
このSEAMEO-RIHEDでは、政府間の合意を基にAIMS(ASEAN International Mobility for Students Programme)、東アジアにおける学生の移動を活発化していくプログラムがあり、広島大学、早稲田大学、上智大学、東京農工大学、筑波大学などが参画しています。また、中国や韓国が参加する方向で進んでいるようです。

これ以外にも、ASEAN UNIVERSITY NETWORKや各国が協定を結びに来たり、奨学金に当てる基金を設立したりして誘致政策を実施していました。

バンコクには、日本の大学が43校事務所を構えており今後より東南アジアと日本の学術交流が進んでいく雰囲気がありました。

結局、進路をどうするのか結論が出ないままだし、、、身になったのか身になっていないのかよく分からない1年でしたが自分の興味がある分野を全力で調査できたこと、たくさんの元国費留学生に会えたことは何事にも代えがたい経験になったと思います!!

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